企業法務コラム

2023年12月07日
  • ギフティング

化粧品広告のギフティング、間違えると違法に! 正しい方法は?

化粧品広告のギフティング、間違えると違法に! 正しい方法は?

化粧品のマーケティング手法のひとつに、「ギフティング」というものがあります。

化粧品のギフティングは、販売促進などに高い効果を期待できる一方で、投稿内容や方法によっては、景品表示法や薬機法(旧薬事法)の広告規制に抵触するおそれがあるマーケティング施策です。

ギフティングを活用する際には、弁護士のアドバイスを受けながら、各種の法規制に違反しないように十分ご注意ください。本コラムでは、インフルエンサーなどに化粧品のギフティングを依頼するとき、事業者が注意するべきポイントについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、ギフティングとは

ギフティングとは、インフルエンサーに対して自社製品やそのサンプルを提供し、使用した感想や特徴などを紹介してもらうマーケティング施策です。
特に化粧品については、Instagram、TikTok、YouTubeなどのSNSや動画サイトで盛んにギフティングが行われています。

  1. (1)無償ギフティングと有償ギフティング

    ギフティングは、「無償ギフティング」と「有償ギフティング」の2種類に大別されます。

    ① 無償ギフティング
    インフルエンサーに対して報酬を支払わないタイプのギフティング方法です。提供する商品は、無償で贈与される場合も、貸与されるにすぎない場合もあります。

    影響力がまだそれほど大きくないインフルエンサーが、人気商品のPRによって露出を拡大しようとする場合などには、無償ギフティングを受け付けることがよくあります。

    ② 有償ギフティング
    インフルエンサーに対して報酬を支払うタイプのギフティング方法です。企業の「広告」としての側面が強く、投稿内容(見出し・本文・ハッシュタグ・画像・動画など)のチェックも厳しく行われる傾向にあります。
  2. (2)ギフティングとステルスマーケティングの違い

    ステルスマーケティング(ステマ)は、ギフティングに関連するマーケティング手法として論じられることがあります。ギフティングとステマは異なるものですが、ギフティングがステマにも該当するケースはよく見られるのが実情です。

    令和5年3月28日に発出された内閣府の告示によって、一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示、すなわち事業者が自分で出していると評価できるのに、そのことが一般の人からはわからなくなっている表示を、景品表示法の規制の対象にしています。

    これが、法律上規制される「ステマ」です。

    参考:「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の指定及び「『一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示』の運用基準」の公表について(消費者庁)

  3. (3)「ステマ」になるギフティングとは?

    ギフティングと言っても試供品を1つずつ配っただけで、特にその後の発信も働きかけていないようなケースは事業者による表示ではないので、ステマに該当しません。

    また、ギフティングの投稿の中で「事業者から依頼されたこと(いわゆる「企業案件」であること)」が表示されていれば、発信内容を事業者が指示していても、ステマに当たりません。

    これに対して、事業者が発信することに対価を提供し、あるいは発信内容を指示しつつ、インフルエンサー自身の考え・感想であるかのように発信されているギフティングについては、ステマに該当すると考えられます。

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2、ギフティングは「広告」に当たるのか?

ギフティングには、薬機法の広告規制が適用される可能性がありますが、そのためには「広告」に該当することが必要です。なお、薬機法の正式名称は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」と言います。

ギフティングが広告に該当するかどうかは、厚生労働省の通達の基準に従って判断されます。

  1. (1)薬機法上の「広告」の定義

    厚生労働省の通達によれば、薬機法上の広告に該当するのは、3つの要件を満たす医薬品等(化粧品を含む)に関するものです。

    薬機法上の広告に該当する3要件
    • ① 顧客を誘引する(顧客の購入意欲を昂進させる)意図が明確であること
    • ② 医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器または再生医療等製品の商品名が明らかにされていること
    • ③ 一般人が認知できる状態であること

    参考:薬事法における医薬品等の広告の該当性について(厚生労働省)
  2. (2)「広告」に当たるギフティングの例

    化粧品に関するギフティングは、事業者が依頼している時点で、顧客(ユーザー)を誘引する意図は明確と思われます。

    したがって、特定の商品名を出してSNSや動画サイトに公開されたものであれば、化粧品のギフティングは、薬機法上の「広告」に該当する可能性が高いと考えられます。

  3. (3)「広告」に当たらないギフティングの例

    これに対して、化粧品に関する以下の宣伝・PRは、薬機法上の「広告」に該当しないと考えられます。

    • 提供された化粧品について、その効能に関する学術的な発表が掲載された場合

    前述した、「① 顧客を誘引する(顧客の購入意欲を昂進させる)意図が明確であること」の要件を満たさないためです。

    • 特定の商品名を出さず、おすすめの化粧品の特徴だけを説明する投稿
    (例)○○という成分が含まれていれば肌に優しい

    前述した「② 医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器または再生医療等製品の商品名が明らかにされていること」の要件を満たさないためです。

    • フォロワーの少ない鍵付きアカウントで行われた化粧品紹介

    前述した「③ 一般人が認知できる状態であること」の要件を満たさないためです。

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3、ギフティングに適用される広告規制と罰則

ギフティングには、景品表示法および薬機法の広告規制が適用されることがあります。
なお、景品表示法の正式名称は「不当景品類及び不当表示防止法」です。

  1. (1)景品表示法の広告規制と罰則

    景品表示法では、以下の表示(広告)が不当表示として禁止されています。

    ① 優良誤認表示(景品表示法第5条第1号)
    商品やサービスの品質・規格その他の内容につき、実際のものよりも著しく優良であると示し、または事実に反して同業他社のものよりも著しく優良であると示す表示です。

    ② 有利誤認表示(同条第2号)
    商品やサービスの価格その他の取引条件につき、実際のものまたは同業他社のものよりも著しく有利であると誤認される表示です。

    ③ その他の不当表示(同条第3号)
    上記のほか、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定する、商品やサービスに関する事項の表示です。
    ステルスマーケティングについても、令和5年10月1日より、内閣府告示によって不当表示に指定される予定となっています。

    参考:
    表示規制の概要(消費者庁)
    「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の指定及び「『一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示』の運用基準」の公表について(消費者庁)

    景品表示法の罰則
    景品表示法違反の不当表示をした事業者は、消費者庁の措置命令を受ける可能性があります(同法第7条)。
    措置命令に違反した場合は、2年以下の懲役または300万円以下の罰金が科される規定になっています(同法第36条第1項)。

    また、優良誤認表示・有利誤認表示をした場合は、課徴金納付命令を受ける可能性があります(同法第8条第3項)。

  2. (2)薬機法の広告規制と罰則

    薬機法では、医薬品等の虚偽または誇大な広告を禁止しています(同法第66条第1項)。化粧品も「医薬品等」に含まれるため、ギフティングが広告に当たる場合は、薬機法の広告規制が適用されます。

    化粧品が薬機法上の虚偽・誇大広告に該当するか否かを判断する際には、厚生労働省や日本化粧品工業連合会のガイドラインもご参考ください。

    参考:
    医薬品等適正広告基準(厚生労働省)
    医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等(厚生労働省)
    化粧品等の適正広告ガイドライン(日本化粧品工業連合会)

    薬機法の広告規制に違反した場合の罰則
    薬機法の広告規制に違反した場合は、課徴金納付命令の対象となり(同法第75条の5の2)、さらに「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」(同法第85条)が科され得るため、要注意です。

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4、ギフティングのトラブルを招かないための4つのポイント

化粧品のギフティングに関するトラブルを回避するには、慎重に対応する必要があります。

① 依頼先のインフルエンサーを吟味する
依頼先候補のインフルエンサーが過去に行った投稿などから、コンプライアンス違反のリスクを検討した上で依頼先を選定しましょう。

② 広告規制の注意点をインフルエンサーに伝える
実際にギフティングを依頼するインフルエンサーに対しては、景品表示法・薬機法の広告規制について、注意するべきポイントを具体的にインプットしましょう。

③ 投稿前後でPR内容をチェックする
インフルエンサーによる投稿内容については、投稿前・投稿後の各段階において、広告規制違反に当たらないことをチェックしましょう。

④ 弁護士に相談する
広告規制対策について万全を期すためには、弁護士へのご相談をおすすめいたします。
少しでも不安がある際は、積極的に検討しましょう。
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5、まとめ

インフルエンサーに化粧品のギフティングを依頼する際には、景品表示法や薬機法の広告規制に注意が必要です。
不安がある際には、弁護士に相談することで、ギフティングの広告規制に関するアドバイスやリーガルチェックを受けることができます

ベリーベスト法律事務所は、企業広告に関するご相談を随時受け付けております。
景品表示法・薬機法上の広告規制対応に関しても、経験豊富な弁護士が具体的にアドバイスいたします。

インフルエンサーへのギフティング依頼を検討中のご担当者さまは、ベリーベスト法律事務所まで、お気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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