企業法務コラム

2021年12月01日
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法人破産はできないことがある? 法人破産の要件と手続き上の注意点

法人破産はできないことがある? 法人破産の要件と手続き上の注意点

法人の経営が苦しくなり、債務の支払いに窮してしまった場合には、法人破産を検討することになるでしょう。しかし、法人破産には破産法上の要件が定められており、場合によっては法人破産ができないという事態も生じ得ます。

そのため、法人破産を検討する場合は、事前に弁護士に相談して、破産ができるかできないかの見込みを立てておきましょう。

この記事では、法人破産の要件や法人破産ができないケースなどについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、法人破産の要件①|支払不能または債務超過

法人破産の要件を順番に見ていきましょう。
まずは、法人破産のもっとも本質的な要件というべき、「支払不能」と「債務超過」について解説します。

  1. (1)支払不能とは

    支払不能は、個人・法人共通の破産手続開始原因です(破産法第15条第1項)。

    支払不能については、破産法第2条第11項において、「債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態」と定義されています。
    わかりやすくいうと、支払わなければならない債務のほとんどを、ある程度長い期間にわたって支払えていない状態と理解しておけば良いでしょう。

    なお、債権者に対して弁済停止の通知をした場合など、債務者が支払停止をした場合には、支払不能が推定されます(同法15条2項)。

  2. (2)債務超過とは

    法人の場合は、債務超過も破産手続開始の原因になります(破産法第16条第1項)。

    債務超過は、「債務者が、その債務につき、その財産をもって完済することができない状態」と定義されています。つまり債務超過とは、総債務額が総資産の評価額を上回っている状態をいい、貸借対照表(バランスシート)上の数値を参考にして判断します。

  3. (3)法人破産ができない場合に選択できる債務整理

    法人が支払不能・債務超過のいずれにも至っていない場合には、破産手続開始の原因がないため、法人破産をすることはできないことになります。

    ただし、法人破産ができない場合であっても、任意整理または民事再生を利用した債務整理は可能な場合があります。

    任意整理とは、債権者との個別の交渉によって、債務のカットや返済期限の延長を認めてもらう債務整理の手続きです。任意整理を行うのに必要となる法律上の要件は特になく、債権者と債務者の合意さえあれば成立します。

    民事再生とは、裁判所における再生手続によって、原則として全債権者との間で債務のカットと返済スケジュールの変更を行う手続きです。
    民事再生の場合、支払不能や債務超過が生ずるおそれがあること、または事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができないことが、再生手続開始の要件になっています(民事再生法第21条)。そのため、実際に支払不能または債務超過が生ずる前の段階であっても、手続きを開始できる場合があります。

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2、法人破産の要件②|破産手続の費用(予納金)の納付

法人破産の手続きを進めるためには、破産管財人の報酬を中心とした一定の費用が必要になります。この費用は、破産手続開始の申立人の負担であり、申立人が破産手続の費用(予納金)を納付することが、破産手続開始の要件とされています(破産法第30条第1項第1号)。

  1. (1)予納金とは?

    破産法第22条第1項に基づき、破産手続開始の申し立てをする申立人は、破産手続の費用として、裁判所の定める金額を予納しなければなりません。

    予納金の金額は負債の総額等によって決まり、各地方裁判所によって異なります。
    たとえば東京地裁では、法人破産で負債総額が5000万円未満の場合は、予納金額は70万円が相場となっており、負債総額があがるほど予納金の金額もあがる傾向にあります。

    しかし、破産を検討する法人は財務状態も悪化しているため、高額の予納金を準備できないケースも少なくありません。そこで裁判所によっては、破産手続の内容を大幅に簡略化する代わりに、予納金額を低額に抑える運用も取られています。
    たとえば東京地裁の場合、一定の条件を満たす場合は、20万円の予納金で破産手続を進めることができ、通常の管財事件よりもはるかに低額となっています。このような手続きは、一般的に少額管財と呼ばれます。

  2. (2)弁護士費用も必要

    法人破産の申し立てを弁護士に依頼をする場合には、予納金とは別に弁護士費用も必要です。

    法人破産の場合、手続きにあたっては多くの書類を用意する必要があることにくわえ、前述した少額管財の手続きについては、弁護士を代理人とすることが条件になることが多いとされています。そのため、法人破産の場合は弁護士に依頼して進めるのが一般的でしょう。

    なお、ベリーベスト法律事務所では、資金繰りの状況によっては分割払いのご相談にも応じております。費用面に不安がある場合も、まずはお問い合わせください。

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3、法人破産の要件③|不当・不誠実な申し立てにあたらないこと

法人破産のもうひとつの要件として、破産手続開始の申し立てが不当な目的で行われたり、その他不誠実に行われたりしたものではないことが必要です。

どのような場合が不当・不誠実な申し立てにあたるのかについて、申立人が債権者の場合と、債務者(法人自身)の場合とに分けて、具体例を見ていきましょう。

  1. (1)不当・不誠実な債権者の申し立ての具体例

    債権者による不当・不誠実な申し立ての例としては、次のようなものがあります。

    • 債務名義を有しない債権者が、債務者を威嚇して、自己の債権を優先的に取り立てる目的でする申し立て
    • 多数債権者が一致して私的整理を進行している最中に、少数債権者が嫌がらせの目的でする申し立て
  2. (2)不当・不誠実な債務者の申し立ての具体例

    債務者(法人自身)による不当・不誠実な申し立ての例としては、次のようなものがあります。

    • 債権者からの取り立てを免れることだけを目的として、その後の手続きを真摯(しんし)に進行する意思がないのにする申し立て
    • 破産手続開始前の保全命令が出されている最中に、資産隠しを行うことを企図する申し立て
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4、法人破産を申し立てられる人は限られている

法人破産は誰でも申し立てられるわけではなく、その法人について利害関係を有する一定の者に、申立権者が限定されています。

  1. (1)債務者(法人自身)

    まずは、破産をしようとする債務者である法人自身が、破産手続開始の申し立てに関する申立権者となります(破産法第18条第1項)。

    債務者(法人自身)による申し立ては、法人破産のもっとも原則的な形態です。

  2. (2)法人の債権者

    債務者である法人の債権者についても、破産手続開始の申し立てに関する申立権者とされています(破産法第18条第1項)。

    件数自体は多くありませんが、これ以上法人の財務悪化を放置すると配当が全くもらえなくなってしまう、などということを懸念した債権者が、先手を打って破産手続開始の申し立てを行うパターンが考えられます。

  3. (3)法人の役員など

    法人破産の申し立ては、法人の代表者・役員などに相当する者も行うことができます(破産法第19条第1項2項)。これは「準自己破産」と呼ばれます。

    一般社団法人または一般財団法人:理事、清算人
    株式会社または相互会社:取締役、清算人
    合名会社・合資会社または合同会社:業務執行社員、清算人


    なお、準自己破産の申し立てを行う場合は、準自己破産の申立権者全員が共同で申し立てを行う場合を除き、破産手続開始の原因となる事実を疎明しなければならないとされています(同条第3項)。

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5、まとめ

会社の経営が立ち行かなくなった場合、法人破産を検討することになりますが、状況によっては法人破産ができない場合もあります。そのため、まずは法人破産ができるのかを確認したうえで、今後の方針を決めることが大切です。

ベリーベスト法律事務所では、法人破産・民事再生専門チームの弁護士が財務状況を分析し、法人破産の可否や、任意整理・民事再生といった他の債務整理が利用できるのかなどを、適切にアドバイスします。
経営が苦しく、破産も視野に今後の対応を検討している経営者の方は、ぜひ一度ベリーベスト法律事務所にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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