
解決事例
主に輸出入貿易事業を営むA社は、新たにBを従業員として試用期間付で雇い入れました。
Bは、入社直後から上司の指示に従わないだけでなく、上司から残業強要や退職強要をされた等の主張を繰り返していたため問題になっていました。
さらにBは上司に対する人格非難をするような言動もあったことから、A社はBの対応に苦慮し、当事務所に相談に来られました。
早期かつ円満な解決を図ることでA社のコストを最小限度に抑えることを最優先に考え、まずはBに対して合意退職を条件とした解決金提示を含む退職勧奨を実施しました。これに対し、Bは、退職勧奨を拒み、自らの主張を繰り返していたため、退職の合意は困難な状況に陥りました。
そこで、試用期間満了による本採用拒否(解雇)を視野に入れつつも、解雇を回避するべく、Bに対しする業務改善指導を実施することにしました。具体的には、業務指示に従うこと、人格非難の言動を控えること等の基本的な事項を記載した業務命令を書面で発令し指導内容を証拠化しました。
この業務命令に対しても、Bは反抗的な態度を維持したため、毎日の退勤前に業務報告書を提出することを義務付ける業務命令を書面で発令しました。
しかし、Bはこの業務命令も拒否し、業務報告書を提出しませんでした。
このようなBの勤務態度と、度重なる業務命令違反も明確になったことを受け、試用期間満了日に、Bに対して本採用拒否(解雇)の通知をしたところ、Bはこれを争い、退職・残業強要等を理由とする数千万円の損害賠償請求および解雇が無効であることの確認を求める訴訟を提起しました。
A社代理人である当事務所の弁護士は、この訴訟において、Bの損害賠償請求を基礎付ける証拠が不十分であることを指摘し、また解雇の有効性を基礎付ける証拠等を提出する等の適切な訴訟活動を行いました。
その結果、A社のBに対する解雇が有効であること、BのAに対する損害賠償請求金額のうち約99%を退けるという判決を得ることができました。
解雇は労働者にとって厳しい不利益処分ですし、日本国内では解雇のハードルは高いため、解雇に踏み切る際には無効とされるリスクが常に伴います。そのため、使用者側が労働者に対して解雇を行う場合、さまざまな視点を踏まえ、慎重に検討しなければなりません。
たとえば、解雇が有効であることを基礎付ける証拠をどのように収集すればいいのかという証拠収集の視点、解雇をする必要があるのかという解雇の必要性に関する視点、解雇をするにしてもどのタイミングで解雇をすることがもっとも適切なのかという時期に関する視点等です。
当事務所の弁護士は、これらの視点を踏まえながら、解雇に至るまでのマネジメントを徹底的に行いました。具体的には、Bを解雇するやむをえない理由があるということを主張するために、その日の業務内容をメールあるいは文書で報告することを義務付ける業務指示を書面で出すことを徹底し、Bの勤務態度が改善される見込みはないと言えるほどの証拠を徹底的に揃えました。
このように、訴訟を見据えた戦略を練り、証拠収集・作成に重点を置いた活動をしてきたことによって、A社にとってベストな結果を勝ち取ることができたと考えています。