企業法務コラム
会社の経営に行き詰まった場合には、会社破産を検討する経営者の方も少なくないでしょう。
会社破産をすることによって債務の負担を免れることができるというメリットがありますが、会社破産にはデメリットもあります。メリットとデメリットを踏まえて、どのような倒産手続きを選択するのかを検討していかなくてはなりません。
今回は、会社破産のメリット・デメリットや会社破産の手続きの流れなどについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
会社破産とはどのような制度なのでしょうか。また、会社倒産とではどのような違いがあるのでしょうか。
会社破産とは、債務超過や支払い不能となり経営が困難になった会社が裁判所に申し立てをすることによって、会社の清算を行う手続きのことをいいます。
会社破産をした場合には、破産時点で保有している会社の資産を換価処分され、これをすべての債権者に平等に配当しての返済が行われます。そして、会社破産の手続きがすべて終了した時点で会社の法人格は消滅することになります。
このような会社破産と似た言葉に「会社倒産」というものがあります。破産も倒産も同じものだと考えている方が多いですが、実際にはまったく別のものです。
会社倒産は、法的な定義はなく、一般的に業績不振によって債務の返済が出来ず、事業を継続できない状態を指す言葉として使われているものであり、以下のような、さまざまな倒産手続きを含む概念をいいます。会社倒産のなかに会社破産が含まれているとイメージしてもらえればよいでしょう。
経営が苦しくなったというだけでは会社破産をすることはできません。
会社破産をするためには、破産法が規定する破産手続き開始原因があることが必要になります。
法人の破産手続開始原因としては、以下の2つが規定されています。
会社破産をするためには上述のとおり、破産手続開始原因であるのいずれかを満たすほか、
などがありますが、多くの場合問題になりませんし、弁護士に相談すれば、弁護士が適切な判断をしてくれます。
そのため、弁護士への相談前は、あまり気にする必要はありません。
(2)に記載 の、支払い不能か、債務超過のいずれかにあたると思えばすぐに弁護士に相談いただくことをお勧めします。
会社破産はどのような場合に利用すべきなのでしょうか。また、会社破産にはどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。
清算型の倒産手続きである会社破産を選択するべきかどうかについては、メリットとデメリットを踏まえて慎重に検討していくことが大切です。以下で詳しく説明します。
メリット・デメリットを踏まえて、以下のようなケースでは会社破産の利用をおすすめします。
債権者への支払いが滞納しており、今後も支払いを行う見込みがないという場合には、会社破産を検討した方がよいでしょう。
会社破産をするためには、裁判所への予納金や弁護士費用などを確保する必要がありますので、まったく資産がないとなると破産手続をとることも困難となります。
そのため、債権者への支払いが困難な状況になった場合には、会社の資産が目減りしてしまい、会社破産に必要な費用を準備できなくなってしまう前に、早めに弁護士に相談をすることが大切です。
現在は、債権者への支払いを滞りなくできているものの、年々売り上げが減少しており、業界全体の状況から将来的に経営状況の改善が見込めないという場合にも、会社破産を含めた選択肢の検討のため弁護士に相談すべきケースといえます。
資金繰りに多少余裕がある段階であれば、会社破産といった清算型の倒産手続きではなく、民事再生といった再建型の倒産手続きをとることができる可能性もあります。少しでも選択肢を広げるためにも早い段階で一度弁護士に相談をする事をお勧めします。
会社破産をすることによって、経営者自身にリスクが及ぶ場合もあります。
会社と経営者とは、法律上は別人格として扱われます。そのため、会社破産をしたとしても、経営者の生活に影響が及ぶことは、原則としてありません。
会社の財産だけでは債務の返済ができないという場合であっても、経営者の個人資産が会社の破産手続きにおいて売却されてしまうという心配はありません。
経営者個人が会社の債務について連帯保証人になっている場合には、例外的に会社の破産が経営者にも影響を及ぼすことになりますので注意が必要です。
会社が破産することによって、会社の債務はなくなりますが、会社の債務がなくなったからといって連帯保証人の返済義務が消滅するというわけではありません。
会社の破産によって返済を受けることができなくなった債権者は、連帯保証人である経営者に対して返済を求めることができ、場合によっては経営者個人の資産が差し押さえられてしまうというリスクもあります。
そのため、経営者が会社の債務の連帯保証人になっている場合には、会社破産と一緒に経営者個人についても破産申し立てをしなくてはなりません。
逆に言えば、経営者個人が会社の債務について連帯保証人になっている場合でも、経営者個人についても破産申し立てをおこなえば、経営者個人も返済義務を免責されることになりますので、会社破産を選択することもできるようになります。
会社破産をすることになった場合には、以下のような流れで手続きが進んでいきます。
会社破産の手続きは、専門家でなければ適切に進めていくのは難しいため、会社破産を検討している場合にはまずは弁護士に相談をしましょう。
弁護士に相談をすることによって、本当に会社破産が最適な方法であるかどうかを含めて判断してもらうことができます。
会社の資産や負債状況などから会社破産が最適であると判断した場合には、会社破産の申し立てに向けて、準備を進めていくことになります。
会社破産は、個人破産とは異なり、迅速性や密行性が要求される手続きになります。債権者に知られてしまうと、申立て手続きに混乱が生じる可能性があるためです。
また、従業員に会社破産に向けて動いていることが知られてしまうと債権者に情報漏洩してしまう可能性もあるため、従業員にも特別な理由のない限り、会社破産に向けて準備を進めていることについては知られないようにする必要があります。
そのため、弁護士と協力しながら、債権者などに知られないように速やかに準備をしていかなければなりません。また、破産申し立て時点において従業員を雇用している会社では、申し立て直前に従業員を解雇する必要があります。
会社破産の申し立て準備が整った段階で、裁判所に破産手続き開始の申し立てを行います。会社の経営者が連帯保証人になっている場合には、会社の経営者の自己破産も一緒に申し立てを行いましょう。
債務者審尋とは、破産手続きを開始する要件が備わっているかどうかを調査するために、裁判所で行われる手続きです。
債務者審尋では、裁判官や破産管財人候補者から、破産申し立てに至った経緯などについて聞き取り調査が行われることになります。
破産手続き開始原因があると認められる場合には、裁判所は、破産手続き開始決定を行い、破産手続きを処理していく破産管財人を選任します。
破産管財人が選任されると会社の財産の管理・処分権はすべて破産管財人に移りますので、会社が財産を勝手に処分することはできなくなります。
破産手続き開始後は、破産管財人が財産調査、換価、配当などの業務を進めていきます。そして、破産管財人による処理状況については、債権者集会によって報告がなされます。
債権者集会は、破産手続きが終了するまでの間、約3か月に1回のペースで開かれます。
会社の財産を換価処分した結果、債権者への配当ができるだけの破産財団が形成できた場合には、債権者への配当を実施します。
債権者への配当が終わった場合やそもそも配当すべき財産が存在しないという場合には、その時点で破産手続きが終了となります。
破産手続きが終了した場合には、会社の法人格が消滅し、会社の負債も消滅することになります。
会社破産を検討している場合には、弁護士に相談をすることをおすすめします。
会社の経営が苦しくなったとしても、取り得る選択肢は会社破産だけではありません。不採算部門の見直しなどによって経営を再建することができる場合もあります。
経営再建に向けて債務の負担が重いという場合には民事再生という手続きをとることによって、債務の負担を軽減しながら経営の再建を実現することも可能です。
会社の状況や希望に合った倒産手続きの選択は知見が必要とされますので、まずは弁護士に相談をするようにしましょう。
会社破産が避けられない状況になると、お世話になっている債権者に対してのみ、優先的に返済を行ってしまいたくなることもあるでしょう。
また、悪質なケースでは、会社の財産を隠したり、第三者に譲渡したりして処分を免れようとしてしまう方もいらっしゃいます。
しかし、このような行為は、債権者平等の原則に反し、債権者の利益を著しく害するおそれのある行為ですので禁止されております。
また、違反してこのような行為をしても、破産管財人が否認権を行使するなどして原状回復されてしまい意味がないばかりか、結果的に優先的に弁済してしまった債権者や財産を譲渡した第三者の方に管財人から訴訟が起こされてしまう場合などもあり、迷惑をかけてしまうこともあるます。また、悪質な場合には破産法上の破産犯罪に該当するおそれがあります。
破産犯罪に該当する行為をしてしまうと、刑事罰が科されることもあるため、注意が必要です。
会社の資産に少しでも余裕がある状況だと、会社破産に踏み切ることに躊躇する会社も多いですが、会社破産を検討するタイミングは、早ければ早いほどよいといえます。
会社破産をするためには、裁判所への予納金や弁護士費用が必要になりますので、会社の資産が枯渇した時点で会社破産をしようとしても、必要な費用を捻出することができずに会社破産が難しい状況になってしまうおそれがあります。
そのため、経営状況が苦しくなってきた場合には、すぐに弁護士に相談をするようにしましょう。
会社破産をすべきかどうかは、経営面だけでなく、法的な観点からも慎重に検討しなくてはなりません。
また、早期に弁護士に相談をすることによって、会社破産以外の方法についても提案をしてもらえる可能性があります。自社の状況を整理し、今後取れうる方法はどのようなものがあるのか、確認するためにも、まずは弁護士へご相談ください。
経営不振に陥り、会社破産をするべきかどうかでお悩みの方は、まずは法人破産・民事再生専門チームへご相談ください。
ベリーベストグループの弁護士・税理士・公認会計士からなる専門チームが状況をお伺いした上で、適切なアドバイスやサポートをさせていただきます。
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