
解決事例
依頼者Aは、祖父が創業し、100年以上続く繊維工業を主事業とする会社Xの33%以上の株式を父から譲り受け、所有していました。祖父はもちろん父もX社の役員を務めましたが、父の兄が本家として経営を継いだため、依頼者Aは従業員として勤務したものの経営陣には加わらず、その後監査役に就任しましたが、最終的には退任しました。
Aは、約10年前、X社から1株50円での買い取りの打診を受けましたが、あまりにも低額であったため断りました。そして、数年前には、地元の弁護士を通じてX社に対し、Aの保有株式の買い取りを再度申し入れましたが、断られました。その後、X社はAに対し1株100円を提示しましたが、Aは納得せず、ベリーベストに相談することとなりました。
AとX社は、根拠を示さないまま、買い取り価格の交渉を続けていました。すなわち、X社は、古く存在していた(現在は法改正により廃止された)いわゆる「額面」を念頭に1株50円、その後、交渉上の値上げにおいては、単に切りのよい数字として1株100円を提示していました。これに対しAは、「低すぎる」としてX社の提示額を拒絶していましたが、その理由や根拠を示していませんでした。
しかし、法律上、会社が株主の有する株式を買い取らなければならない義務はありません。そのため、会社が提示する金額を拒絶するだけでは交渉不成立となり、結局、買い取ってもらうことができません。
これに対し、ベリーベストは、Aから依頼を受けた後、すぐに、X社に通知書を送り、直近の決算でX社が作成した貸借対照表を根拠に、X社の純資産額を発行済み株式総数で割った1株当たりの純資産額が500円を超えることから、1株当たりの価値は500円を超える旨を示唆し、X社の提示する1株100円は低すぎると伝えました。
弁護士が代理人となった旨を会社に通知すると、会社も弁護士を立てて反論してくることがほとんどです。X社も例に漏れず、弁護士を代理人に立ててきました。
X社が弁護士を窓口に立ててきたことで、当方にとって有利な状況となりました。なぜなら、弁護士は法律の「専門家」であるため、不合理な主張をしたり、理論的な根拠のないことを主張したりすることは通常想定されません。実際、X社の代理人となった弁護士は、税法上の算定方法に基づいて株価を算定し、1株350円を超える金額を提示してきました。この時点で、ベリーベストが交渉を始める前の提示額の3.5倍を超える価格での妥結が見込まれる状況となりました。
もっとも、1株当たり純資産額が1株500円を超えることに比べれば、X社の代理人が提示した金額水準は十分とはいえず、Aはこれに納得しませんでした。そこで、Aのご意向に沿う形での解決を目指し、ベリーベストはAに対し、裁判手続きにより株価の決定を求める方法をご提案しました。
株価の交渉は、感覚的に行うのではなく、理論的な根拠をもって行うべきです。しかし、理論的な説明が通じにくい相手方である場合も少なくありません。また、理論的な根拠をもって交渉しようと思っても、専門家でなければ理解が困難な場合も多くあります。その点、弁護士は法的根拠に基づいた交渉を行うことが可能です。さらに、一方が弁護士を立ててくれば、他方も弁護士を立てることがほとんどです。
そのため、株主が会社に対して株式を売却しようとして株価の交渉を行うとき、特に、会社から非常に低い価格を提示されているときには、弁護士に相談することもひとつの方法です。本件では、Aが株式買い取りに詳しい弁護士に交渉を依頼し、理論的な根拠をもってX社と交渉したことが、良好な結果につながったといえます。