各種スポーツの大会での日本選手の活躍がめざましい中、スポーツの祭典である東京オリンピックの話題も徐々に盛り上がりをみせています。
ところが、スポーツとは関係のないところでもオリンピックが大きく問題とされているものがあります。東京オリンピックのロゴ(エンブレム)が著作権の侵害であるとして、使用された場合に1回につき5万ユーロを支払うように訴訟が提起されました。
今月は、この訴訟でも問題とされたロゴの使用に関する法律上の制度についてお話したいと思います。
今回のようなロゴの保護に関する法律としては、「商標」による保護と、「著作権」による保護が考えられます。どちらも知的財産を保護する法制度で、重複して保護されるものもありますが、両者は異なる性質をもっています。
商標とは、事業者が、自己の取り扱う商品やサービス(役務)を他の区別するためにつけるマーク(標章)をいいます。
商標を登録することによって、登録した権利者は、その商標を独占的に使用することができるようになります(専用権)。
このように、商標は、独占的に使用できるマークを通して、ビジネス上も重要な「三大機能」を有しています。商標の三大機能とは、
です。
多くの商品・サービスが象徴的なマークを使用していることからも明らかなように、ビジネスを成功させるためには商標の活用が欠かせません。
商標権の侵害となるのは、商品やサービスと商標が類似する場合です。
問題とされている今回の東京オリンピックのロゴは、国際的な商標登録の手続は経ていました。そのため、専用権により、ロゴを独占的に使用できるはずでした。
著作権とは、著作物を独占的に利用することのできる権利です。著作物とは、思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいいます。
こちらは、登録の有無にかかわらず保護される権利となります。
著作権の侵害というためには、他人の著作物を利用して作品を作ったこと(依拠性)と、他人の著作物と類似していること(類似性)が必要です。
今回の著作権侵害とする訴訟においては、この2点をめぐって双方の主張がされることになるでしょう。
訴訟の場で、著作権の侵害がないとして争うことも可能です。
それでは、なぜ今回はロゴの利用を撤回することになったのでしょうか。
仮にロゴの使用を継続した上で敗訴した場合、莫大な損害賠償の主張がそのままは認められないまでも、相当の損害額となる可能性があり、そのリスクは大きいといえます。
このリスクを考慮した結果、ロゴの使用を撤回することが最良の方法であると考え撤回の結論に至ったものと考えられます。
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