企業法務コラム
企業による不祥事や不正などによって、企業の信頼が傷つけられたときには、莫大な損害が生じてしまいます。企業における不正行為を未然に防ぐためには、コーポ-レートガバナンスを強化していくことが非常に重要となります。
コーポ-レートガバナンスが重要といわれても具体的に何をすればよいのか、そもそもコーポレートガバナンスとは何かということも十分に理解していない方もいるかもしれません。
今回は、コーポ-レートガバナンスとは何かについて、内部統制との違いなども含めてベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
そもそも、コーポレートガバナンスとはどのような制度のことをいうのでしょうか。まずは概要を確認していきましょう。
コーポレートガバナンスとは、「企業統治」と訳される言葉で、企業経営において公正な判断や運営がされるようにさまざまな視点から監視・統制する仕組みのことをいいます。
大企業による不正や不祥事を防止する仕組みとして近年、注目されているようです。
コーポレートガバナンスの強化については、東京証券取引所が定めた「コーポレートガバナンス・コード」を参考にしながら、各企業においてその取り組み方を決めていくことになります。
コーポレートガバナンスの強化を考えるにあたり、同コード第4章に含まれる以下の内容は特に重要です。
コーポレートガバナンスを導入することによって、企業としてはどのようなメリットがあるのでしょうか。また、中小企業などの非上場企業でもコーポレートガバナンスを導入するメリットはあるのでしょうか。
コーポレートガバナンス導入によって企業には、以下のようなメリットがあるといわれています。
中小企業においても取締役や社外のステークホルダーによって経営陣による支配体制を監視し、牽制する仕組みが必要であることには変わりありません。しかし、中小企業では、オーナー企業のように株主が社長をつとめる企業が多くあります。
オーナー企業では、取締役は社長によって任命されているため、社長の意に沿う形の意見しか期待できないことがあります。また、株主=社長であるため、株主などのステークホルダーによる監視が期待できません。
このように、中小企業などの非上場会社では、経営牽制が困難であるという事情が強いため、よりコーポレートガバナンス導入の必要性が高いといえます。
コーポレートガバナンス導入によって、企業価値が向上することが、今後、中小企業が生き残っていくために重要な手段となります。企業経営者としては、自らの意識改革をするとともに、積極的にコーポレートガバナンスを導入していくことが重要です。
コーポレートガバナンスと似た言葉に以下のようなものがあります。それぞれどのような違いがあるのでしょうか。
内部統制とは、会社の経営陣や従業員が公正に企業活動を行うための会社内部の仕組みやプロセスのことをいいます。そのため、株主やステークホルダーの利益を守る仕組みであるコーポレートガバナンスとは、明確に異なる制度となります。
もっとも、コーポレートガバナンスを保つためには、内部統制システムの充実が必要不可欠となりますので、内部統制システムは、コーポレートガバナンスの一手段として用いられることもあります。
コンプライアンスとは、企業活動における法令遵守を指す言葉です。しかし、現代においては、法令だけでなく、社内規範や社会規範、企業倫理といったものの遵守も含む概念と理解されています。そして、コンプライアンスを維持・改善していく仕組みがコーポレートガバナンスです。そのため、コンプライアンスについても、コーポレートガバナンスに含まれると考えておけばよいでしょう。
リスクマネジメントとは、企業があらかじめリスクを想定し、それを回避するためのプロセスのことをいいます。リスクマネジメントによって、想定できるリスクを回避し、被害を最小限に抑えるというプロセスは、企業経営を行っていく上では不可欠なものとなります。
これもコーポレートガバナンスに含まれる機能です。
コーポ-レートガバナンスの導入にあたっては、外部の専門家による監視・監督体制を構築することが有効な手段となります。コーポレートガバナンスにおいて弁護士ができることとしては、以下のことがあります。
社外取締役とは、会社の外部から選任される取締役であり、外部的視点によって企業経営の監視・監督機能を果たす役割を担う役員です。また、社外監査役も同様に会社外部の監査役で、外部的視点から監査を行う役員のことをいいます。
社内で選任された取締役も監査役も業務執行を監督・監査する権限を有していますが、十分な機能を発揮できていない会社が多いのが実情です。
そのため、外部の専門家を社外取締役や社外監査役にすることによって、コーポレートガバナンスを強化することが可能になります。弁護士は、会社から独立した立場であるため、社外取締役や社外監査役に就任する上で、適任と言えます。弁護士を社外取締役や社外監査役にすることによって、法的観点から企業経営の不正やリスクを発見することに役に立つでしょう。
内部通報制度とは、不正や不祥事の早期発見と防止を目的として、会社内部に整備される制度のことをいいます。内部通報制度を設置することによって、不正や不祥事をあらかじめ防止することを期待でき、企業価値が低下を防ぐことが可能になります。
しかし、企業内の内部通報制度は、通報者が特定されることを懸念して、積極的な通報を躊躇してしまうなど形骸化が進んでいます。内部通報制度に関して、弁護士が外部の通報窓口として対応することによって、内部通報者のプライバシーを守りつつ、通報を受けた内容について、法的観点から調査・監督を行うことが可能になります。
コーポレートガバナンスは、経営陣や株主だけでなく従業員に対してもその考えを浸透させることが重要です。そのためには、定期的にコンプライアンス研修を行うことが有効な手段となります。専門的な研修や講演となると社内の人材だけでは適切に行うことが困難なこともありますので、企業法務に関する知識や経験の豊富な弁護士が対応することが有効な方法です。
企業を取り巻くリスクが複雑化している現代では、コーポレートガバナンスを導入することによって、不祥事や不正を未然に防止する必要性が高まっています。コーポレートガバナンス導入にあたっては、外部の専門家である弁護士を関与させることが有効な手段となります。
ベリーベスト法律事務所では、顧問弁護士サービスの提供だけでなく、社外取締役・社外監査役の就任、内部通報制度の窓口設置、コンプライアンス研修・講演といったサービスを提供しています。コーポ-レートガバナンスの導入を検討しているようであれば、ベリーベスト法律事務所までご相談ください。
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