よくある質問

労災保険給付の請求手続について、事業主にはどのような義務があるのですか。

Q

災保険給付の請求手続について、事業主にはどのような義務があるのですか。事業主はどのような場合でも対応しなければならないのですか。

A

事業主は、保険給付を受けるべき者の労災申請手続きについて助力しなければなりません(労働者災害補償保険法施行規則23条1項)。

また、事業主は、労災保険給付を受けるべき者から、労災申請の請求書における「負傷または疾病の年月日」「災害の原因及び発生状況」等の証明事項(同規則12条の2第2項等)について証明を求められたときは、速やかに証明をしなければなりません(同規則23条2項)。

しかし、業務上の災害でないなど意見がある場合には、必ずしも事業主証明を行う必要はありません。その場合には、労働基準監督署長に対してその旨の意見を申し出ることが望ましいです(同規則23条の2)。

【詳しい解説】
労災保険の給付を受けようとする者は「負傷または発病の年月日」「災害の原因及び発生状況」等について事業主の証明を受けなければなりません(労働者災害補償保険法施行規則12条2項)。

そして、事業主は、保険給付を受けるべき者が、事故のため、みずから保険給付の請求その他の手続を行うことが困難である場合には、その手続を行うことができるように助力し、保険給付を受けるべき者から保険給付を受けるために必要な証明を求められたときは、すみやかに証明をしなければなりません(労働者災害補償保険法施行規則23条)。

一方で、事業主は、労働契約に伴い、社員が生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をする義務(労働契約法5条)を負っており、従業員が過重業務を原因として死亡したとなると、遺族から同義務違反に基づく民事上の損害賠償請求をされるリスクがあります。

労災保険給付の手続と民事上の損害賠償請求とは別の手続であり、労災であると認定されることと、民事訴訟において業務上の災害であると認められることは必ずしも一致しません。また、労災申請手続きにおける事業主の証明は、「負傷または発病の年月日」と「災害の原因及び発生状況」等の事実をしょうめいするものであって、労災であることを証明するものではありません。

しかしながら、事業主が労災保険給付の手続の中で当該社員に関して証明した内容や証明したという事実が、上記の義務違反の根拠として主張される可能性もあります。

そのため、業務上の災害でない等意見がある場合には、事業主証明をしない方がよい場合もあります。
また、その場合には、事業主は労働基準監督署長に対して意見を申し出ることができます(同規則23条の2)から、事業主として積極的に意見を述べることが望ましいといえます。

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