企業法務コラム

2022年10月28日
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最低賃金引き上げで企業が受けるデメリットとは? 企業ができる対応策

最低賃金引き上げで企業が受けるデメリットとは? 企業ができる対応策

2022年8月、中央最低賃金審議会は、今年度の最低賃金の目安を大幅に引き上げることを決定し、その上げ幅は過去最高となりました。これを受け、2022年10月から適用となる地域別最低賃金も、大きく上昇するものと予測されています。

コロナ禍による経営難に悩む企業にとっては、最低賃金引き上げによる人件費の増大は大きな負担となるでしょう。

最低賃金制度を順守しなければ、企業は刑事・民事上のペナルティーを受けることになりかねません。働き方改革や生産性の向上、補助金の活用などを通じて、最低賃金引き上げに対応できる社内体制・事業体制の整備を進めましょう。

今回は、最低賃金引き上げのメリット・デメリット、最低賃金を順守しなかった場合のペナルティー、最低賃金引き上げについて企業が講ずべき対策などを、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、最低賃金決定の方法・直近の最低賃金引き上げ

「最低賃金」とは、使用者が労働者に対して支払わなければならない時給の最低ラインを意味します(最低賃金法第3条、第4条)。

近年は一貫して最低賃金水準が引き上げの傾向にあり、直近では2021年10月に大幅な引き上げが行われ、2022年10月も更に引き上げられる見込みです。

  1. (1)最低賃金=「地域別最低賃金」or「特定最低賃金」

    最低賃金には「地域別最低賃金」と「特定最低賃金」の2種類があり、特定最低賃金が定められている業種については特定最低賃金が、定められていない業種については地域別最低賃金が適用されます
    なお、特定最低賃金は必ず地域別最低賃金を上回る額ではならないと定められています(最低賃金法16条)。

    ① 地域別最低賃金(最低賃金法9条)
    都道府県ごとに定められた最低賃金です。
    当該都道府県内で働くすべての労働者に適用されます。
    (参考:「地域別最低賃金の全国一覧」(厚生労働省)

    ② 特定最低賃金(最低賃金法15条)
    各都道府県について、業種別(産業別)に定めることができる最低賃金です。
    労働者又は使用者の代表者が厚生労働大臣等に、特定の事業若しくは職業にかかる最低賃金の決定を申し入れた後、必要があると認められた場合に、当該事業若しくは職業についての最低賃金が決定されます。
    当該都道府県内で、当該業種に従事する労働者に適用されます。
    (参考:「特定最低賃金の全国一覧」(厚生労働省)

    例1:北海道の飲食店で働く労働者
    地域別最低賃金889円※が適用される(北海道における飲食業には特定最低賃金の決定がない(※公開日時点)。

    例2:北海道の鉄鋼工場で働く労働者
    特定最低賃金979円が適用される(※雇用期間などによっては適用除外される場合もあります)。
  2. (2)2021年10月より地域別最低賃金が引き上げられた

    地域別最低賃金は、中央最低賃金審議会が示す引き上げ額の目安を参考に、各都道府県の地方最低賃金審議会で審議された後、毎年10月に都道府県労働局長が決定します。

    2021年10月も、各地域における労働者の生計費・賃金の上昇や、事業者の賃金支払い能力の向上を受けて、各都道府県の地域別最低賃金が引き上げられました。

    たとえば、全都道府県で地域別最低賃金が最高額の東京都では1013円から1041円へ、地域別最低賃金が最低額の高知県・沖縄県でも792円から820円へ、それぞれ大幅に引き上げられています。2022年10月も、地域別最低賃金は更に大幅に引き上げられる見込みです。

    また、タイミングはまちまちですが、特定最低賃金についても一部の都道府県・業種で引き上げが行われました。

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2、最低賃金引き上げによる企業のメリット・デメリット

最低賃金の引き上げには、企業にとってメリット・デメリットの両面があります。
しかし、コスト増の観点からデメリットの影響が大きいため、最低賃金引き上げにより苦しんでいる企業が多いと考えられます。

  1. (1)最低賃金引き上げによる企業のメリット

    最低賃金の引き上げは、低賃金労働者の待遇改善による格差是正や、地域社会の活性化などにつながります。

    企業としては、賃金アップによってこのような社会貢献を行うことができるため、CSR(企業の社会的責任)やSDGs(持続可能な開発目標)などの観点からメリットがあるといえるでしょう。

  2. (2)最低賃金引き上げによる企業のデメリット

    他方で、最低賃金の引き上げは、企業の人件費増大という大きな影響を与えます。
    その結果リストラを余儀なくされたり、雇用している正規労働者(正社員)の待遇を改善する余力がなくなったりして、企業としての体力を奪われてしまう事態になりかねません。

    そのため、人件費以外の部分でコストカットしたり、生産性の向上によって利益をアップさせたりして、人件費増大の影響を抑える企業努力が求められます。

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3、最低賃金を守らなかった場合のペナルティー

最低賃金額以上の支払いは、企業が順守しなければならない法律上の義務です(最低賃金法第4条第1項)。
もし企業が最低賃金法に違反した場合、以下に述べるような刑事処罰や、民事上の不利益を受ける可能性がありますので、十分ご注意ください。

  1. (1)最低賃金法に基づく処罰を受ける

    使用者は、労働者に対して最低賃金額以上の賃金を支払う義務を負います(最低賃金法第4条第1項)。

    労働者に最低賃金額未満の賃金しか支払っていない使用者は、「50万円以下の罰金」に処されます(同法第40条。ただし、地域別最低賃金・船員に適用される特定最低賃金に違反した場合に限ります)。

    また、最低賃金違反の事実を都道府県労働局長や労働基準監督署長などに申告した労働者につき、当該申告を理由として解雇その他の不利益を行うことは禁止されています(同法第34条第2項)。

    上記の規定に違反して労働者を不利益に取り扱った使用者は、「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」に処される可能性があります(同法第39条)。

  2. (2)労働者から未払い賃金の支払いを請求される

    労働契約において最低賃金額未満の賃金が定められていたとしても、その定めは無効となり、無効になった部分については最低賃金と同様の定めをしたものとみなされます(最低賃金法第4条第2項)。

    この場合、各地域等で定められている最低賃金額と従前支払っていた最低賃金額に満たない賃金額の差額が、労働者に対する未払賃金となります。そのため、企業は労働者から未払賃金の支払いを請求される可能性がありますのでご注意ください。

    例:東京都(地域別最低賃金:1041円)において、2021年10月から2022年3月までの6か月間にわたり、600時間分の賃金を時給900円で計算して支払っていた場合

    未払賃金額
    =(1041円-900円)×600時間
    =8万4600円
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4、最低賃金引き上げに関して企業が講ずべき対策

最低賃金の引き上げにより、企業の負担する人件費が増大することはどうしても避けられません。
そのため企業としては、最低賃金の引き上げに関して、以下の対策を速やかに講じることをおすすめいたします。

  1. (1)働き方改革・生産性向上により、労働時間の短縮に努める

    最低賃金の引き上げに伴い、労働時間当たりの人件費が上昇することは避けられません。
    したがって、企業が人件費の上昇を抑えるには、できる限り労働時間そのものを短縮できるように努めるべきです。

    働き方改革による業務の効率化や、技術革新による生産性向上などを通じて、短時間の業務で大きな成果を挙げられるオペレーションを模索しましょう。
    また、(3)で述べるような各種補助金・助成金の活用も有効です。

  2. (2)従業員の労働時間を正しく管理する

    従業員の出勤から退勤までの時間は、着替えなどの準備時間も含め、原則として労働時間となり(契約書や就業規則で定められた休憩時間は除く)、賃金支払い義務が生じます。近年、企業も労働時間管理に対する意識は高まっており、勤怠管理システムを導入し労働時間を正確に把握する企業は増えています。

    その一方で、中小企業ではシステムを導入し整備する余裕がなく、いまだに労働時間管理をしていないか、労働者の自己申告に任せる企業も数多く残っています。

    しかし、労働者の権利意識も年々高まっており、また、インターネットでも容易に賃金に関する知識を得ることも出来るため、後になって、これまで未払いだった賃金やサービス残業代を、労働者がまとめて企業に請求するケースが増えています。

    最低賃金が引き上げられると企業が支払うべき残業代も増加し、残業代請求の時効も3年に引き上げられたことから、未払い賃金がある場合に企業が支払うべき額は、最低賃金引き上げ前や時効改正前より高額となります。

    適切な労働時間管理を先延ばしすることは企業にとってデメリットしかありません。企業は、正しく労働時間を管理し、それに基づき正しい賃金や残業代を支払うことで、後の紛争を予防し、トータルコストを抑制することができます。

  3. (3)各種補助金・助成金を活用する

    働き方改革・生産性向上等による労働時間短縮の取り組みに対しては、行政によって各種補助金・助成金が設けられています(以下は一例)。

    ① 事業再構築補助金
    新規事業の展開や業態転換などに取り組む中小企業の挑戦を支援する補助金です。
    (参考:「事業再構築補助金」(中小企業庁)

    ② 業務改善助成金
    中小企業や小規模事業者の生産性向上を支援し、事業場内でもっとも低い賃金の引き上げを図るための助成金です。
    (参考:「業務改善助成金:中小企業・小規模事業者の生産性向上のための取組を支援」(厚生労働省)

    ③ 働き方改革推進支援助成金
    生産性を向上させながら、労働時間の縮減などに取り組む中小企業や小規模事業者などを支援する助成金です。
    (参考:「働き方改革推進支援助成金」(厚生労働省)


    最低賃金引き上げによる人件費の圧迫に苦しむ企業は、行政の補助金や助成金を最大限活用して、経営状態の抜本的な改善を目指すことも有用です。

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5、労務管理体制の整備・改革は顧問弁護士にご相談を

最低賃金の引き上げを含めて、企業を規制する法令が刻々と変化する中、企業は法令を順守しつつ、安定した業務運営を支える労務管理体制を整備しなければなりません。

もし、自社の労務管理体制が法令に適合していない場合や、社会の変化に遅れをとっていると思われる場合には、顧問弁護士と協力して改革に取り組むことをおすすめいたします

弁護士は、クライアント企業の事業内容を踏まえたうえで、順法性を確保しつつ効率的な業務運営を実現するため、専門的なアドバイスをご提供いたします。
労務管理体制の整備・改革を目指す企業経営者・担当者の方は、ぜひ一度弁護士までご相談ください。

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6、まとめ

最低賃金の引き上げは人件費の増大をもたらし、企業経営を大きく圧迫する要因たりえます。
企業としては、働き方改革や技術革新などを通じて生産性を向上させ、短い労働時間で大きな成果を得られるような抜本的改善を目指すことが求められるでしょう

法令を順守しつつ事業を効率化するためには、弁護士のアドバイス・サポートが大いに役立ちます。ベリーベスト法律事務所は、クライアント企業の良きパートナーとして、コンプライアンス強化・リーガルチェックなどを通じて中長期的な成長・発展をサポートいたします。

労務管理体制の改善を目指して、顧問弁護士をお探しの企業経営者・担当者の方は、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。

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