企業法務コラム

2023年08月29日
  • SOX法

J-SOX法とは? 上場会社の内部統制報告制度をわかりやすく解説

J-SOX法とは? 上場会社の内部統制報告制度をわかりやすく解説

金融商品取引法では、アメリカのSOX法を参考に、上場会社の内部統制報告制度(J-SOX法)が設けられています。

上場会社のガバナンス担当者は、J-SOX法の内容を正しく理解しておきましょう。

今回はJ-SOX法について、概要や目的、対応の流れ、作成すべき書類などをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、J-SOX法(内部統制報告制度)とは

「J-SOX法」とは、上場企業における「内部統制」に関する整備状況の報告を義務付ける、金融商品取引法上のルールです。「日本版SOX法」「内部統制報告制度」とも呼ばれています。

アメリカで不正会計事件をきっかけに制定された企業改革法(米国SOX法)を参考にして、日本では、2007年にJ-SOX法が施行され、2008年4月1日以降開始する事業年度から適用されている。

  1. (1)内部統制報告制度の目的

    金融商品取引上の「内部統制」とは、財務報告の信頼性を確保するために、会社が整備すべき社内体制のことです。上場企業のような規模の大きい会社では、個々の財務報告が適切に経営状況を表示しているかチェックすることは事実上不可能であるため、財務報告の信頼性を確保する社内体制そのものが極めて重要です。J-SOX法は、このような社内体制の構築義務を法律上定めることによって、財務報告の信頼性を確保しようとしているのです。これが、内部統制報告制度の最も重要な目的です。

  2. (2)内部統制報告制度の具体的な手続き

    内部統制報告制度を定めた金融商品取引法は、財務報告の信頼性を確保するという目的のもとで、様々な手続きを定めています。

    たとえば、上場会社はJ-SOX法に基づき、原則として事業年度ごとに、監査証明を受けた内部統制報告書を公衆縦覧に供さなければなりません(金融商品取引法第24条の4の4第1項)。

    また、内部統制報告制度上の義務に違反したものには、刑事上の責任が発生するリスクがあります。たとえば、提出するべき書類に虚偽記載をした者等には「5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金」に処され、またはこれらが併科されます(同法第197条の2等)。さらに、法人にも「5億円以下の罰金」が科されます(同法第207条第1項第2号)。

    これらは、金融商品取引法が定めた手続きのうちのほんの一例にすぎません。
    それでは、J-SOX法に対応するために企業に求められる手順を概観していきましょう。

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2、J-SOX法に対応するために行うべきこと

上場会社がJ-SOX法に対応するためには、大まかに以下の流れに沿った対応が求められます。

  • 内部統制の構築
  • 運用状況の把握
  • 内部統制における不備の是正と対応
  • 開示要否の検討
  • 内部統制報告書の作成
  • 監査証明の取得
  • EDINETを通じた公衆縦覧

  1. (1)内部統制の整備・運用状況の把握

    まずは、会社における内部統制の整備・運用状況を把握する必要があります。その際、以下の6つの基本的要素の観点から、内部統制が適正に整備・運用されているか否かをチェックしましょう。

    <内部統制の6つの基本的要素>
    ① 統制環境
    経営者の誠実性・倫理観から始まり、経営方針・戦略、取締役会の有する機能等の内部統制の土台部分にあたる要素です。

    以下の②~⑥を実施するための基礎となる最も重要な要素です。

    ② リスクの評価と対応
    企業の組織目標を阻害する要因をリスクとして識別・分析・評価し、当該リスクについて適切な対応を行う一連のプロセスの整備状況をチェックする必要があります。

    ③ 統制活動
    経営者の命令・指示が適切に実行されるような方針・手続きが確保されているか否かをチェックする必要があります。

    ④ 情報と伝達
    必要な情報の識別・把握・処理、ならびに組織内外の関係者相互に正しく伝達されている状態が確保されているか否かをチェックする必要があります。

    ⑤ モニタリング
    内部統制の有効性を継続的に評価するプロセスが整備されているか否かをチェックする必要があります。たとえば、各業務部門において、帳簿記録と実際の製造・在庫ないし販売数量等との照合を行うこと等があり得ます。

    ⑥ ITへの対応
    会社が業務を実施するに当たり、組織内外のITに適切に対応できる体制が整備されているか否かをチェックする必要があります。
  2. (2)内部統制における不備の是正・開示要否の検討

    チェックの過程で内部統制に関する不備が判明したら、早急にその是正を図る必要があります。その上で、財務報告に重要な影響を及ぼす可能性が高い内部統制の重要な不備が発見された場合は、内部統制報告書(後述)においてその旨を記載しなければなりません

    内部統制の不備が開示すべき重要なものであるか否かは、金額的重要性と質的重要性の両面から総合的に判断します。開示すべき重要な不備であるにもかかわらず、その旨の記載を怠った場合には、損害賠償等の法的なリスクが発生し得ます。そのため、弁護士のアドバイスを受けながら、開示することのリスクと開示しないことのリスクを比較検討した上で判断しましょう。

  3. (3)内部統制報告書の作成

    上場会社は事業年度ごとに、財務(支)局長等に対して内部統制報告書を提出する必要があります(金融商品取引法第24条の4の4第1項)。

    内国会社(日本法準拠の上場会社)の場合、内部統制府令※所定の第一号様式を用いて作成しなければなりません(内部統制府令第4条第1項第1号)。
    ※正式名称:財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制に関する内閣府令
    (参考:「第一号様式」(金融庁)

    内部統制報告書の作成に当たっては、金融庁が公表している実施基準に準拠する必要があります。実施基準に関する注意事項や疑問点については、弁護士にご相談ください。
    (参考:「「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について(意見書)」の公表について」(金融庁)

  4. (4)監査証明の取得

    内部統制報告書には原則として、監査法人または公認会計士の監査証明を付さなければなりません(金融商品取引法第193条の2第2項、内部統制府令第6条第1項第1号ロ)。

    監査証明とは、内部統制報告書が内部統制の評価を適正に表示しているか否かについて、監査法人または公認会計士が意見を述べることをいいます。

    <監査意見の種類>
    ① 無限定適正意見
    内部統制報告書が、一般に公正妥当と認められる財務報告にかかる内部統制の評価の基準に準拠して、財務報告にかかる内部統制の評価結果について、すべての重要な点について適正に表示しているかどうかについての意見です。

    ② 除外事項を付した限定付適正意見
    内部統制報告書が、除外事項を除いて、一般に公正妥当と認められる財務報告にかかる内部統制の評価の基準に準拠して、財務報告にかかる内部統制の評価結果について、すべての重要な点について適正に表示しているかどうかについての意見です。

    ③ 不適正意見
    内部統制報告書が不適正である旨の意見です。

    なお、上場初年度の決算において資本金額が100億円以上または負債額が1000億円以上の会社を除き、新規上場後3年以内に提出する内部統制報告書については、監査証明の免除を選択できます(金融商品取引法第193条の2第2項第4号、内部統制府令第10条の2)。

  5. (5)EDINETを通じた公衆縦覧

    内部統制報告書は、公衆縦覧の対象となる上場会社の開示書類を掲載するウェブサイト「EDINET」を通じて5年間公衆縦覧に供されます(誰でも閲覧可能)。
    EDINETの操作方法などについては、金融庁ウェブサイトをご参照ください。

3、J-SOX法対応に当たって作成すべき「3点セット」

上場会社がJ-SOX対応を行うに当たっては、以下の「3点セット」を作成することが推奨されます。

  • フローチャート
  • 業務記述書
  • リスクコントロールマトリックス

3点セットは、その作成が法令上義務付けられているわけではありませんが、内部統制の整備・運用状況を把握・評価するためのツールとして有用です。

なお、3点セットは一度作成すれば終わりではなく、事業の実態に合わせて毎年見直しを行う必要もあり得ます。それぞれの概要を確認していきましょう。

  1. (1)フローチャート

    「フローチャート」は、会社における業務のプロセスを図表化したものです。
    社内全体における業務の流れを一覧的に把握するために、フローチャートを作成することをおすすめします。

  2. (2)業務記述書

    「業務記述書」とは、会社における業務内容やその実施者、利用するシステムなどを文章で記載した書類です。業務の工程を細分化した上で、各工程にて行うべき具体的な作業を記述し、各作業に内在するリスクを明らかにします

    フローチャートと併せて参照すれば、会社の業務をマクロ・ミクロの両面から分析・理解することができるでしょう。

  3. (3)リスクコントロールマトリックス

    「リスクコントロールマトリックス(RCM)」とは、フローチャートおよび業務記述書によって把握したリスクと、当該リスクへの対応を記載した一覧表です。
    会社が抱えるリスクについて、必要な対応とその進捗状況をリスクコントロールマトリックスにまとめることで、内部統制が有効に機能しているか否かを判断するのに役立ちます。

4、J-SOX法に関するご相談は顧問弁護士へ

上場会社がJ-SOX法に従って内部統制の整備・運用・開示を行うためには、極めて専門的な対応が要求されます

最新の金融商品取引法上の開示義務への対応に加えて、事業の実態に合わせた内部統制の見直し・アップデートが求められるため、会社の法務部門だけで対応するのは非常に大変です。そして、このような対応を怠った場合には、損賠賠償等の法的なリスクも生じる可能性があります。そのため、弁護士と顧問契約を締結してサポートを受けることをおすすめいたします。

キャピタル・マーケット業務に詳しい弁護士と顧問契約を締結すれば、内部統制報告書の作成を含む上場会社の開示規制対応につき、専門的な観点からアドバイスを受けることが可能です。金融商品取引法の複雑なルールや、頻繁に行われる法改正に対しても、随時適切に対応することができるようになります。

J-SOX法を含めた金融商品取引法上の開示規制対応については、ぜひ弁護士にご相談ください。

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5、まとめ

J-SOX法(日本版SOX法)対応に当たっては、金融商品取引法上の最新のルールを把握した上で、自社における内部統制の定期的な見直し・アップデートを行うことが求められます。内部統制報告書の作成に関しても数多くの留意事項が存在するため、弁護士へのご相談がおすすめです。

ベリーベスト法律事務所にご相談いただければ、上場会社の開示規制に詳しい弁護士が、法令および実施基準に準拠した適切な開示対応をサポートいたします。
J-SOX法を含めた各種規制への対応にお悩みの企業は、ぜひ一度ベリーベスト法律事務所にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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