企業法務コラム

2023年06月08日
  • ストックオプション制度

ストックオプション制度とは? 概要・メリット・手続き・注意点を解説

ストックオプション制度とは? 概要・メリット・手続き・注意点を解説

ストックオプション制度は、会社が金銭を負担することなくインセンティブ報酬を用意できる点などが評価され、近年いっそう注目を集めています。

ストックオプションの発行にはさまざまな手続きが必要となりますので、導入を検討する企業は、弁護士のサポートを受けながら検討・対応を進めましょう。

今回はストックオプション制度について、概要・メリット・手続き・注意点などをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
※2023年6月8日:一部、内容を改定

目次

  1. 1、ストックオプション制度とは?
  2. 2、ストックオプション制度を導入するメリット
    1. (1)会社が金銭を負担せずにインセンティブ報酬を用意できる
    2. (2)権利者の会社貢献のモチベーションを高められる
  3. 3、ストックオプションの種類・特徴
    1. (1)ストックオプションは大きく分けて、有償と無償の2種類
    2. (2)無償ストックオプションは、さらに2種類に分けられる
    3. (3)税制適格ストックオプションが受けられる優遇措置
  4. 4、株式報酬型ストックオプション(税制非適格ストックオプション)
    1. (1)株式報酬型ストックオプションとは?
    2. (2)株式報酬型ストックオプションの特徴
    3. (3)株式報酬型ストックオプションのメリット
    4. (4)権利行使できるタイミングに注意
  5. 5、信託型ストックオプション
    1. (1)信託型ストックオプションとは?
    2. (2)信託型ストックオプションの特徴
    3. (3)信託型ストックオプションの流れ
    4. (4)信託型ストックオプションのメリット
    5. (5)信託型ストックオプションの注意点
  6. 6、ストックオプション制度を導入する手続き
    1. (1)ストックオプションの発行目的等の情報整理
    2. (2)株主総会の特別決議による募集事項の決定
    3. (3)募集事項の通知
    4. (4)申込み・割当てまたは総数引受契約の締結
    5. (5)発行・新株予約権原簿への記載
    6. (6)新株予約権発行の登記申請
  7. 7、まとめ

1、ストックオプション制度とは?

「ストックオプション」とは、会社の役員・従業員・外部協力者などに対して発行される新株予約権のことをいいます。

新株予約権とは
新株予約権とは、あらかじめ定められている価額(権利行使価額)で該当会社の株式を取得できる権利のことです。

ストックオプションの権利者は、会社の成長によって株価が上昇したタイミングで権利を行使し、権利行使価額で株式を取得します。
そして、取得した株式を売却することで、売却時の株価と権利行使価額との差額を、権利者の利益とすることが可能です。

会社の評価(株価)が上がるほど、権利行使時に利益を多く得られる仕組みであるため、ストックオプションは従業員等へのインセンティブ報酬として広く活用されています。


株式の希釈化に注意
ただし、ストックオプションが権利行使されると、新たに株式が発行されることにより、既存株主の保有割合が低下します。これを「株式の希釈化」といいます。
ストックオプションを発行する際には、将来的な権利行使により、創業経営者などが保有する株式が過度に希釈化されないよう注意が必要です。

月額3980円(税込)から契約可能
初回相談 30分無料
電話でのお問い合わせ
営業時間 平日 9:30~18:00/土日祝除く
0120-127-034
営業時間 平日 9:30~18:00/土日祝除く
顧問弁護士のサービス・費用のご案内

2、ストックオプション制度を導入するメリット

ストックオプション制度を導入することによって、会社には主に、以下のようなメリットが生じることを期待できます。

  1. (1)会社が金銭を負担せずにインセンティブ報酬を用意できる

    金銭によるインセンティブ報酬の場合、会社には金銭的な負担・支出が発生します。
    これに対して、ストックオプションをインセンティブ報酬として発行すれば、会社に金銭的な負担・支出は発生しません
    そのため、資金力が十分でないスタートアップやベンチャー企業では、ストックオプションを活用するメリットが大きいといえます。

  2. (2)権利者の会社貢献のモチベーションを高められる

    先述のとおり、会社が成長して株価が上昇すればするほど、ストックオプションの権利行使・売却による利益は大きくなります。

    すなわちストックオプションは、純粋な業績連動型のインセンティブ報酬なのです。
    ストックオプションの付与を受けた権利者は、会社に貢献して企業価値を高めることへのモチベーションが高まると考えられます。

月額3980円(税込)から契約可能
初回相談 30分無料
電話でのお問い合わせ
営業時間 平日 9:30~18:00/土日祝除く
0120-127-034
営業時間 平日 9:30~18:00/土日祝除く
顧問弁護士のサービス・費用のご案内

3、ストックオプションの種類・特徴

ストックオプションにはさまざまな種類があり、それぞれ異なる特徴を持っています。
以下では、ストックオプションの主な種類と特徴について、見ていきましょう。

  1. (1)ストックオプションは大きく分けて、有償と無償の2種類

    ストックオプションは、割り当て時に権利者による金銭の払い込みを要する場合と、払い込みを要しない場合の両方があります。
    具体的には、以下のように呼ばれています。

    • 有償ストックオプション:金銭の払い込みを要するもの
    • 無償ストックオプション:金銭の払い込みを要しないもの

    インセンティブ報酬として権利者に直接発行されるストックオプションは、無償ストックオプションであるケースが大半です。
    これに対して、後述する信託型ストックオプションなどは、有償ストックオプションに該当します。

  2. (2)無償ストックオプションは、さらに2種類に分けられる

    一定の要件を満たす無償ストックオプションは、所得税・住民税の課税に関して優遇措置を受けられます。以下のように呼ばれます。

    • 税制適格ストックオプション:税制上の優遇を受けるもの
    • 税制非適格ストックオプション:それ以外のもの
  3. (3)税制適格ストックオプションが受けられる優遇措置

    税制適格ストックオプションが受けられる優遇措置は、以下の2点です。

    ① 権利行使時(株式の取得時)に課税されない
    税制非適格ストックオプションの場合、権利行使時に得た経済的利益に課税が行われます。

    これに対して税制適格ストックオプションの場合、権利行使時には課税されず、権利行使によって取得した株式の売却時に課税されるため、繰り延べのメリットが得られます。

    ② 利益が一律、申告分離課税として扱われる
    税制非適格ストックオプションの場合、権利行使時の経済的利益については、最大通算55.945%(所得税最大45.945%、住民税10%)の総合課税が行われます。
    これに対して税制適格ストックオプションの場合、権利行使時の経済的利益も、株式譲渡時の譲渡益と合算して、通算20.315%(所得税及び復興特別所得税15.315%、住民税5%)の一律申告分離課税です。したがって、多くの場合、税制適格ストックオプションによって得た利益に係る税率は低く抑えられます。

    税制適格ストックオプションの要件は極めて複雑なため、弁護士・税理士のサポートを受けながら設計を行いましょう。

    ストックオプション制度を導入したい場合、自社の希望に応じて、どのような制度設計が適しているのか、検討することが大切です

    次の章では、ストックオプションの代表的なスキームをご紹介します。

月額3980円(税込)から契約可能
初回相談 30分無料
電話でのお問い合わせ
営業時間 平日 9:30~18:00/土日祝除く
0120-127-034
営業時間 平日 9:30~18:00/土日祝除く
顧問弁護士のサービス・費用のご案内

4、株式報酬型ストックオプション(税制非適格ストックオプション)

  1. (1)株式報酬型ストックオプションとは?

    株式報酬型ストックオプションとは、権利行使価額を通常1円に設定することで、実質的には株式そのものと同等の価値を権利者に与える、ストックオプションのスキームです(なお、令和元年の会社法改正で、上場会社の取締役や執行役に付与する場合に限り、権利行使価額をゼロ円にすることが認められました。)。

    会社役員に対して、役員退職慰労金の代替として与えられることが多いストックオプションであり、退職金型ストックオプションとも呼ばれています

  2. (2)株式報酬型ストックオプションの特徴

    一般の従業員の退職金は、会社の退職金規程に基づき支払われますが、役員退職慰労金は必ずしも退職金規程を定める必要はありません

    その一方、役員退職慰労金は従業員の退職金とは異なり、定款で定めていない限り、株主総会で退職慰労金の金額や具体的な算定方法を決議する必要があります

    この役員退職慰労金は固定的・年功的な意味合いが強いことから、株主等からの批判を受けることがあるため、制度を廃止し代替として株式報酬型ストックオプションを導入する会社が増えているのです。

  3. (3)株式報酬型ストックオプションのメリット

    株式報酬型ストックオプションには、以下のようなメリットが考えられます。

    ① 株価が下落しても、権利者は売却益を得ることが可能
    株式報酬型ストックオプションは権利行使価額が非常に低いため、たとえ株価が下落していたとしても、権利者は売却益を得ることが可能です。退職所得の対象となるよう制度設計をすると、権利者は税制優遇も受けることができます。

    ② 権利者の貢献による株価上昇の恩恵が期待できる
    また、権利者は株価を上昇させるため、積極的に業績向上へ寄与すると考えられます。
    そのため株主としては、役員の退職金が金銭で支払われる場合には金銭がただ減るのに対し、株式報酬型ストックオプションの場合には権利者の貢献による株価上昇の恩恵を受けられることが期待できます。
    そして、株式発行会社は権利者が株価・業績向上に意欲的に取り組むことで、企業価値の向上を図ることが可能です。

    このように、株式報酬型ストックオプションは権利者・株主・会社の全員が、恩恵を受けることを期待できるスキームといえるでしょう。

  4. (4)権利行使できるタイミングに注意

    ① 役員退職慰労金の代替として導入する場合
    なお、役員退職慰労金の代替として株式報酬型ストックオプションを導入する場合は、権利行使ができる時期を退職後とします。

    ② インセンティブの目的でストックオプションを導入する場合
    一方、従業員に対するインセンティブの目的でストックオプションを導入する場合は、権利行使のタイミングは在職中に限る、とするケースがほとんどでしょう。

    このように、目的によって、制度設計が異なりますので、注意が必要です。

月額3980円(税込)から契約可能
初回相談 30分無料
電話でのお問い合わせ
営業時間 平日 9:30~18:00/土日祝除く
0120-127-034
営業時間 平日 9:30~18:00/土日祝除く
顧問弁護士のサービス・費用のご案内

5、信託型ストックオプション

  1. (1)信託型ストックオプションとは?

    信託型ストックオプションは、あらかじめ信託銀行等の受託者にストックオプションをプールしておき、信託期間中の貢献度に応じて、対象の従業員等へストックオプションを配分するというスキームです。

  2. (2)信託型ストックオプションの特徴

    先述の株式報酬型ストックオプションは権利者へ直接、ストックオプションを割り当てますが、信託型ストックオプションは付与する対象者を後から決めるため、貢献度に応じて公平に分配することができます。
    従業員向けのストックオプション制度としても導入しやすいスキームでしょう。

  3. (3)信託型ストックオプションの流れ

    具体的には、創業経営等の委託者が信託銀行等の受託者に金銭を信託し、受託者はその金銭を払い込んでストックオプションを取得します。
    そして受託者が取得したストックオプションは、信託期間中の貢献度などによって付与されるポイントに応じて、対象役員・従業員に付与される、という流れです。

  4. (4)信託型ストックオプションのメリット

    通常、ストックオプションを発行するときは毎回、所定の作業や登記が必要となります。
    一方、信託型ストックオプションはあらかじめ、信託として発行・保有するため、発行回数を抑えて費用負担を減らすることが可能です。

    さらに、委託者がすでに株式の発行価額を負担しているため、付与された権利者は発行価額を支払う必要がありません。
    権利者としては、費用を支払うことなく、有償ストックオプションを取得できることになります。

  5. (5)信託型ストックオプションの注意点

    信託型ストックオプションの場合、権利行使時の経済的利益については、最大通算55.945%(所得税最大45.945%、住民税10%)の総合課税が行われます。

月額3980円(税込)から契約可能
初回相談 30分無料
電話でのお問い合わせ
営業時間 平日 9:30~18:00/土日祝除く
0120-127-034
営業時間 平日 9:30~18:00/土日祝除く
顧問弁護士のサービス・費用のご案内

6、ストックオプション制度を導入する手続き

ストックオプション制度を会社に導入する際、会社法に従って手続きを取ることが必要です。この章では、基本的な導入の流れをご紹介します。

  1. (1)ストックオプションの発行目的等の情報整理

    まずは、何を目的にストックオプションを発行したいのか、情報を整理し、自社に適切なスキームを考えましょう
    そのうえで、導入時期や付与する対象者、権利行使のタイミング等を話し合うことが大切です。

    情報整理等が終わったら、会社法上、定める必要がある「募集事項」について協議し、草案をまとめます。募集事項については、次項をご確認ください。

    早いうちから弁護士へ相談を
    なお、ストックオプション制度の導入を検討している場合は、早いうちから弁護士へ相談することをおすすめします
    企業法務やストックオプション制度について知見が豊富な弁護士であれば、ストックオプション制度の導入について、制度設計などのサポートをすることが可能です。
    さらには、税理士との連携を可能としている法律事務所であれば、個々の独立した士業者を探して依頼する場合よりもスムーズに、総合的なサポートを受けられるでしょう。
  2. (2)株主総会の特別決議による募集事項の決定

    株主総会の特別決議によって定めるべき主な募集事項は、以下のとおりです。

    定めるべき主な募集事項
    • 募集新株予約権の内容、数
    • 金銭の払い込みを要しない場合は、その旨
    • 金銭の払い込みを要する場合は、払込金額またはその算定方法
    • 割当日
    • 払込期日を定める場合は、その期日
    など

    そして、募集事項の決定方法としては、以下の2つの方法があります。

    募集事項の決定方法
    • ① 株主総会の特別決議を得て募集事項を決定する場合(会社法第238条第1項・第2項)
    • ② 株主総会の特別決議により、取締役会又は取締役(取締役会がない場合)が募集事項の決定の委任を受けて募集事項を決定する場合(会社法第239条第1項)

    上述の「② 取締役会又は取締役(取締役会がない場合)に募集事項の決定の委任」を選択したとしても、以下の内容は株主総会で決定しなくてはならないため、注意が必要です。

    ②を選択しても、株主総会で決定する必要がある事項
    • 委任によって決定できる募集新株予約権の内容、数の上限
    • 金銭の払い込みを要しない場合は、その旨
    • 金銭の払い込みを要する場合は、払込金額の下限

    また、役員に対してストックオプションを付与したい場合は、別途、株主総会で決議を取る必要があります。

  3. (3)募集事項の通知

    ストックオプションの募集事項を決定した後、権利者となる者へ申込み事項を通知します。申込み事項として通知するべき内容は以下のとおりです(会社法会社法第242条第2項)

    申込み事項として通知するべき内容
    • 株式会社の商号
    • 募集事項
    • 新株予約権の権利行使で金銭の払い込みが必要な場合は、払い込みの取り扱い場所
    • そのほか、法務省令で定める事項
  4. (4)申込み・割当てまたは総数引受契約の締結

    ストックオプションの権利者となる者が申込みを行った後(会社法第242条)、会社は割り当てるストックオプションの数を決定する割当決議を行います。
    その後、割り当てた数を申し込んだ権利者となる者へ通知しましょう。

    総数引受契約方式の場合
    なお、ストックオプションを付与する対象者・付与する数がすでに決定していて、付与する対象者との間で総数引受契約を締結することができる場合には、申込み・割当決議を省略することが可能です

    ただし、ストックオプションに該当する新株予約権に譲渡制限が付されている場合には、総数引受契約について株主総会又は取締役会(取締役会設置会社の場合)の承認決議が必要です。
  5. (5)発行・新株予約権原簿への記載

    募集事項で定められた割当日に、権利者となる者は権利者となります。
    権利者となる者がストックオプションを有償で受け取る場合は、払込期日または払込期間内に、所定の払込金額を支払わなければなりません

    なお、会社はストックオプションの発行後、遅滞なく、新株予約権原簿を作成する必要があります(会社法第249条)。

  6. (6)新株予約権発行の登記申請

    最後にストックオプションの登記申請を行いましょう。
    登記申請は、ストックオプションの発行日から2週間以内に行わなければならないため、注意が必要です(会社法第915条第1項)。
    2週間を過ぎてしまうと、登記懈怠として過料が科されるため、必ず申請を行ってください

月額3980円(税込)から契約可能
初回相談 30分無料
電話でのお問い合わせ
営業時間 平日 9:30~18:00/土日祝除く
0120-127-034
営業時間 平日 9:30~18:00/土日祝除く
顧問弁護士のサービス・費用のご案内

7、まとめ

ストックオプション制度には、会社の金銭的負担なくインセンティブ報酬を提供できるメリットがあります。

ストックオプションの発行に当たっては、会社法上の手続きや税務・会計に関する注意点が存在するため、まずは、税理士などと連携した対応が可能な弁護士に相談したほうがよいでしょう

ベリーベスト法律事務所は、ストックオプションの発行に関して、企業からのご相談を随時受け付けております。
グループ内税理士との連携により、法律・税務の両方の観点から、充実したサポートをご提供します。

ストックオプション制度の導入をご検討中の企業経営者・担当者の方は、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
ご希望の顧問契約・企業法務に関するご相談について伺います。お気軽にお問い合わせください。
お電話でのお問い合わせ
0120-127-034
営業時間 平日 9:30~18:00
土日祝除く

同じカテゴリのコラム

テレビCM放送中

お問い合わせ・資料請求

PAGE TOP