解決事例
金具の製造・販売をしているA社の代表取締役であるX氏は、妻や妻の親族を役員にしていました。しかし、時の経過とともに、X氏と妻との仲は冷え切り、妻の親族であるY氏らはわが物顔に振る舞いだし、業務を誠実に行わないばかりか、社員へのパワハラ行為、情報漏洩、横領行為、暴力沙汰など不適切な行動を多数するようになりました。
Y氏らは、適法な定款変更後の任期満了によって退任することとなりましたが、A社に対し、任期を短縮する定款変更が実質的には解任であると主張し、当初の任期期間中の役員報酬相当額の全額の支払いを求める損害賠償請求訴訟を提起したため、その対応を当事務所にご依頼いただきました。
当事務所は、定款変更は適法であって実質的な解任ではないと主張して争うことと並行して、仮に実質的な解任であったとしても、解任には正当な理由があると反論しました。A社の主張を裁判所に認めさせるために、A社側が主張を裏付ける証拠を用意できないという状態を解消する必要がありました。
そこで、Y氏らのパソコンのフォレンジック調査(パソコン内部の履歴データなどを確認して不正の証拠を発見する調査)を行い、また、A社の従業員に対してY氏らの素行に関するアンケート調査や事情聴取を実施して証拠を集めたうえで、裁判所に提出しました。
これが功を奏し、解任が不相当ではないという心証を裁判所が形成させることに成功し、低額の支払いで済む勝訴的和解を成立させることに成功し、紛争を解決できました。
本件は、理解して説明すると単純な事案のように感じますが、相談の場面では、さまざまな断片的情報ばかりで、それを証明する証拠が用意されていないという難しい事案でした。そのような混乱した状態を整理し、法的問題やリスクを的確に把握して説明をすることができたことが一つ目のポイントです。
次に、主張を裏付ける証拠が用意されていない状況で、Y氏らが取締役として不適切な行動をしていたことの証拠を作成できたこともポイントです。パソコンのフォレンジック調査は専門的なもので手間もかかりますが、有効な証拠を確保できていますし、A社の従業員の証言が具体的で信憑性があると認められるように証拠化することも簡単ではありません。
適切な主張立証によって、裁判所がY氏ら敗訴の心証を形成したことで、X氏にご納得いただける解決を導けたものと思います。
お問い合わせ・資料請求