企業法務コラム

2021年03月29日
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労働基準法違反の罰則は? 違反行為が発覚した会社はどうなるのか

労働基準法違反の罰則は? 違反行為が発覚した会社はどうなるのか

従業員を雇用する使用者(会社・事業主)は、労働基準法違反に当たる行為をしないよう、十分に注意する必要があります。

もし労働基準法違反に該当してしまうと、最悪の場合、経営者などが逮捕されて罰則を科されてしまう可能性があります。

本コラムでは、労働基準法違反となる代表的な行為と、そのような行為を行った場合に科される罰則、さらに労働基準法違反により逮捕される可能性などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、労働基準法を守ることは使用者の義務

労働基準法は、使用者(会社・事業主)に対して多くの義務を課しており、使用者は労働基準法上の義務を漏れなく遵守する必要があります。

  1. (1)労働基準法とは労働者の権利を守るための法律

    労働基準法は、労働者の権利を守ることを目的として制定された法律です。

    労働者は使用者に対して、経済力や社会的立場の観点から、力関係で大きく劣るのが通常です。そのため、何のルールも存在しない状態では、使用者が労働者に対して過酷な労働条件を課してしまうおそれがあります。

    このような事態を避けるために、労働基準法によって、使用者が労働者に課してよい労働条件などに関するルールが定められているのです。

  2. (2)使用者は労働基準法を守らないと罰則が与えられる場合がある

    使用者が労働基準法違反となる行為を行った場合、労働者から損害賠償などを請求されたり、刑事上の罰則が科されたりする可能性があります。

    労働基準法違反を理由とする罰則などの制裁を受けると、社名などが報道されることもあります。そうなってしまうと、使用者にとって経済的・社会的に大きなダメージとなるでしょう。

    そのため使用者としては、労働基準法違反が発生しないように、日々の業務を適切に管理・運営していくことが求められます。

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2、労働基準法違反の罰則と代表的な違反行為

労働基準法違反に該当する行為は多岐にわたりますが、その悪質性の程度に応じて、違反行為ごとに罰則規定が設けられています。

以下では、罰則の内容ごとに、代表的な労働基準法違反の行為を紹介します。

  1. (1)1年以上10年以下の懲役または20万以上300万円以下の罰金

    労働基準法違反でもっとも重い罰則は、「1年以上10年以下の懲役または20万以上300万円以下の罰金」です(労働基準法第117条)。

    この罰則に該当するのは、憲法上の要請でもある「強制労働の禁止」に違反する行為です(同法第5条)。

  2. (2)1年以下の懲役または50万円以下の罰金

    次に重い罰則は、「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」です(労働基準法第118条第1項、第2項)。

    この罰則に該当するのは、以下の行為です。

    • 労働者からの中間搾取(第6条)
    • 最低年齢未満の児童を労働させる行為(第56条第1項)
    • 坑内労働の禁止・制限違反(第63条、第64条の2)
  3. (3)6か月以下の懲役または30万円以下の罰金

    3番目に重い罰則は、「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」です(労働基準法第119条)。

    この罰則に該当する違反行為は非常にたくさんありますが、代表的なものは以下のとおりです。

    • 国籍、信条または社会的身分を理由に、労働条件面で労働者を差別する行為(第3条)
    • 女性労働者を男性労働者に比べて賃金面で差別する行為(第4条)
    • 解雇禁止期間中の解雇(第19条)
    • 解雇予告義務などへの違反(第20条)
    • 労働者に違法な時間外労働をさせる行為(36協定違反など)(第32条、第36条第6項)
    • 時間外労働、深夜労働、休日労働についての割増賃金(残業代)の不払い(第37条)
    • 労働基準監督署などへの申告を理由とした解雇その他の不利益な取り扱い(第104条第2項)
  4. (4)30万円以下の罰金

    労働基準法違反に科されるもっとも軽い罰則は、「30万円以下の罰金」です(労働基準法第120条)。
    この罰則に該当する違反行為も多岐にわたりますが、代表的なものは以下のとおりです。

    • 労働者に対して労働条件を明示しない行為(第15条第1項)
    • 休業手当の不支給(第26条)
    • 就業規則の作成、届出義務違反(第89条)
    • 法定の上限を超えた制裁としての減給(第91条)

3、労働基準法違反で逮捕されることはあるのか

労働基準法違反の行為に罰則が科されていることからもわかるように、労働基準法違反を犯した場合は、逮捕されてしまう可能性もあります。

しかし、いきなり逮捕されるわけではなく、通常は労働基準監督官による行政指導から始まり、段階を踏んで逮捕に至ることになります。

  1. (1)まずは労働基準監督官による調査

    使用者による労働基準法違反の行為を取り締まるのは、労働基準監督官です。
    労働基準監督官は、使用者が労働基準法違反を犯しているという疑いを持った場合、使用者の事業所に赴いて調査を行います。

    これは、労働基準監督官に、事業場・寄宿舎などに臨検し、帳簿や書類の提出を求め、使用者や労働者に対する尋問を行う権限が与えられていることによるものです(労働基準法第101条第1項)。

    労働基準監督官の権限に基づく調査を拒んだり、虚偽の陳述をしたりすると、「30万円以下の罰金」を科されてしまう可能性があるので注意しましょう(同法第120条第4号)。

  2. (2)違反が認められた場合は是正勧告が行われる

    労働基準監督官による調査の結果、使用者が労働基準法違反を犯していると認められた場合には、労働基準監督官から使用者に対して是正勧告が行われます。

    この是正勧告は、いわゆる「行政指導」に分類されるもので、法的拘束力はありません。
    しかし、行政指導に従わない場合には、労働基準法違反の状態が継続するため、後の刑事処分に繋がる可能性が高まります。

    そのため、是正勧告の段階で、労働基準監督官による要請に誠実に従い、労働基準法違反の状態を解消すべきでしょう。

  3. (3)違反状態が是正されない場合は使用者の逮捕もあり得る

    労働基準監督官による是正勧告にもかかわらず、労働基準法違反の状態が是正されなかった場合、いよいよ逮捕・起訴を含む刑事手続に移行します。

    刑事手続は、通常、警察官・検察官が執り行う手続きです。
    しかし、労働基準監督官は、労働基準法違反の罪について、刑事訴訟法に規定する司法警察官の職務を行うこととされています(労働基準法第102条)。

    つまり、労働基準監督官は、通常の刑事事件における司法警察官と同様に、令状に基づく違反者の逮捕権限を与えられているということです。もっとも、労働基準監督官が実際に逮捕を行う場面は限られています。

    警察官や労働基準監督官に使用者の役員などが逮捕されてしまうと、経営に支障が出てしまうばかりでなく、大々的に報道されて、会社の評判に大きな傷がついてしまう可能性もあります。
    そのため、実際に逮捕されてしまうよりも前の段階から、労働基準法違反の状態を解消しておくことが大切です。

  4. (4)逮捕されなくても在宅捜査・起訴の可能性あり

    また、逮捕されなかったとしても、そのことから直ちに不起訴となるわけではありません。逮捕されないまま起訴され、刑事裁判の場で罰則を科すかどうか争われるというケースもあります。

    逮捕をされていない場合、警察や検察から取調べのため任意の出頭要請がありますので、適宜警察や検察に出頭して取調べを受けることになります。
    取調べなどの捜査が完了し、起訴すべきとされたものについて、起訴がされることになります。

4、労働基準法違反に問われたら弁護士に相談を

労働基準法違反を疑われている使用者の方は、お早めにベリーベスト法律事務所の弁護士にご相談ください。

  1. (1)労働基準法の内容を踏まえた速やかな是正が必要

    労働基準法違反を労働基準監督官から指摘された場合には、逮捕・起訴の段階に至る前に、速やかに違法状態を是正しなければなりません。

    是正の対応は、労働基準法の規定内容を細かくチェックしたうえで、改めて労働基準監督官から違法性を指摘されないよう、丁寧に行う必要があります。
    そのため、労務関連の対応について知見が豊富な弁護士に相談することをおすすめいたします。

  2. (2)仮に逮捕されても身柄解放に向けた弁護活動を依頼できる

    また、万が一労働基準法違反で逮捕されてしまった場合には、一刻も早い身柄解放を目指しましょう。
    その際には、弁護士を通じて警察官や検察官とやり取りをしたり、労働者側との示談を進めたりすることにより、身柄拘束から解放される可能性が高まります。

    ベリーベスト法律事務所では、身柄解放に向けた弁護活動についてもきめ細やかに対応しているので、安心してお任せいただけます。

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5、まとめ

労働基準法を守ることは使用者の義務であり、労働基準法違反には使用者側に罰則が科される可能性があります。また、労働基準法違反として報道されてしまうことがあります。労働基準法違反を犯すような会社であるという情報が世間に広まった場合、その会社の世間からの信用は失墜しますので、決して労働基準法を軽視してはいけません。

ベリーベスト法律事務所では、労働法務専門チームを設置して、常に最新の法令や事例に照らした対応が可能です。
労務に関するご依頼をいただければ、労働紛争リスク低減を目指した施策を提案したり、労働紛争の事件化を阻止したりするなど、状況に応じた適切な対応をとることができます。

労働基準法との関係で業務をどのように改善しようか悩んでいる、労働者との紛争の事件化を阻止してほしいと考えているなどの使用者側の方は、ぜひ一度ベリーベスト法律事務所にご相談ください。

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