企業法務コラム
さて、3月決算の会社にとってはいよいよ株主総会の日程が近付いてきました。実務担当者の方の準備のほどは、いかがでしょうか。
既に招集通知の作成にとりかかっていたり、並行して総会当日の運営について準備されていることと思います。
今回は、株主総会終了後においても対応が必要となる主要な事後手続を中心に、注意すべきポイントも併せてお伝えいたします。
株式会社の役員は、株主総会において、株主から説明を求められた事項について必要な説明をする義務を負っています(会社法314条)。そのためには、すべての役員が総会に出席することを求められており、役員の出席率は高くなっています。
なお、役員が負っている説明義務は、平均的な株主が会議の目的である事項の合理的な理解及び判断をするために、客観的に必要と認められる事項に限定されています。そのため、必ず質問した株主が納得するまで説明が必要というわけではありません。
法律上、株主総会直後に必ず取締役会や監査役会を開催しなければいけないとの規定はありませんが、この機会を利用して、開催することが多くなっています。来年予定されている会社法の改正によって、義務ではありませんが、社外取締役の選任が求められるようになってくるようです。
社外取締役を選任した場合、社外取締役の出席の便宜を図るためにも、今まで以上に、総会当日に、取締役会、監査役会の日程を組み込んでおく必要があります。
会社法では、株主総会の招集に関する通知については明文の規定を置いていますが(会社法299条)、総会後の通知については、特に定めていません。
もっとも、多くの会社では、通常、単元未満株主を含む全株主に対し、株主総会において報告または決議された議事の概要を記載した決議通知を送付しています。
また、決議通知の中で、配当の支払いに係る案内、代表取締役や役付取締役の選定、常勤監査役の選定等を案内することを一般的な内容としています。これらを株主総会終了後ただちに発送するため、通常、原稿作成や印刷は総会よりも前に完了しておき、総会終了を待って発送することになります。
予定されていた議案が否決、撤回されたような場合には、そのまま修正前の決議通知等を発送して、事後に、修正した決議通知を再発送することで対応することが可能です。
株主総会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成して、株主総会の日から10年間、本店に備え置きする必要があります(会社法318条1項2項)。
法文上、株主総会当日に議事録を作成する必要があるようにも読めますが、株主総会当日中に議事録を作成することは困難であるため、総会後、合理的期間内に作成すれば足りると解されています。
万一、株主総会に関する紛争が生じてしまったような場合、議事録が重要な証拠となりますので、会社法施行規則72条に基づいた議事録を、必ず作成するようにして下さい。
なお、株主全員の同意に基づいて株主総会の決議を省略した場合であっても、株主が同意の意思を表示した書面や電磁的記録について、みなし決議の日から10年間、本店に備え置く必要があります(会社法319条1項2項)。
剰余金の配当については、株主総会または取締役会決議により、剰余金の配当の効力発生日が定められるため、当該効力発生日より株主の具体的配当請求権が発生します。
実務では、期末配当の支払開始日は、配当関係書類が株主の手元に届く最短日程である、総会日の翌営業日とするのが一般的です。
株主は、株主総会の議案につき、代理人をもってその議決権を行使したり、議決権を有したりする株主が1000人以上の会社にあっては、書面によって議決権を直接行使することができます。
この場合、株主総会の決議の方法の公正と適正を担保するため、委任状または議決権行使書は、会社の本店に備え置き、総会の日から3ヵ月の間、株主の閲覧・謄写に供すべきものとされています(会社法310条6項、311条3項)。
株主総会における決議事項の中には、登記事項となっているものがあります。
登記事項について変更が生じた場合には、変更の日から2週間以内に本店所在地において(会社法915条1項)、支店における登記事項に変更が生じた場合には、変更の日から3週間以内に支店の所在地において変更の登記をする必要があります(930条3項)。
登記事項の中で、株主総会と大きく関係するのは、会社の役員です。
取締役の任期は2年ですが、全ての株式について譲渡制限を付している会社の場合、定款によって任期を10年に伸長することが可能です(会社法332条1項2項)。
監査役の任期は、取締役とは異なり4年ですが、全ての株式について譲渡制限を付している会社の場合、定款によって任期を10年に伸長できる点は同様です(会社法336条1項2項)。
もっとも、定款によって役員の任期を長期間にしてしまうと、任期の途中で正当な理由なく解任する場合、会社は損害賠償義務を負うことになりますので、注意が必要です(会社法339条1項2項)。
株主総会の前もしくは終了後に、ご不安な点がある場合は、お気軽にご相談ください。
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