企業法務コラム

2022年04月07日
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粉飾決算で問われる罪とは? 具体事例や罰金、刑事罰の内容

粉飾決算で問われる罪とは? 具体事例や罰金、刑事罰の内容

粉飾決算をした場合には、会社の内外を含めて大きな問題になることは想像に難くないでしょう。

会社において粉飾決算が明らかになった場合には、社会的な信用を失うだけでなく、刑事上の罪に問われる可能性もあります。また、粉飾決算の背景には、金融機関から融資を受けるために、業績悪化を隠して決算書を偽っているケースもあります。

今回は、粉飾決済のリスクや罰則、具体的な事例、さらに会社再建のための法的手段についてベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、粉飾決算とは?

  1. (1)粉飾決算の概要

    粉飾決算とは、不正な会計処理によって、貸借対照表や損益計算書といったいわゆる決算書の内容を操作して、実態とは異なる内容の決算書を作成することをいいます。粉飾決算の典型的な例としては、会社の業績が悪化して赤字の状態にあるにもかかわらず、売り上げを水増しする、経費を圧縮するなどして実態とは異なる黒字決算を偽装する、などの例が挙げられます。

  2. (2)粉飾決算が増加する背景

    東京商工リサーチの令和元年度の粉飾決算倒産調査によると、粉飾決算が原因となって倒産をした企業の件数は、18件であり、前年(9件)に比べて2倍の増加となっています。

    粉飾決算をする動機にはさまざまなものがありますが、金融機関からの融資を得るためのケースが少なくありません。業績が悪化し、経営状態が悪い状態が続くと、金融機関から貸し付け条件を厳しくされたり、新規の貸し付けを停止されたりすることもあり、金融機関からの融資に依存している企業としては死活問題といっても過言ではありません。昨今の不況により業績が悪化し、融資の稟議(りんぎ)をとおすために粉飾決算を行ってしまう、粉飾決済の事情が透けてみえるといえるでしょう。

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2、粉飾決算で問われる罪と罰則

  1. (1)民事責任

    粉飾決算をした企業や経営者には、民事上および刑事上の責任を問われる可能性があります。まずは、民事上の責任をみていきましょう。

    ① 不実の報告書に関する関係者の責任(金融商品取引法24条の4)
    取締役などの役員が有価証券報告書の重要な事項に虚偽の記載などをして、これを知らずに有価証券を取得した者に損害を生じさせた場合には、当該損害を賠償する責任を負います。

    ② 役員等の株式会社に対する損害賠償(会社法423条)
    取締役などの役員が粉飾決算に基づいて違法に配当を行った場合や仮装経理によって納税額が過大になった場合など会社に損害を与えたときには、取締役などの役員は会社に対して当該損害を賠償すべき責任を負います。

    ③ 役員等の第三者に対する損害賠償責任(会社法429条)
    粉飾決算に基づき金融機関から借り入れを行い、その後債務不履行により返済ができなくなるなど第三者に損害が生じたときは、第三者に対して当該損害を賠償すべき責任を負います。なお、虚偽の計算書類作成に関与した者は、他の取締役に比べ責任が加重されています。

  2. (2)刑事責任

    粉飾決算をした場合の刑事上の責任としては、以下のものが挙げられます。

    ① 詐欺罪(刑法246条)
    粉飾決算を行って、金融機関から不正に融資を受けた場合には、金融機関に対する詐欺罪が成立する可能性があります。詐欺罪の法定刑は、10年以下の懲役と規定されています。

    ② 違法配当罪(会社法第963条5項2号)
    粉飾決算を行って、本来は配当をすることができないにもかかわらず、配当を行った場合には、違法配当罪が成立する可能性があります。違法配当罪の法定刑は、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金またはこれらを併科すると規定されています。

    ③ 特別背任罪(会社法第960条)
    取締役などの役員が粉飾決算によって自己または第三者の利益を図り、その任務に背いて会社に損害を与えた場合には、特別背任罪が成立する可能性があります。特別背任罪の法定刑は、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金またはこれらを併科すると規定されています。

3、粉飾決算の事例

  1. (1)フットワークエクスプレス事件

    フットワークエクスプレスは、昭和13年創業の運送会社です。フットワークエクスプレスの監査を担当していた公認会計士は、当時の同社の経営陣と共謀して、3年間にわたり、架空の売上伝票によって合計424億円の営業収益を水増しするなどの方法で決算を粉飾し、虚偽の内容を記載した有価証券報告書を近畿財務局に提出しました。
    フットワークエクスプレス事件では、経営陣から公認会計士に対して、銀行融資を受けるために黒字決算を装い、粉飾であることを説明しながら、決算を適正とする監査報告書の作成を依頼していました。監査証明に従事していた公認会計士も告発されたことで注目された事件です。

  2. (2)オリンパス事件

    オリンパス事件とは、オリンパス社がバブル崩壊により発生した金融商品の巨額の含み損を「飛ばし」という手法で、約20年間隠し続け、さらに不正な手法で会計処理をした事件のことをいいます。「飛ばし」とは、ファンドを設立しそこに含み損を抱えた金融商品を簿価で売却し、その上で英領ケイマン諸島、シンガポールおよび日本国内に籍を置くファンドを複数介在させてオリンパス社から資金を流すという複雑な仕組みをいいます。オリンパス社の経営陣は、金融商品取引法違反(有価証券報告書虚偽記載罪)などで起訴され有罪判決が言い渡されています。

  3. (3)はれのひ(振り袖レンタル業)事件

    平成30年の成人式を前に突然店を閉じたことで、新成人が着るはずであった振り袖が届かないなどのトラブルが起こりました。この振り袖のトラブルを巻き起こした振り袖レンタル業者「はれのひ」も、実は粉飾決算が問題となった事件です。
    はれのひ事件では、債務超過に陥っているにもかかわらず、架空の売り上げを計上した決算書を作成して、金融機関から融資金約6500万円をだまし取ったとして、詐欺罪で起訴され有罪判決が言い渡されています。

4、粉飾決算に対して経営者は何をすべきか?

  1. (1)粉飾決算防止のためにできること

    粉飾決算が発覚した場合には、民事上・刑事上の責任を問われるだけでなく、企業の社会的信用も著しく害されることになり、企業が存続していくこと自体も危うくなります。そのため、粉飾決算に関しては、粉飾決算をしないための事前の対策が非常に重要になります。その対策として有効な手段が、内部統制システムの構築・強化です。

    内部統制システムとは、粉飾決算、不正取引、違法行為の隠蔽(いんぺい)などの会社の不祥事を未然に防ぐための体制のことをいいます。企業内部で、粉飾決算が行われる動機や機会がないかどうかを定期的にチェックすることができる仕組みを構築し、専門家と相談する機会を設けることが必要といえます。さらに、不正の芽を早期に摘み取るためにも、内部の通報制度を整備し、通報者が不利益を被らないための設計をすることも大切です。

    どのような対策が有効になるかは企業の実情によって異なってきますので、弁護士などと相談をしながら決めていくとよいでしょう。

  2. (2)もし粉飾決済が起こってしまったら

    粉飾決算が行われている疑いが生じた場合には、第三者委員会を設置して過去の決算内容を精査し、訂正などの対応が必要になることがあります。また、調査の結果、粉飾決算が明らかになった場合には、有価証券報告書の虚偽記載などによって金融庁から課徴金納付命令を受けたり、場合によっては刑事罰を科されたりする可能性もあります。

    このように粉飾決算が起こってしまった場合には、金融庁や証券取引等監視委員会などの対応、第三者委員会調査、訴訟対応、取引先の対応、マスコミ対応などが発生することになります。これらのすべての課題に迅速に対応するためには、企業法務に関する経験豊富な弁護士との早期の連携が必要不可欠となります。

  3. (3)民事再生・法人破産も視野にいれる場合は早期に弁護士に相談を

    粉飾決算を行う企業では、赤字経営によって経営上追い込まれた状態であることが少なくありません。粉飾決算が大々的に報道された場合には、企業として従前どおり存続していくことが難しくなることもありますので、場合によっては、民事再生や法人破産などの倒産手続きも検討しなければならないことがあります。

    ベリーベスト法律事務所では、民事再生・法人破産専門チームを設けています。民事再生や専門性の高い法人の倒産手続きまで、円滑かつ迅速に対応にあたります。

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5、まとめ

粉飾決算を行うことによって、経営者は、民事上および刑事上の制裁を受けるだけでなく、企業としても存続が困難な状況に追い込まれることになります。粉飾決算に関しては、事後の対策ではなく、粉飾決算をさせないための事前対策が重要となります。そのためには、信頼できる顧問弁護士と相談しながら体制を構築していくことが必要になります。

ベリーベスト法律事務所では、さまざまな業界に特化した業種別・部門別の企業法務専門チームを設け、幅広い企業の悩みに迅速に対応しています。細かな法律相談でもひとつひとつ丁寧にお応えしますので、まずはお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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