企業法務コラム
新しいサービスを考えたり、新しい商品を開発したりした場合には、その商品などのネーミングやブランドに関して商標登録が大切です。これを行うことで、商品などのネーミングやブランドを独占的に使用することが認められ、サービスや商品の価値が守られます。
商標登録を受けた商標には、「Rマーク」というものを付けることが可能になります。では、このRマークにはどのような役割があるのでしょうか。また、Rマークと似たものに「Cマーク」、「TMマーク」、「SMマーク」というものもありますが、それぞれRマークとはどのような違いがあるのでしょうか。
今回は、Rマークの概要と商標登録時のポイントなどについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
Rマークとはどのようなものなのでしょうか。
以下では、Rマークの役割や法律上の取り扱いについて説明します。
Rマークとは、商標の近くに記載されており、その商標が商標登録されていることを表すシンボルマークです。
「R」は、登録された商標という意味の「Registered Trademark」の頭文字をとったものになります。
そのため、Rマークの記載があると、その商標が商標登録されているということがわかります。
一方で、Rマークを付けなければ登録商標としての効力が生じないというものではありません。
商標法では、「登録商標である旨の表示をするように努めなければならない」(商標法第73条)とは規定されていますが、Rマークが付けられていなくとも商標登録されており、その効果が適用される可能性はあります。
なお、Rマークを登録商標以外のものに付けた場合には、商標法違反になる可能性があります。商標出願段階のものであってもRマークを付けることは禁止されています。
また、上記の通り、商標登録は区分を指定して行われるので、商標登録された区分以外ではRマークを付けることはできません。
このような行為をした場合には、商標法違反として
に処せられる可能性がありますので注意が必要です。
商品やサービスのネーミングやブランドにRマークを付ける理由およびメリットとしては、以下の点が挙げられます。
Rマークを付けることで、特定の商品やサービスを指す名称が、一般的な名称とみなされてしまうこと(これを「普通名称化」といいます。)を防ぐことができます。
具体的な例を挙げると、「エスカレーター」、「ホッチキス」などはそもそも特定の商品を指す名称でしたが、一般的に有名になりすぎた結果、普通名称化してしまいました。
商標は、自社のブランド製品と他社の商品を区別するために付けるものです。
そのため、商標が自社の製品以外の物を指すように扱われてしまうと、商標の機能を果たさなくなります。このことから、普通名称化してしまった商標は登録の対象にはなりません(商標法3条1項1号)。
また、すでに登録されている商標でも、普通名称化した商標には、商標権の効力は及ばないとされています(商標法26条)
Rマークを付けることによって、商標が特定の商品を指すものであることをアピールできるため、商標の普通名称化を未然に防ぐことができます。
商標登録をすることによって、商標権者は当該商標を独占的に利用することが可能になります。
たとえば商標権者ではない他人が商標登録されている商標を利用した場合に、商標権者から商標の利用の差し止めを求めたり、損害賠償請求をすることができたりする可能性が生まれます。
もっとも、商標権者としては、差し止めを求める前に、そもそも第三者に商標を利用されない状態であることが望ましいです。
しかし、ネーミングやロゴが商標登録されたものであるかどうかについては、当該ネーミングやロゴ自体からは判別できません。特許庁のデータベースでの検索が必要になります。
Rマークを付けることにより、この特許庁での検索の手間が省かれ、商標登録がされているものであることを世間一般に認識させることができます。
そのため登録された商標が勝手に利用されるという事態を防ぐことができます。
単に商品やサービスを商標登録しただけでは、特定の商品やブランドを指す名称なのか同課が判断できず、一般の方に対してネーミングやロゴが自社の商標であることを理解してもらいにくい可能性があります。
しかし、Rマークを付けて自社の商標登録表示であることをアピールすることによって、世間一般に対して、当該ネーミングやロゴが自社のブランドであることを浸透させていくことが期待できます。
このように、Rマークを付けることは、商品やサービスのブランド化にも役立ちます。
Rマークと似たものに「Cマーク」、「TMマーク」、「SMマーク」というものがあります。それぞれどのような役割・違いがあるのでしょうか。
Cマークとは、著作権の存在を表すシンボルマークです。
「C」は、著作権を意味する「Copyright」の頭文字をとったものになります。
日本では、著作権の成立に特別な方式や手続きを必要とされていませんので(無方式主義)、Cマークの表記がなかったとしても、著作権としての保護を受けることができます。Cマークは、必ず表示しなければならないものではありませんが、Cマークを付けることによって、著作権の存在を一般に示す効果が期待できます。
なお、Cマークについては、こちらのコラムで詳しく解説しています。併せてご覧ください。
TMマークとは、商品の商標であることを表すシンボルマークです。
「TM」は、商標を意味する「Trademark」の略称であり、Rマークの「Registered」が除かれたマークになります。
Rマークは、商標登録された商標に付けるマークであるのに対して、TMマークは、商標登録されていない商標についても自由に付けることができます。
商標出願中には、Rマークを付けることができないことから、一般的には、将来的に商標登録を取得する予定である場合や商標出願中にTMマークが使われることがあります。
SMマークとは、サービスの商標であることを表すシンボルマークです。
「SM」は、「Services Mark」の略称です。
TMマークが形のある商品に対して付けられるマークであるのに対して、SMマークは、形のないサービスに対して付けられるという違いがあります。
また、SMマークも、Rマークとは異なり、商標登録されたものでなくても付けることができます。
Rマークを付けるためには商標登録が必要です。
ここでは、商標登録出願において注意すべきポイントを紹介したいと思います。
商標登録を取得するまでの期間は、商標登録の申請から1年程度かかるのが一般的です。ローンチ後申請が遅くなってしまうと、競合他社が先に申請してしまう可能性がありますので、商品やサービスの名称が確定した場合には、速やかに商標登録申請をする必要があります。
他方、登録商標が3年以上継続して使用されていない場合は、商標登録の取り消しを求める手続き(不使用取り消し審判請求)によって、誰でも登録商標の取り消しを求めることが可能です。
そのため、商品やサービスの名称は決まっているものの、商品やサービスの提供時期が未定であるという場合には、展開時期、事業戦略なども踏まえて最適なタイミングを選択することが大切です。
商標の区分とは、商品やサービスのカテゴリーのことをいい、1類から45類まで存在しています。商標登録をする場合には、商品やサービスのカテゴリー(区分)を指定して申請します。
したがって、商品・サービスと区分は、セットで登録されますので、まったく同じ商標であっても登録された区分が異なれば、それらは非類似扱いとなり、基本的には商標登録が可能です。
ただし、「同じ区分の商品・サービスでも非類似扱いのものがある」ことと、一方で「別の区分でも類似扱いの商品・サービスがある」という点には注意が必要です。
たとえば、「ワイシャツ」と「靴下」は、いずれも25類に含まれますが、それらは非類似扱いの商品ですので、商標登録が可能となります。
商標権侵害の被害を受けた場合、企業としては以下のような対応を検討することになります。
自社の登録商標が侵害されている疑いが生じた場合には、まずは、自社の商標権の権利状態を確認する必要があります。自社の商品の権利が失効していたり、取り消しになっていたりすれば、そもそも商標の侵害が成立していないことになります。
次に、自社の商標権を確認できた場合には、商標権侵害の有無や内容を証明できる証拠を収集します。商標権侵害の証拠としては、コピー商品の本体、カタログ、ウェブサイトをプリントアウトしたものなどが挙げられます。
証拠の収集ができ、他社による商標権侵害が明らかになった段階で、商標権侵害行為をした他社に対して、商標の使用停止などを求める警告書を送ります。
警告書には、回答期限を設けて相手の回答を待ちますが、期限内に回答がなかった場合、または誠意ある回答がなかった場合には、侵害行為の差止や損害賠償を求める裁判を起こすことになります。
迅速な対応が必要なケースでは、仮処分手続きを利用することも検討する必要があります。
商標権侵害があった場合には、迅速に対応することが大切です。
侵害行為をそのまま放置していると、自社のブランド価値が低下し、顧客離れが起きてしまうリスクが生じてしまうからです。
もっとも、商標権侵害の事案は、非常に専門的な分野になってきますので、企業の担当者だけでは適切に対応することが難しいケースも少なくありません。
商標権侵害の有無、損害額の算定などは商標登録に詳しい弁護士のアドバイスやサポートがなければ、判断が難しい部分もあるでしょう。
弁護士に対応を依頼すれば、相手との交渉から裁判、仮処分といった法的手続きまですべて任せることができます。
少しでも早く問題を解決したいという場合には、商標権侵害の疑いが生じた段階から弁護士に相談をすることをおすすめします。
Rマークを付けることは、義務ではありませんが、Rマークを付けることで、商品やサービスのブランド化を図ることができるなどのメリットがあります。
自社のブランド力を強化するためにも、新たな商品やサービスを考案した場合には、商標登録を行うとともに、対象商品・サービスにはRマークを付けるとよいでしょう。
ベリーベスト法律事務所には、知的財産権の専門チームがありますので、弁護士と弁理士が連携して、企業の知的財産に関する問題やトラブルに対応することが可能です。
商標登録や商標権トラブルについても対応可能ですので、まずは、ベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。
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