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今回の改正法では、漫画や論文などの静止画コンテンツの違法ダウンロードが新たに刑事罰の対象となる、という点が注目されています。これまで合法であった行為が違法となるケースも生じるため、事業者の方におかれましては、従業員や自社サービスのユーザーに対して注意喚起を行うことが求められているのです。
本コラムでは、著作権改正の目的と経緯、違法ダウンロード規制の対象や罰則の内容まで、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
まずは、これまでの成立してきた違法ダウンロード規制の目的と歴史について、簡潔に紹介します。
							今回の著作権法改正によって違法ダウンロードに関する規制が強化されたことの主眼は、インターネット上の「海賊版」対策です。
							
							海賊版サイトなどにコンテンツを違法にアップロードすることは、コンテンツ権利者の収益に打撃を与えて、制作意欲を減退させるなどして文化の衰退を招きかねない行為です。
							
							違法アップロード行為についてはこれまでも著作権法上の犯罪行為とされていましたが、違法コンテンツのダウンロード行為については、平成24年にはじめて刑事罰化されました。
							今回の令和2年改正著作権法では、違法ダウンロード規制をさらに強化することにより、インターネット上の著作権侵害行為を制限し、著作権者の権利を保護することが目的とされています。
						
							上記の通り、違法ダウンロード行為は、平成24年10月1日に著作権法が改正・施行されたことで、はじめて刑事罰の対象になりました。
							この時点では、刑事罰の対象となる行為は、販売または有料配信されている「音楽」と「映像」の違法ダウンロードに限られていました。
							漫画や雑誌、論文などの静止画コンテンツの違法ダウンロードは平成24年の時点では規制されず、規制の是非についての議論が継続することになりました。
							
							そして、令和1年に、静止画コンテンツに関する違法ダウンロードを規制する著作権法改正案が国会に提出されました。
							しかし、この時にも、関係者の理解が十分に得られていないことを理由として、法改正は見送りとなりました。
							
							令和2年の通常国会では、令和1年の改正案をさらに改良した、スクリーンショットへの写りこみや数十ページ中の1コマのダウンロードなどの軽微な行為を刑事罰の対象から除外した、新改正案が提出されました。
							この新改正案が令和2年6月5日に可決・成立して、令和3年1月1日から施行される予定となっているのです。
						
ここでは、令和2年改正著作権法の規定に基づきながら、どのような行為が違法ダウンロードに該当するのかについて解説します。
							違法ダウンロード規制の対象となるコンテンツは、令和2年の著作権法改正により、違法にアップロードされた著作物全般に拡大されました。
							従来から刑事罰の対象となっていた音楽・映像のみならず、漫画・書籍・論文などの静止画コンテンツ、またコンピュータプログラムなどの違法ダウンロードについても、新たに刑事罰の対象となったのです。
							
							ただし、刑事罰の対象となるのは、“正規版が有償で提供されている著作物”の違法ダウンロードに限られます。著作者が無料で公開している著作物のダウンロードは、刑事罰の対象とならないのです。
						
							「違法ダウンロード」について簡単に定義すると、“違法にアップロードされた著作物をダウンロードすること”になります。
							
							ただし、以下のいずれかに該当する場合には、違法にアップロードされた著作物のダウンロードであっても、著作権法上禁止されている「違法ダウンロード」には該当しません。
						
ここでは、令和2年改正後の新しいルールに基づきながら、違法ダウンロードに対して課される罰則の詳細について解説します。
							違法ダウンロードに対して課される罰則は、「2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金またはこれを併科」とされています(改正著作権法第119条第3項)。
							
							ただし、従来から刑事罰の対象であった音楽・映像の録音・録画を除く、他の著作物の違法ダウンロード行為については、「継続的にまたは反復して」行うことが罰則の要件とされています(同項第2号)。つまり、一度限りの違法ダウンロードは、罰則を科されない可能性があるのです。
							
							また、違法ダウンロードに関する罪は、全般的に「親告罪」とされています。そのため、被害者である著作権者の告訴がなければ、刑事訴追の対象にはなりません(改正著作権法第123条)。
						
							一般社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)のデータによると、映像・音楽の違法ダウンロードが刑事罰化された平成24年10月以降、違法ダウンロードが理由で逮捕された例はないようです。
							
							これは、違法ダウンロードに関する罪が親告罪とされていること、および違法ダウンロードが行われたという事実の証拠をつかむのが難しいことに理由があると考えられます。
							そのため、現状ではもっぱら違法アップロードを行った側のみに逮捕者が出ている状況です。
							
							ただし、令和2年の著作権法改正により、違法ダウンロードの対象コンテンツが拡大したことを受けて、今後はより多くの関係者が違法ダウンロードに対して規制の目を向けることになります。
							そのため、改正著作権法が施行される令和3年以降からは、違法アップロードした人のみならず違法ダウンロードした人からも逮捕者が出る可能性はあるでしょう。
						
					現代では、多種多様な業種の会社において、日常業務から画像・論文・ソフトウェアなどの著作物を使用する機会が増えています。インターネットからダウンロードする場合も多いでしょう。
					そのため、日常業務を運営するなかで、新たに規制対象となった違法ダウンロードに該当する行為をしてしまうことがないように、十分な注意を払う必要があります。
				
							自社で画像・論文・ソフトウェアを取り扱うサービスを運営している場合、ユーザー側により違法ダウンロードが行われる危険性が常に存在します。
							
							会社側がユーザーによる違法ダウンロードに対して何の対策も打たないでいると、画像・論文・ソフトウェアを提供してくれている取引先に著しい損害を与えることはもちろん、最悪の場合、会社が違法ダウンロード行為を幇助しているとみなされて、イメージダウンや風評被害などにより業績も悪化してしまうおそれがあります。
							そのため、利用規約や注意書きのなかで違法ダウンロード禁止のポリシーを明確化して、違法ダウンロードをしないようにユーザーに対して注意喚起しておくことで、違法ダウンロードを行ったユーザーが違法ダウンロードの故意を有していたと後に認定されるよう行動することが重要です。
						
							自社の従業員が業務のなかで論文やソフトウェアをダウンロードする機会がある場合には、従業員が違法ダウンロードを行ってしまい、会社の責任が問われてしまうおそれがあります。
							
							そのため、改正された著作権法の内容に適するように、自社の社内規則を整備することが重要になります。また、社内セミナーなどを通じて社員教育を行うことや、ダウンロードに関するチェック体制を構築することも、違法ダウンロード行為が社内で発生することを防ぐ有効な対策といえます。
						
					自社が違法ダウンロード行為に関わってしまうリスクについて不安がある場合には、弁護士に相談して、業務内容をチェックしてもらうことをおすすめします。
					
					たとえば画像・論文・ソフトウェアを取り扱うサービスを運営している会社の場合、ユーザーに対してどのように注意喚起をするか、利用規約をどのように改訂すべきなどについて、法律の専門知識に基づいたアドバイスを受けることができます。
					
					また、従業員が業務上違法ダウンロードを行ってしまうリスクが心配な会社の場合は、社内規程の改定や社員教育の方法、もし実際に違法ダウンロード行為が社内で発生してしまった場合の対処法などについて、弁護士からの専門的なアドバイスを受けられます。
					
					違法ダウンロードに関して不安がある企業の経営者や担当者の方は、ぜひいちど弁護士にご相談ください。
				
					自社が違法ダウンロードに関わってしまう可能性があるのではないかと不安な会社は、コンプライアンスの観点からも、いちど弁護士に相談することをおすすめします。
					
					ベリーベスト法律事務所では、企業のお客様向けに顧問弁護士サービスをご提供しております。
					
					また、各種契約書・利用規約・就業規則・社内規程などの単発のリーガルチェックについても、随時受け付けております。お見積りは、以下のフォームから簡単に取得することが可能です。
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					著作権法の新しいルールについて万全の備えをしたい場合には、ベリーベスト法律事務所の弁護士にまで、お気軽にお問い合わせください。
				
 
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