企業法務コラム
会社が設備投資などを行うとき「リース契約」を締結するケースはよくあります。
しかし正しい理解がないため、安易にリース契約を利用してトラブルに発展するケースが少なくありません。
そのようなリスクを防止するため、今回は、リース契約の仕組みや注意点について弁護士がくわしく解説していきます。
まずは「リース契約とは何か」理解しておきましょう。
リース契約とは、物件を買い取らずにリース会社から長期間借りて利用する契約です。たとえば3年や5年などの期間を設定して物件のリースを受けます。対象となるものは、コピー機や複合機、パソコン、電話、主装置などのOA機器、産業機械や工業機械、重機などの機械設備など、さまざまです。
リース契約には「ファイナンスリース」と「オペレーティングリース」があります。ファイナンスリースは、リース会社が物件を購入してユーザーに貸与するものです。約定のリース期間内にユーザー側から契約を中途解約することは認められず、解約する場合には残リース料を一括払いする必要があります。
ファイナンスリースには、所有権移転ファイナンスと所有権移転外ファイナンスがあります。所有権移転ファイナンスの場合には、リース期間の終了時に物件がユーザーのものとなりますが、所有権移転外ファイナンスの場合にはリース契約終了時、物件を返還しなければなりません。継続利用するには再リースするか、買い取る必要があります。
オペレーティングリースとは、リース期間終了後に物件を中古品として売却することを予定する短期間のリース契約です。リース会社が払った料金をユーザーが全額負担しなくて良いので、リース料を安く抑えることが可能で、中途解約も認められます。重機などの高額な物品のリースに適した方法です。
ローン契約は、分割払いで物件を「買い取る契約」です。ローンを利用した場合、対象物件の所有権は販売会社から購入者へ移ります。リース契約の場合、基本的には物件の所有者はリース会社のままで、ユーザーは単に借りて利用するだけの立場です。
レンタル契約はリース契約と同様に「賃貸借契約」の1種です。一般に「レンタル契約」という場合、レンタル期間は短期間です。またレンタル会社の在庫物品からしか借り受けることができません。中途解約できるのが通常です。リース契約の場合、期間が3年~7年など長くなり、リース物品は多種多様なものから選定できます。中途解約はできません。
●税務上のメリット
リース契約を締結すると毎月リース料を支払いますが、「リース会計基準」で定められる期間内であれば、リース料は全額経費にできます。また、リース期間は各物品の「法定耐用年数」よりも短期間にできるので、減価償却の期間を短くして多くの金額を経費算入できます。
●会計上のメリット
中小企業の場合、リース物件は会計基準上「賃貸物件」として処理できます。上場企業でも、300万円以下の所有権移転外ファイナンスリースであれば賃貸借として会計処理できます。「固定資産」にならないので、企業の財務比率に影響せず、固定資産税もかかりません。
●資金運用面でのメリット
リース契約を利用すると、資金を効率的に運用できます。
リースにせずに「購入」すると、当初に多額の初期費用(購入費用)がかかり、会社の財務状況を圧迫する可能性があります。またいったん買い取ってしまえばその後は費用がかかりませんが、大きな利益が出たときの経費にもできず費用の平準化ができません。
一方、リースであれば契約当初から終了時まで、リース料は毎月一定額ですので、会社の運転資金を確保、運用しやすくなります。
●中途解約ができない場合がある
次の項目で詳しく説明しますが、ファイナンス・リースの場合、リース期間中に中途解約ができません。どうしても解約したい場合、残リース料を一括払いしなければなりません。
クーリング・オフなどの適用もありません。
●所有者はリース会社のまま
リース対象の設備機械の所有者はリース会社です。リース期間後、買い取るには別途お金が必要ですし、再リースするにも新たにリース料が発生します。
●リース料が高額になりやすい
ファイナンス・リース契約のリース料は、物件の販売価格のみならず、リース会社の手数料や動産総合保険などの保険料・金利や税金などを考慮したものとなります。自社で直接購入した場合の物件代金よりも割高になるケースが多数です。
●保守管理はユーザー
リース物件の保守修繕は、ユーザー負担となり、リース会社は責任を負いません。もっとも、保守契約を締結し、ユーザーがリース料とは別に保守料を支払えば、保守修繕に対応してもらうことも可能です。
日本でリース契約と言えば多くが「ファイナンスリース契約」ですが、この場合、中途解約は基本的にできないので注意が必要です。
リース契約には「リース会計基準」という特別な会計基準が適用されます。そこでは「中途解約不能」であることが要件とされています。つまり、そもそも中途解約できないことがリース契約の要件となっているので、基本的に解約できません。現実にも、リース会社はわざわざ販売業者から物件を買い取ってユーザーにリースしているので、安易に中途解約されると損失が発生します。
以上より、リース期間終了後の物件転売などを予定していないファイナンスリース契約では、中途解約できない約定になっています。どうしても中途解約したい場合には、高額な解約金(残リース料の一括払い)をしなければなりません。
リース契約には「クーリングオフ」も適用されません。クーリングオフとは、契約後一定期間内であれば、無条件で契約を解除できることです。訪問販売や分割払いなどの場合、クーリングオフが適用されるケースがあります。
しかし事業者間の取引にはクーリングオフが適用されません。クーリングオフは、もともと商取引に慣れていない一般の消費者を保護するための制度だからです。リース契約を利用するのは、常日頃から商取引をしている事業者なので、保護の必要がないと考えられています。
事業所にリース会社の営業マンなどが訪ねてきて、コピー機などのリースを進められてその気になり契約書にサインしてしまったら、後に「やはりクーリングオフしたい」と言っても聞き入れてもらえません。
安易にリース契約を利用するとトラブルになる可能性があるので、注意が必要です。
中小零細事業者がリース契約を締結する際、現実に非常に多数のトラブルが発生しているので注意が必要です。以下では、リース契約でよくあるトラブル事例をご紹介します。
営業マンが虚偽の説明を行ってトラブルになるパターンがあります。
「お客様が現在ご使用の電話機は、もうすぐ使えなくなります」
「この装置を設置すると、電気代が安くなります」
このように説明をされて契約をしたけれども、実際にはそういった事実がない場合などです。
「キャンペーンは本日までなので、お急ぎください」などと契約を急かしてくるケースもあります。
説明不足により、勘違いしたままリース契約をしてしまうケースもあります。
リース物件の販売業者は、「とにかく物件を売りたい」ばかりに契約者への対応がおざなりになるケースが多々あります。契約するまでは非常に熱心だったのに、契約書にサインしたとたんに連絡がつきにくくなる、なかなか納品されない、故障しても対応してもらえないなどのトラブルが発生します。
業者によっては、利益を上げるために不当に高額なリース料金を設定していることがあります。きちんと対象物件の相場を調べずに契約すると、もともとの物件価格とはかけ離れた金額でリース契約を締結させられる可能性があります。
リース物件の営業は、多くの場合、リース会社ではなく販売店が行っています。しかしリース期間内に販売店が倒産してしまい、保守管理などを受けられなくなるケースがあります。それでもリース期間内はリース料の支払い義務が続くので、利用者は不安定な立場に立たされます。
リース契約でトラブルに遭わないためには、営業マンが訪ねてきたときに、その場で契約書などの書類にサインしないことが重要です。営業マンが熱心に勧めてきてもいったん引き取ってもらい、数日かけて契約すべきかどうか、検討しましょう。
契約前、リース料が不当に高額にされていないか確認するため、物件の相場価格を調べましょう。他社でリースを受けた方が安価な場合もあるので、複数業者に見積もりを取り、比較検討するのが良いでしょう。
自社にその物件が本当に必要かしっかり吟味しましょう。営業マンの説明に虚偽や大げさが含まれている可能性もあります。物件の性能や導入目的、サービスの内容、自社の状況などを総合的に検討してから本当に必要なケースでのみ契約に進みましょう。
企業の代表者にはリース契約をはじめとして、さまざまな商取引において自社に不利益を及ぼすことのないよう、慎重に対応する責任が課されています。契約締結時には、事前のリーガルチェックや早期対策が不可欠です。安全に企業運営を進めるには、顧問弁護士をつけておく必要が高いと言えるでしょう。
当事務所では、リース契約を始めとした商取引に関するさまざまな契約関係について、中小企業への積極的な支援を進めています。今後安全に企業経営を進めるため、まずは一度、お問い合わせください。
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