Eビザとは

ここでは、日本人がEビザを申請して日本から渡米をする場合の初めての申請を前提として説明します。

Eビザはどんなビザ?

Eビザは、米国と友好通商条約を締結している国の国民に対して発給されるビザです。Eビザには、E-1ビザ(貿易駐在員ビザ)およびE-2ビザ(投資駐在員ビザ)の2種類があります。

E-1ビザは、申請者が主に日本と米国との間で実質的かつ継続的な貿易活動を行うためのビザです。

E-2ビザは、申請者が投資家本人の場合には、相当額の投資をした、又は投資をしている過程にある米国会社を発展させ、またはその運営を指揮するためのビザであり、申請者が被用者の場合には、その投資された米国会社で働く重要な被用者のためのビザです。

このように、Eビザは米国における事業や雇用の拡大に資する日本人に発給されるビザであるため、他の就労ビザであるHビザ(特殊技能者等)のように米国人の雇用を奪うことがないビザとして、発給者数の上限枠が設けられていません。

E-1ビザ受給者の要件

E-1ビザとE-2ビザにおける申請者の渡米後の活動(ビザの申請目的)を図示すると以下のようなイメージになります。以下、各々の要件を説明し、次に、共通の要件及び手続について説明します。

E-1ビザの独自要件

どんなビザか

米国において、米国と日本の貿易を促進する日本人を対象とするビザです。

要件

以下の要件をすべて満たす必要があります。

①Substantial Trade 要件
  • TradeはE-1ビザに関しては通常「貿易」と訳されています。この「貿易」は一方当事者を米国会社(特に断りのない場合には、上記の図の「米国受入会社」をいいます。以下同じ。また、明記した方がよい場合には「米国受入会社」と表記します。)としなければなりません(貿易相手については②の要件を満たせば誰でも構いません)。米国会社による日米間の貿易は、既に進行中である必要があります。さらに、米国会社の50%以上は日本人(日本企業を含むが米国永住権者は含まない)に所有されていなければなりません。
  • 「貿易」は実業、すなわち対価を得て物品やサービスを提供するものである必要があります。銀行業、保険業、運輸業、旅行業、通信業なども「貿易」に含まれます。
  • 米国会社と日本との間には継続的に貿易が行われていなければなりません。
②Principally要件
  • 米国会社と日本との貿易は、数量(volume)ベースで米国会社の全貿易量の50%以上でなければなりません。

E-2ビザの独自要件

どんなビザか

米国で申請者が相当額の投資をした、又は投資をしている過程にある米国会社を発展させ、又はその運営を指揮する日本人を対象とするビザです。

要件

以下の要件をすべて満たす必要があります。

①Investment 要件
  • 申請者は、自己資金を米国会社に投資しなければなりません。
  • 申請者が投資する自己資金は、米国でのビジネスの遂行の過程で損失を被るリスクを有するものでなければなりません(At Risk要件)。例えば、確実な担保付きでのみ貸付を行う貸金業などは、リスクがないため、投資とはみなされません。イメージしやすい例としては、米国で店舗を開設して物品販売業を行うことなどが考えられます。売上が出なければ損失が生じるリスクがあるからです。
  • まだ投資が完了していない場合には、すぐにでも米国でビジネスを開始できる状態にあることが必要です。上記の店舗開設の例でいうと、店舗を買い取る契約をしただけでは足りず、営業開始直前の状態であることが必要です。
  • 投資対象または従事するビジネスは実業でなければなりません。
②Substantial要件
  • 投資額は、通常、米国でビジネスを営むために必要と考えられるだけの資金でなければなりません。
  • 投資額の適切性を評価するためには、「割合テスト」(Proportionality Test)が使われます。このテストは、投資額と申請者が計画しているビジネスのコストを比較するものです。もし、ビジネスのコストが投資額と等しいのであれば、申請者は、投資額のすべてをビジネスリスクに晒すことになりますから、このテストに合格するといえます。ただし、このテストは実額も考慮するもので、あくまでも審査官のケースバイケースの評価によります。たとえば、申請者が計画しているビジネスが通常100億円相当のコストを必要とするのに対し、申請者の投資額が10億円相当でも、10億円相当という投資額の大きさからこのテストに合格するとされる場合があります。実務上、業種にもよりますが、実額として1,000~1,500万円程度を投資すればSubstantial要件を満たす可能性が高いとされています。この金額以下でも実額として十分と判断される可能性はありますが(実際に500万円以下の投資額で許可されたという事例もあります)、ビザ申請の成功率は下がると考えられています。
③Develop and operate 要件
  • 申請者が投資家本人である場合には、米国会社(株式会社に限らず、パートナーシップ等も含む)の支配権(control)を有していることを求められます。これはdevelop and operate要件と呼ばれています。申請者は、自己が投資をした、又は投資をしている過程にある米国会社を「develop and operate」するために渡米することを目的としなければなりません。そのためには、申請者が米国会社の支配権を有する必要があります。「支配権」は、申請者が50%以上の持ち分を有することや、会社の経営権を有する地位にあることを証明することによって要件を満たすことができます。申請者が被用者である場合には、この要件は求められません。そのため、50%未満の持ち分を有する投資家の場合には、被用者としてビザ申請をすることができます。

E-1ビザ及びE-2ビザ(以下、総称して「Eビザ」といいます)に共通する事項

①「重要な被用者」(Essential Employee)を渡米させたい場合

投資家本人がEビザの要件を満たす投資等をしていないが同企業の経営者的な地位につかせたり(supervisory or executive capacity)、地位はそれより低いが当該人物が有する高度の専門性(special qualifications)を発揮させたりするための日本人を米国受入会社に出向させたい場合もあるでしょう。このような重要な被用者も、Eビザの発給を受けることができます。「重要な被用者」としてEビザを発給されるためには以下の要件を満たさなければなりません。

  • 「重要な被用者」の雇用主である米国会社の50%以上は日本人(日本企業を含むが米国永住権者は含まない)が所有していなければなりません。
  • 「重要な被用者」は日本人でなければなりません。
  • 冒頭でも述べたとおり、「重要な被用者」は、米国会社の指導的な高度管理職(supervisory or executive capacity)としての地位を有するか、高度・特殊なスキル(special qualifications)を有することが必要であり、これは、米国受入会社の代表者が、この「重要な被用者」が米国受入会社でどのような地位につくか、又は、どのような特別なスキルを有していて米国受入会社でどのような立場でどのような業務をするかを具体的にレター等で説明する必要のある事項となります。
②家族を帯同する場合(同行のほか、後から渡米する場合を含む)

家族(配偶者及び21歳未満の子)は、家族用のEビザを取得する必要があります。このEビザにより、F-1ビザ(就学目的のビザ)を取得することなく就学することができます。
配偶者の場合には、米国においてUSCIS(U.S. Citizenship and Immigration Services, 米国市民権・移民局)から許可を受けることにより、家族用のEビザで米国受入会社以外の企業でも就労することができ、Eビザ保有者が米国受入会社でしか働くことができない点と比べ、かなり柔軟性があります。

③Eビザの有効期間

Eビザの最長期間は60か月です。ただし、有効期間満了時に申請者の貿易・投資目的が継続している場合には、延長の申請もできます。現行制度においては、事業が継続している場合には、実質的にEビザを半永久的に更新し続けることができます。
Eビザは非移民ビザ(non-immigrant visa)ですので、初めての申請の際には、Eビザの目的である貿易・投資が終了した場合には米国を去ることの意思を表明することが必要になります。そして、Eビザの目的である貿易や投資の事業が終了した場合には米国から退去しなければなりません。ただし、Eビザで入国後、永住要件を満たすことになれば、移民ビザ(immigrant visa)を申請して認められることにより、米国に居住を継続できることもあります。

初回Eビザ申請のステップ

米国受入会社が東京の米国大使館又は大阪・神戸の総領事館に登録されていること

初めてEビザの申請をする場合には、米国受入会社について企業登録をする必要があります。初めてのEビザの申請の場合には、申請者のビザが認められて初めて米国受入会社も登録されることになりますので、申請者自身のEビザの申請と米国受入会社の企業登録の手続きを同時に行うことになります(在日米国大使館・総領事館のサイトをご覧ください)。
有効なEビザを有している社員が一人でも在籍する限り、当該企業の登録は有効です。しかし、いったんEビザを有している社員が一人もいなくなってしまった場合には登録も抹消されますので、再度Eビザの申請をする場合には再び企業登録からやり直す必要があります。

申請について

①申請はオンライン申請書DS-160フォームで申請書を作成していきます。細かな箇所でも指示と異なっていると申請が受け付けられませんので、十分に注意しながら申請書を作成することが必要です。

②その他、DS-156Eという名称の書式を作成する必要があります。ここでは、米国受入会社の業務に関する情報、従業員に関する情報、及び、申請者自身に関する情報を記載します。

③さらに、DS-156Eに記載した内容の裏付けとなる資料(Supporting documents)を作成して、目次をつけ、各内容ごとにタブで仕切ってバインダーに綴じた状態で提出しなければなりません。DS-156Eの冒頭では、Supporting documentsの例として、以下のような情報を要求しています(以下は一部にすぎません)。

  • 申請者が投資資金の出資者であり支配権を有することを証する書面(口座記録、財務諸表、金銭消費貸借契約書、約束手形等)
  • 米国受入会社の存在を証する資料(会社定款、営業許可書、会社組織図、オフィスのリース契約書等)
  • 米国受入会社と日本との貿易の状況を証する資料(発注書、船荷証券、税関通過証、倉庫証券、出荷証明書、契約書等)
  • 米国投資に関する資料(権利証、契約書、口座記録、融資契約書等)
  • 米国受入会社が実体のある企業であることを証する資料(財務諸表、会社の案内書やカタログ、給与支払証明、課税申告書等)

専門家のサポートの必要性

Eビザについては、移民法、連邦行政規則、実務上の国務省審査マニュアル(FAM)等により要件がかなり詳細に規定されているうえ、企業登録といった他のビザにはない独特のプロセスもあります。
他方、法令に記載はされていないものの、当局の運用や裁量にまかされている面も多々あり、年々審査が厳格されていっているのが現状です。
提出する資料が膨大な量になることも、申請手続きについての項目でご理解いただけると思います。
Eビザの申請を個人で行うことは困難を極めます。そのため、ベリーベストの経験豊富な弁護士のサポートを受けることをおすすめいたします。

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