よくある質問

怪我や病気を理由に、従業員を解雇しても大丈夫でしょうか。また、解雇の手続きはどのように進めるべきでしょうか。

Q

当社は建設業を営んでおりますが、長年勤務している現場作業員の一人が休日に交通事故に遭ってしまいました。 療養のため、約3か月間の休みを認めていましたが、現場復帰後も怪我の影響で、重い機材を持ち運ぶなどの作業をすることが困難な状態になっています。 本人は「大丈夫です、やれます。」などと言っているのですが、作業現場は危険も伴うので、可哀想ですが辞めてもらいたいと思っています。 このような場合、解雇しても大丈夫でしょうか。また、どのようなことに気をつけて解雇の手続を進めるべきでしょうか。

A

解雇には慎重になりましょう。
ケガや後遺症、従前の業務に復帰できないのかについて医師等の専門家の助言や診断を受け、場合によっては他の業務への復帰可能性を検討する必要があります。

【詳しい解説】
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、その権利を濫用したものとして無効とされます(労働契約法16条)。
業務外のケガや病気によって労働能力を喪失した場合は、基本的には合理的解雇理由となります。
もっとも、早期にケガや疾病からの回復が見込まれる場合や、休職等の解雇回避措置をとることなく解雇した場合は、解雇権濫用と評価される可能性があります。

■解雇回避の措置
解雇回避措置としては、休職の職務は十全に行うことができないが、現実に配置可能性のある他の業務があり、その業務であれば支障なく行える程度まで健康状態が回復している場合には、他の業務への配置転換を行うことも含まれます。
職種を限定していた場合にも、就業規則で業務の都合により職種変更の可能性を予定しているとか、同じ職種の中でもより負担の軽い業務に限定することが可能であるといった場合には、配転可能と評価される可能性があります。他の業務への配置転換を検討することなく解雇した場合は、解雇は無効となる可能性があります。

■医師の診断や助言を受ける
また、業務が行えないことについては、医師の診断を参考にしなければ判断が困難であるため、医師の診断や助言を受ける必要があります。これを求めずに解雇した場合は、無効となる可能性があります。

■解雇の前に検討するべき事項
本件では、業務外のケガの影響で重い機材を持ち運ぶことが困難になっているとのことですが、これを理由とした解雇を検討する際は、以下を慎重に行いましょう。

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①現在のケガや後遺症の状況、今後治癒可能性があるのであれば治癒までの期間はどれほどか、従前の業務への復帰可能性等について医師の診断、助言を受ける
②従前の業務に復帰できないのであれば、他の業務への配転可能性を検討する
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②を検討する際には、①の診断、助言を踏まえます。
従前の業務のうち重い機材を持ち運ぶことだけは困難であるが、それ以外は十分に可能であり、その状態でも業務を遂行できている場合には、解雇は無効となる可能性が高いと言えます。
また、実際の作業はできなくても、機材を管理する部署や人事など別の業務へ配転できる場合も、解雇が無効となる可能性が高いと言えます。

■解雇が有効な場合、解雇予告が必要
なお、解雇が有効となる場合も、解雇予告を行わなければならないことに注意が必要です。
すなわち、少なくとも30日前にその予告(解雇予告)をしなければならず、30日前に予告をしない場合には30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければなりません(労働基準法20条1項)。この予告日数は平均賃金を1日分支払った日数だけ短縮できます(同法20条2項)。

よって、本件でも、解雇をする場合には、30日以上前に解雇予告を行うか、予告日から30日に満たないで解雇を行う場合は足りない日数分の解雇予告手当を支払う必要があります。

解雇が有効となるか否かは詳細な事実関係の検討が不可欠です。解雇をする前に弁護士にご相談されるのをおすすめします。

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