企業法務コラム

2020年07月31日
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M&Aで事業拡大を目指すときに失敗しないために知っておくべきこと

M&Aで事業拡大を目指すときに失敗しないために知っておくべきこと

事業を行っていく上で、経営者なら事業を拡大していきたいと思うものです。しかし、今の事業を拡大するためには時間がかかります。そんな時に有効なのが「M&A」です。

興味のある事業を行っている既存の会社を買収してしまえば、すぐにその業務のノウハウや営業基盤を手にいれることができ、一気に事業拡大ができるからです。

しかし、「M&A」というと難しそうで何をすればよいのかわからないという方も多いと思います。そこで今回は、M&Aとはどのようなもので、どこに注意すればよいのかについて解説したいと思います。

1、事業拡大とは?

会社の目的は利益を追求することなので、さらなる利益を追求するためには事業の拡大が必要となります。既存事業の規模を拡大することも事業拡大ですが、市場は限られているので、ある程度規模を拡大した後は、成長は鈍化します。そこで、次に行う事業拡大が現在行っている商品やサービスの提供以外に新しい商品やサービスを提供していくことです。

しかし、新たな分野への進出はノウハウもないことからすぐに利益を出すことは難しく、また、軌道に乗るまで時間もかかります。一般的に新規事業に乗り出す場合、市場調査を行い、どのようなニーズがあり、どのような商品やサービスが求められているのか把握する必要があります。その上で、新たな商品やサービスを考えることになります。新商品や新サービスの開発も、試行錯誤を繰り返しながら行うため時間がかかるという問題があります。

この問題を回避する方法としてM&Aがあります。M&Aによって会社を買収すれば、その会社のノウハウや営業基盤、人的リソースを一気に手に入れることができるからです。自ら新規事業を行う場合、成功するかどうかはわからず、失敗すれば投じた費用は損失になってしまいます。それに比べ、M&Aの場合、すでに結果が出ている会社を買収するので、全く新しく事業をするのに比べリスクが少なくて済みます。

ただ、M&Aには、さまざまな手法があり、手続きも複雑なのでM&AのノウハウがないとM&Aをすること自体が難しいということがあります。その場合には専門家の助けを借りるなどしてM&Aを進めることが必要です。

2、なぜ事業拡大にM&Aが有効なのか?

  1. (1)時間の節約

    事業を拡大するためには、人材の確保、生産ラインの確保、販売体制の構築など、とても時間がかかります。M&Aをすれば、これらはすでにあるので、すぐに利用することができ、収益もすぐに引き継ぐことができます。

  2. (2)ノウハウの獲得

    事業を行うにおいてノウハウはとても重要ですが、物と違って目に見えるものではないのでそれだけを買うことはできません。しかし、M&Aをすることにより、ノウハウを手に入れることができます。

  3. (3)ブランドの獲得

    すでにその分野において一定の知名度を有しているような場合、そのブランド価値を取得することができます。最近だとyahooがzozoを買収しましたが、「zozo」というブランドをyahooは使えるようになるわけです。

  4. (4)規模の拡大によるシナジー効果

    経営資源を統合することで無駄を排除しつつ、販売チャネルが拡大し、仕入れコストや販売コストも削減することができるため、1+1以上の効果があると言われています。

  5. (5)人材の獲得

    人手不足で最近は求人を出しても人が集まらないと言われています。新規事業ということになれば、スキルをもった人材を確保する必要がありますが、そのような人材を確保することは容易ではありません。また、採用にかかるコストと時間も膨大にかかります。それに対し、M&Aで会社を買収すれば、スキルをもった人材をそのまま獲得できます。

3、M&Aの代表的な手法

  1. (1)買収

    買収とは、会社が他の会社を買い取ることです。買収というと「乗っ取り」というイメージがありますが、それは「敵対的買収」と言われるものです。敵対的買収は、買収の対象となる会社の経営者との間で合意を得ずに行われる買収です。これに対して、買収対象の会社の経営者と合意して進められるのが「友好的買収」です。

    買収の方法としては、株式を取得する方法である「株式譲渡」、「株式交換」、「第三者割当増資」と、事業を取得する方法である「事業譲渡」、会社の一部を承継する「会社分割」があります。

    ①株式譲渡
    株式譲渡とは、株主が保有する株式を他人に譲渡することです。基本的には、株式譲渡により株式の過半数を買い取れば、その法人の支配権を握ることができます。上場会社であれば株式譲渡は日々行われていることなので、特別のことではありません。株主が変わるだけで会社はそのまま事業を継続することができます。

    ②株式交換
    株式交換とは、たとえばA社とB社がある場合に、B社の株主がB社の全株式をA社に譲渡し、それと交換にB社の株主はA社の株式の譲渡を受けるというものです。これをすることによりA社はB社を完全子会社化することができます。現金が必要なく、手続きが簡単というのがメリットです。

    ③第三者割当増資
    第三者割当増資とは、会社が特定の第三者に新株を引き受ける権利を割り当てる増資方法です。本来、単なる資金調達手段ですが、割り当てる第三者をその会社を買いたい方にすれば、出資により株式が発行されるので、それが過半数を超えればM&Aは成功することになります。

    ④事業譲渡
    事業譲渡とは、会社の事業の全部または一部を第三者に譲渡することをいいます。事業譲渡は、個別に財産を移転する手続きが必要になる点で手続きが煩雑になります。しかし、財産を取捨選択することができるので、潜在的なリスクを引き受けなくて済むというメリットがあります。

    ⑤会社分割
    会社分割とは、会社が権利義務の全部または一部を、他の会社に承継させる手法です。会社分割には「吸収分割」と「新設分割」があります。吸収分割とは、切り出す事業を既存の会社に承継させる手法です。新設分割とは、切り出す事業を新しく設立する法人に承継させる手法です。

    また、事業を分割し引き渡す会社に割り当てる形式の会社分割のうち、分割の対価を分割会社に割り当てるのを「分社型分割」といいます。分割の対価を分割会社ではなく分割会社の株主に割り当てるのが「分割型分割」です。

  2. (2)合併

    合併とは、2つ以上の会社が、契約により1つの会社に統合される法的な手続きをいいます。合併には、「吸収合併」と「新設合併」があります。吸収合併とは、たとえばA社とB社がある場合にA社がB社を吸収する形で合併するものです。A社を「存続会社」、B社を「消滅会社」といいます。新設合併とは、たとえばA社とB社がある場合にA社もB社も消滅して新たにC社を設立するという形で合併するものです。

    このようにM&Aには多くの手法がありますが、手続きが簡単なことからほとんどは株式譲渡によって行われています。次いで多いのが事業譲渡になります。選択のポイントは簡単かどうかです。

4、M&Aにおいて買い手が注視すべき点は?

  1. (1)コストは見合うものか

    M&Aによって規模が大きくなれば、シナジー効果が得られる反面、管理コストや固定費が増えます。固定費は売り上げに関わらず発生するので、たとえば買収した会社の売り上げが下がってきた場合でも経営を維持できる体力があるかを考えた上で買収する必要があります。

  2. (2)マネジメントができるか

    特に異業種を取り込んだ場合、これまでとは異なるマネジメントが要求されるので、マネジメントが難しくなるということがあります。また、規模が大きくなることによるマネジメントの難しさも加わりますので、適切な管理職の配置が求められます。

  3. (3)潜在リスクは許容範囲か

    M&Aをする前にはかなり詳細にデューデリジェンスを行いますが、それでも全てを見ることはできません。不良社員がいたり、不正を行っていたり、訴訟リスクがあったりと、潜在的なリスクを引き受けることになります。それを踏まえてM&Aはしなければなりません。

  4. (4)情報収集は十分か

    M&Aをする場合、買い手は売り手の情報を精査しますが、それ以外にも関連会社や市場の評判も含めて調査する必要があります。どうしても、売り手は少しでも高く売りたいので、良い情報しか出してこないことがあるからです。

  5. (5)買収価格に問題はないか

    公開会社についてM&Aをする場合には、株価が明らかなので難しくはないですが、中小企業などで非公開会社の場合は株価が簡単にはわからないため、買収側としては慎重に判断する必要があります。買収対象側が提出してくる株価の鑑定評価だけを信じるのではなく、買収側も別の株価鑑定を依頼するなど複数の鑑定を取ることが重要です。

  6. (6)従業員への配慮は十分か

    買収される会社に勤めている従業員は、今後どうなるか不安になっています。場合によっては退職しようと考えているかも知れません。そうなると優秀な人材がいなくなり、M&Aは失敗してしまいます。しっかりとM&Aに至った経緯を説明し、従業員への配慮は十分か検討する必要があります。

  7. (7)法定開示は忘れていないか

    上場企業の場合、大量の株式の移動があると株価に影響するため、新たに発行会社の5%を超える株式を保有した場合は、株式を取得した日から5営業日以内に「大量保有報告書」を提出することが義務付けられています。

  8. (8)チェンジオブコントロール(COC)条項はあるか

    チェンジオブコントロール(COC)条項とは、経営権の移動があった場合にどう対応するかを定めた、取引先との契約上の条項です。たとえば、「株主が全議決権の2分の1を超えて変動した場合、契約を解除することができる」というような条項です。この条項がある場合、取引先と継続的に取引できるかわからないので、あらかじめ取引先が解除権を行使するのか確認する必要があります。

5、M&Aでよくある失敗要因

  1. (1)従業員の退職

    M&Aにより異なる企業文化が入ることを嫌い、特に優秀な社員ほど辞めてしまうということがあります。特に、社長の人柄についてきた職人のような人たちはお金では動かないところがあるので、社長が退任するなら、一緒に辞めると言いかねません。その点は見極めないとM&Aは失敗します。

  2. (2)デューデリジェンス不足

    デューデリジェンスの不足により、相手会社の調査が十分でないと、後で簿外債務が発覚したり、多額の損害賠償を請求されたりというようなことが起こりえます。そのため、デューデリジェンスは専門家に依頼し、しっかりと行わないとM&Aは失敗します。

  3. (3)相手会社との見解の相違

    初めのうちはお互い合意していても、話を詰めていく内に経営戦略の違いや将来のビジョンの違いが生まれることもあります。そのような時にうまく調整できないとM&Aは失敗に終わります。

6、M&Aで事業拡大を目指すうえで弁護士に相談するメリット

M&Aでは、デューデリジェンスがもっとも重要といっても過言ではありませんが、特に法務面のリスクを見ることは重要です。弁護士は、基本的な法律について知識と経験があり、必要に応じて各種法令を調査することができます。

そのため、M&Aの対象となる会社がいかなる業種であっても、弁護士がデューデリジェンスを行うことで、法務リスクをあぶり出すことができます。

M&Aをするには、契約を締結しなければなりませんが、その契約書の作成またはチェックをすることができます。その上で、依頼された会社にできるだけ有利になる条項を入れるよう交渉します。弁護士は、契約の条件交渉や価格交渉の場に同席し助言することもできます。また、会社法上の手続き、監督官庁への届け出等についても代行することができます。

7、まとめ

今回は、M&Aの手法やM&Aをする上での注意点などについて解説してきました。専門用語も多く、M&Aは難しいと感じた方もいるかもしれません。

M&Aは、決して簡単というものではありませんが、そうかと言って尻込みする必要はありません。M&A専門会社や弁護士が必要なサポートをしますので心配はいりません。

ベリーベスト法律事務所では、「M&A専門チームの弁護士」がM&Aをトータルサポートしますので、M&Aについて相談したいという場合にはお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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