企業法務コラム

2023年01月17日
  • 計画年休

計画年休とは?企業に導入する方法や労使協定締結の注意点

計画年休とは?企業に導入する方法や労使協定締結の注意点

令和元年4月より、使用者は労働者に対して、年5日以上の有給休暇を取得させることが義務化されました。

有給休暇の取得に関する使用者の義務を果たすにあたっては、「計画年休(年次有給休暇の計画的付与制度)」の導入を検討することをおすすめします。計画年休を導入することで、従業員に有給休暇をスムーズに取得させることができるようになるでしょう。

本コラムでは、計画年休の概要や手続き、メリットやデメリットについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、年次有給休暇の取得が義務化|対象となる従業員の範囲は?

計画年休の制度は、令和元年4月より使用者に課されている、労働者に年次有給休暇を取得させる義務を果たすことに利用できます。
まずは、年次有給休暇に関する使用者側の義務について、労働基準法上の基本的なルールを解説します。

  1. (1)年次有給休暇とは?

    「年次有給休暇」とは、労働基準法に基づいて労働者に付与される、有給の休暇を意味します。
    使用者には、基準期間の全労働日の8割以上出勤した労働者に対し、その継続勤務期間に応じた日数の年次有給休暇を与えることが義務付けられています(労働基準法第39条第1項、第2項)。
    所定労働日数が週4日以下(週以外の期間によって所定労働日数が定められている場合は、年216日以下)の労働者についても、所定労働日数と継続勤務期間に応じて、一定の日数の年次有給休暇が付与されます(同条第3項、労働基準法施行規則第24条の3)。

    なお、労働契約に基づき、年次有給休暇の日数を超えて有給の休暇が与えられる場合もあります。
    この場合の休暇は、会社独自の制度によって与えられるものであり(特別休暇など)、労働基準法上の年次有給休暇とは異なる点に注意してください。

  2. (2)令和元年4月より、年次有給休暇の取得が義務化

    令和元年4月1日より、いわゆる「働き方改革関連法」が施行されました。

    その一環として、年間10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対して、時季を定めて1年に5日以上の年次有給休暇を与えることが、使用者に義務付けられたのです(労働基準法第39条第7項)。この義務に違反した場合、30万円以下の罰金に処するものとされています(労働基準法第120条1号)。
    仕事が忙しすぎて年次有給休暇を取得しにくい労働者が多い状況を考慮したうえで、使用者主導で年次有給休暇を取得させることにより労働者の心身のリフレッシュを図るための施策となります。

  3. (3)年次有給休暇を取得させなければならない従業員の範囲

    使用者は、年間10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対して、年5日以上年次有給休暇を取得させることを義務付けられています(労働基準法第39条第7項)。

    以下の要件をいずれも満たす労働者は、すべて、年次有給休暇の取得義務の対象となるのです。

    • ① 継続勤務期間が6か月以上であること
    • ② 基準期間の全労働日の8割以上出勤したこと

    【基準期間】
    継続勤務期間が6か月以上1年6か月未満の場合は、雇い入れから6か月間。
    1年6か月以上2年6か月未満の場合は、雇い入れの6か月後から1年間。
    2年6か月以上3年6か月未満の場合は、雇い入れの1年6か月後から1年間。

    年次有給休暇の日数(原則)

    継続勤務期間 年次有給休暇の日数
    6か月以上1年6か月未満 10日以上
    1年6か月以上2年6か月未満 11日以上
    2年6か月以上3年6か月未満 12日以上
    3年6か月以上4年6か月未満 14日以上
    4年6か月以上5年6か月未満 16日以上
    5年6か月以上6年6か月未満 18日以上
    6年6か月以上 20日以上

    パートタイムで働く労働者などについても、所定労働日数と継続勤務期間に応じて、下表の日数の年次有給休暇が付与されます(同条第3項、労働基準法施行規則第24条の3)。
    下表に従い、年10日以上の有給休暇が付与される場合は、年次有給休暇の取得義務の対象となるのです。

    年次有給休暇の日数(パートタイム等)

    週所定労働時間4日3日2日1日
    年所定労働時間169日以上
    216日以下
    121日以上
    168日以下
    73日以上
    120日以下
    48日以上
    72日以下
    継続勤務期間 6か月以上
    1年6か月未満
    7日以上5日以上3日以上1日以上
    1年6か月以上
    2年6か月未満
    8日以上6日以上4日以上2日以上
    2年6か月以上
    3年6か月未満
    9日以上6日以上4日以上2日以上
    3年6か月以上
    4年6か月未満
    10日以上8日以上5日以上2日以上
    4年6か月以上
    5年6か月未満
    12日以上9日以上6日以上3日以上
    5年6か月以上
    6年6か月未満
    13日以上10日以上6日以上3日以上
    6年6か月以上15日以上11日以上7日以上3日以上
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2、計画年休とは?企業側・労働者側のメリット・デメリット

計画年休(年次有給休暇の計画的付与制度)とは、年次有給休暇のうち5日を超える部分について、労使協定に基づき計画的に労働者へ付与する制度です(労働基準法第39条第6項)。

  1. (1)計画年休の導入例

    計画年休は、労使協定で定めた方法に従う限り、全労働者に対して一斉に付与することも、グループ(部署)や個人ごとに個別に付与することも、どちらも認められています。

    計画年休の導入例としては、以下のようなパターンが挙げられます。

    ① 夏季休暇や年末年始休暇に付加して、計画年休を指定する
    (例)8月13日から8月15日までの夏季休暇に付加して、8月11日・8月12日を計画年休とする。

    ② なんらかのイベントに合わせて、計画年休としてアニバーサリー休暇を指定する
    (例)従業員の誕生日と前後1日ずつの計3日間を、計画年休(アニバーサリー休暇)とする。

    ③ 休日が飛び石となっている期間について、計画年休としてブリッジホリデーを指定する
    (例)平日である4月30日から5月2日までの3日間を計画年休(ブリッジホリデー)として、ゴールデンウイークの大型連休を創出する。

    ④ 閑散期の一定時期において、計画年休を指定する
    (例)閑散期である2月の毎週月曜を、計画年休とする。
  2. (2)企業側のメリット・デメリット

    ● メリット
    計画年休を導入することにより、すべての従業員に年次有給休暇を取得させることができるため、企業側としては義務の履行漏れがなくなるメリットがあります。
    また、従業員の年次有給休暇取得日をある程度コントロールできる点やワークライフバランスを確保して従業員の心身を健康に保てる点なども、企業側にとってのメリットと言えるでしょう。

    ● デメリット
    その一方で、計画年休を導入する際には、労使協定の締結などの手続きが必要となります。
    また、年次有給休暇が残っていない・付与されていないなどの理由で、計画年休の対象外となる従業員も発生する可能性もあるでしょう。

    企業側としては、こうした手続きや従業員への配慮について、一定のコスト負担を強いられる点が、計画年休導入のデメリットと言えます。

  3. (3)労働者側のメリット・デメリット

    労働者側にとっては、業務が忙しかったとしても会社の制度として年次有給休暇を取得できるため、休むことに関して抵抗感を覚える必要がない点が、計画年休のメリットとなります。

    その反面、計画年休により年次有給休暇が消費された結果、自分の判断で自由に取得できる年次有給休暇の日数が減ってしまう点が、労働者側にとってのデメリットです。

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3、計画年休を導入する場合の手続き

計画年休を導入する場合、労使協定の締結と就業規則への規定が必要となります。

  1. (1)労使協定を締結する

    計画年休を導入するためには、労使協定の締結が必要になります(労働基準法第39条第6項)。

    労働者側の当事者は、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、労働組合がない場合は労働者の過半数代表者となります。

    労使協定で定めるべき事項は、以下のとおりです。

    ① 計画年休を付与する対象者
    対象時期に休業・退職が予定されている労働者については、対象者から外します。

    ② 対象となる年次有給休暇の日数
    年間5日を超える有給休暇の日数の範囲内で、計画年休の対象日数を定めます。

    ③ 計画年休付与の具体的方法
    計画年休の付与方式に応じて、以下の事項を定めます。
    • 事業場全体に付与する場合:計画年休の付与日
    • グループ(部署など)別に付与する場合:グループ別の計画年休の付与日
    • 個人別に付与する場合:付与計画表の作成時期、作成手続き

    ④ 年次有給休暇の付与日数が少ない労働者の取り扱い
    事業場全体で計画年休を付与するに当たり、計画年休の日数よりも年次有給休暇の日数が下回っている労働者について、以下のいずれかの措置を規定します。
    • 有給の特別休暇を付与する。
    • 休業手当として、平均賃金の60%以上を支払う。

    ⑤ 付与日の変更手続き
    計画年休の付与日を変更する際の手続きについて定めます。

    なお、計画年休に関する労使協定は、労働基準監督署に届け出する必要はありません。

  2. (2)就業規則に計画年休制度の内容を定める|届け出も必要

    計画年休は休暇に関する制度であるため、就業規則における必要的記載事項となります(労働基準法第89条第1号)。
    計画年休に関する労使協定を締結したら、その内容を就業規則に反映する改定を行いましょう。

    なお、労使協定とは異なり、計画年休に関する変更後の就業規則については、労働基準監督署への届け出が必要です

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4、計画年休を導入する際に、企業側が注意すべきポイント

以下では、計画年休の導入する際に、労働者側とのトラブルを回避するために企業側が注意すべきポイントについて解説します。

  1. (1)労働者に対して、計画年休導入のメリットをよく説明する

    労働者の立場からすると、計画年休は「有給取得の時期を勝手に決められる」という印象を強く持ってしまいがちです。

    そのため、企業側としては、「計画年休は労働者側にもメリットがある制度だ」ということを、きちんと説明するようにしましょう。

  2. (2)計画年休対象外の従業員についての対応を検討する

    計画年休を導入するにあたっては、年次有給休暇の付与対象外である労働者や、日数が不足している労働者をどのように取り扱うかが、企業側にとって重要な検討課題となります。

    事業場全体を計画年休によって休業とするならば、年次有給休暇が少ない(またはない)労働者に対しては、少なくとも平均賃金の60%の休業手当を支払わなければなりません(労働基準法第26条)。

    また、年次有給休暇が少ない(またはない)労働者は出勤させて、他の労働者には計画年休を取得させる場合には、計画年休の対象外となる従業員に業務負担が偏らないように配慮する必要があるでしょう。

    いずれにしても、労働者間で不公平感が出ないような制度設計を行うことが大切です。

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5、まとめ

計画年休を導入することには、企業側にとっては、「年次有給休暇の取得に関する義務を漏れなく果たしながら、計画的に出勤管理を行うことができる」というメリットがあります。
その一方で、計画年休を導入する際には、労働者が不公平を感じないようなフォローや説明が必要になります。

計画年休をトラブルなく円滑に導入するためには、制度設計や手続きに関して、弁護士のアドバイスを受けることをおすすめします。

ベリーベスト法律事務所では、計画年休の導入を含めて、企業の労務管理に関するご相談を受け付けております。
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  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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