3月決算の会社にとって、6月は株主総会の季節です。株主総会を予定されている皆さまの、ご準備のほどは、いかがでしょうか。
動議対応や想定問答等の実務的な準備は毎年行われていると思いますが、今回は、正しい手続きで株主総会が行われなかった場合にどのような問題が生じるのか、をおさらいしてみたいと思います。
会社法や定款には、株主総会について、招集から議事進行、決議方法に至るまで、詳細なルールが規定されており、このルールに従って、総会決議が行われる必要があります。
総会決議を行うにあたって、このルールに違反した場合、総会決議に瑕疵があるといいます。この瑕疵がある場合、株主等からの訴えによって、総会決議の効力が否定される場合があります。
会社法では、この効力が否定される場面として、下記3つを規定しています。
株主、取締役、執行役、監査役、清算人は、
等の場合に、総会決議の日から3ヶ月以内に会社を被告として訴えを提起することができます。この訴えが認められると、決議が取り消されて無効となります。
もっとも、招集手続き等に法令違反が認められる場合であっても、その違反する事実が重大ではなく、かつ決議に影響を及ぼさないと認められる場合は、決議取消の訴えが提起されても、裁判所の判断で、請求が棄却されることがあります(会社法831条2項)。
また、総会決議の日から3ヶ月経過した場合は、取消すことが出来なくなるため、上記で列挙された法令違反等の瑕疵は治癒されることになります。
次に、決議の内容が法令に違反している場合は、決議が無効となります。
この無効の場合は、上記決議取消しの場合とは異なり、特に訴えを提起しなくても、決議は始めからなかったことになります。
そして、決議が無効であったことを裁判所に確認してもらうために決議無効確認の訴えという訴えを提起することになります。この訴えは、無効を確認する正当な利益がある人は、株主等でなくても、誰でも提起することができます。また、3ヶ月以内という提訴期間もありません。
最後に、そもそも総会決議が存在しなかったものとみなされる場合があります。
これは、実際に決議が行われなかったにもかかわらず、総会議事録に決議がなされた旨の記載がある場合や、ほとんどの株主に召集通知を出さずに決議を行った場合など、決議が存在したと法的に評価できない場合があたります。
こちらも上記無効確認の場合と同様、裁判所に確認してもらうために決議不存在確認の訴えという訴えを提起することになります。
この訴えは、正当な利益がある人は誰でも提起することが出来る点、提訴期間が無い点は、上記無効確認の場合と同様です。総会準備にあたり、招集通知漏れがあった場合でも、上記のとおり、必ずしも決議の取消しや無効、不存在となるわけではありません。
株主総会の前もしくは終了後に、ご不安な点がある場合は、お気軽にご相談ください。株主総会当日に事務局として弁護士が同席するサービスも行っております。
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