よくある質問

亡くなった従業員のご遺族から、労災申請の手続き求められた。死亡原因は業務と関係ないと考えているため、応じなくてもよいでしょうか。

Q

半年前に脳梗塞で亡くなった当社の社員のご遺族が、死亡の原因は当社での過重業務だから労災申請をするので事業主証明を出して欲しいと言ってきています。 当社は、死亡の原因は社員の持病であり当社の業務と無関係と考えていますので、このような要請には一切対応しなくて良いでしょうか。

A

事実関係の調査を十分に行い、専門家の意見の聞いたうえで、想定される損害賠償責任の可能性も視野に入れながら、対応につき検討しましょう。
調査等の結果、脳梗塞が業務とは無関係であると判断した場合には、事業主証明の提出をする必要はありませんが、労働基準監督署長に対して意見を申し出ることができます(労働者災害補償保険法施行規則23条の2)ので、持病によるものと考えている旨意見を申し出ましょう。

【詳しい解説】
事業主は、保険給付を受けるべき者の労災申請手続きについて助力しなければなりません(同規則23条1項)。
また、事業主は、労災保険給付を受けるべき者から保険給付を受けるために必要な証明を求められたときは、速やかに証明をしなければなりません(同規則23条2項)。

一方で、使用者は、労働契約に伴い、社員が生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をする義務(労働契約法5条)を負っており、従業員が過重業務を原因として死亡したとなると、遺族から同義務違反に基づく民事上の損害賠償請求をされる可能性があります。

労災保険給付の手続と民事上の損害賠償請求とは別の手続であり、労災であると認定されることと、民事訴訟において業務上の災害であると認められることは必ずしも一致しません。
しかしながら、使用者が労災保険給付の手続の中で当該社員に関して証明した内容や証明したという事実が、上記の義務違反の根拠として主張される可能性もあります。

他方、労働者死傷病報告を行わない等の行為が労災隠しであると認められた場合には、刑罰が科されることになります(労働安全衛生法100条1項3項、120条5号、同規則97条)ので、使用者としては、事実関係の調査を行い、産業医等の意見を求めるなどしたうえで労働者の傷病の原因が業務にあるか判断するなど、慎重に対応しなければなりません。

慎重な検討の結果として、脳梗塞及び死亡の原因が業務ではなく、持病であると判断した場合には、事業主証明を出す必要はありませんが、労働基準監督署長に対して意見を申し出ることができます(労働者災害補償保険法施行規則23条の2)ので、持病によるものと考えている旨意見を申し出ましょう。

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