企業法務コラム
「会社更生法」とは、倒産手続き(債務整理手続き)のひとつである「会社更生」について定めた法律です。
大企業が事業を存続させつつ財務体質の改善を図るためには、会社更生を利用することが選択肢のひとつとなります。他の債務整理手続きとの間でメリット・デメリットを比較し、適切な方法で債務整理を行いましょう。
また、会社更生は非常に大規模な手続きなので、弁護士のサポートが必要不可欠です。会社更生を成功させるためには、信頼できる弁護士に対応をご依頼ください。
今回は会社更生法の概要・適用事例や、会社更生のメリット・デメリット、会社更生手続きの流れなどをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
「会社更生法」とは、大企業向けの再建型倒産手続きである「会社更生」について定めた法律です。
「会社更生」は、大企業向けの再建型倒産手続きです。
倒産手続きは、「清算型」と「再建型」の2種類に大別されます。
清算型の倒産手続きでは、会社財産を換価・処分して債権者に配当した後、会社の法人格を消滅させます。「破産」や「特別清算」が清算型の倒産手続きに該当します。
これに対して再建型の倒産手続きでは、会社の法人格を存続させて、事業を継続するのが大きな特徴です。「民事再生」や「会社更生」が再建型の倒産手続きに該当します。
再建型の倒産手続きである民事再生と会社更生を比較すると、会社更生の方が強力かつ大規模な手続きです。その分高額な費用がかかるため、会社更生は実質、大企業専用の手続きとなっています。
民事再生と会社更生の違いについては、以下の記事をご参照ください。
会社更生法が適用された会社の代表例は、いずれも2010年に更生手続開始の申し立てを行った日本航空や武富士などです。
国内最大の航空事業者だった日本航空は、グループ全体で約2兆3000億円の負債を抱えており、会社更生手続きを通じて企業再生支援機構(現:地域経済活性化支援機構)の支援を受け、再建を目指しました。
日本航空は、2012年9月19日に東証第一部へ再上場を果たしています。
消費者金融事業者だった武富士は、過払い金の支払いなどによって約4336億円の負債を抱えており、会社更生手続きを申請するに至りました。
武富士は2011年に「TFK株式会社」へ商号変更をした後、2012年に株式会社日本保証へ約252億円で事業譲渡を行いました。その後は会社更生手続きおよび弁済手続きに専念することとなり、2017年にTFK株式会社は清算され、法人格が消滅しました。
他の倒産手続きとの比較において、会社更生の主なメリットは以下のとおりです。
再建型の倒産手続きである会社更生では、破産や特別清算とは異なり、会社を存続させながら事業を継続することができます。
特に大企業の場合、長年にわたって築き上げた会社のブランドを活かして、事業を継続したいというケースも多いです。その場合には、再建型である会社更生(または民事再生)が有力な選択肢となります。
会社更生は民事再生と比較して、主に以下の特徴があります。
上記のように会社更生は、担保権が設定された債権や株主権も含めて変更し、管財人主導で抜本的に企業の再建を図る強力な手続きです。
民事再生よりもはるかに強力な法的効果を有するため、巨額の債務超過に陥った大企業でも再建できる可能性があります。
一方、会社更生には以下のデメリットが存在します。
会社更生手続きに要する費用は、裁判所に納めるものや弁護士費用などを併せて、最低でも総額数千万円以上、大規模な場合には数億円以上です。
支払不能または債務超過のおそれがある状態でもなお、このように高額な費用を準備しなければならないため、会社更生は実質的に大企業限定の手続きとなっています。
会社更生では、会社の経営権および会社財産の管理処分権がすべて管財人へ移転します(会社更生法第72条第1項)。そのため、現経営陣は必ず退任しなければなりません。
これに対して民事再生の場合は、現経営陣が退任せずに、引き続き経営を行うことも認められています。現経営陣の退任を回避したい場合には、会社更生ではなく民事再生を選択すべきでしょう。
会社更生手続きを利用できるのは、株式会社のみです。持分会社(合名会社・合資会社・合同会社)は、会社更生手続きを利用できません。
これに対して民事再生は、持分会社でも利用できます。持分会社が再建型により再起を目指す場合には、民事再生を選択しましょう。
会社更生手続きは、大まかに以下の流れで進行します。
それぞれ、見ていきましょう。
会社更生を利用する場合、まずは裁判所に更生手続開始の申し立てを行います(会社更生法17条1項)。
裁判所は、以下のいずれかの事由が存在する場合に、更生手続開始の決定を行います(会社更生法第41条第1項)。
ただし、以下のいずれかに該当する場合には、更生手続開始の決定が行われません(同法第41条第1項)。
更生手続開始の決定が行われる場合、同時に管財人が選任され、会社の経営権および財産の管理処分権がすべて破産管財人に移転します(同法第72条第1項)。
会社更生手続きへの参加を希望する債権者は、裁判所が定める「債権届出期間」中に、自らが更生会社に対して有する債権を届け出る必要があります(会社更生法第138条第1項)。
期間内に届け出がなかった債権については、原則として会社更生手続きにおける権利を行使できません。
管財人は、債務の減額や株主権の変更などを定めた更生計画案を裁判所に提出します(会社更生法第184条第1項)。
債権者や株主も、管財人案に対抗して更生計画案を作成し、裁判所に提出することができます(同条第2項)。
提出された更生計画案は、債権者・株主による決議に付されます。決議には以下の割合の賛成が必要です。
債権者・株主によって決議された更生計画は、認可要件をすべて満たしていれば、裁判所によって認可されます(同法第199条第2項)。
また、認可要件を満たしていない場合でも、裁判所の判断によって更生計画が認可されることがあります(同条第3項)。
更生計画認可の決定が確定すると、更生計画に従って債権・株主権が変更されます。
その後は更生計画に従い、管財人主導で会社再建に向けた取り組みが始まります。
会社更生は大規模な手続きであるため、弁護士への依頼が事実上必須です。また、会社更生にはメリット・デメリットの両面があるため、他の債務整理手続きと比較に関しても、弁護士にアドバイスを求めることをおすすめします。
弁護士は、会社の状況を丁寧に分析した上で、本当に会社更生を選択すべきか否かについてアドバイスいたします。
また、実際に会社更生を申し立てることになれば、必要書類の準備やスケジューリングなどを全面的に代行し、会社再建をサポートすることが可能です。
支払不能または債務超過のおそれが生じ、会社更生による再建を検討している企業の経営者・担当者の方は、お早めに弁護士までご相談ください。
会社更生手続きは、支払不能または債務超過のおそれを生じた大企業が、会社を存続させながら強力に再建を推し進めたい場合に有力な選択肢となります。
ただし、会社更生にはメリット・デメリットの両面があるので、手続きの選択について事前に弁護士へ相談することをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所は、会社更生を含む債務整理に関するご相談を随時受け付けております。会社の資金繰りが悪化し、債務整理をご検討中の経営者・担当者の方は、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。
会社経営に暗雲が垂れ込み始め、「経営破綻」という言葉が頭に浮かんで不安に感じている方はいませんか。その中には、経営破綻とは何なのか、具体的に理解していないという方もいるでしょう。経営破綻後は倒産手続…
もし経営危機に陥ってしまった場合、解決策のひとつになり得るのが、借入金などの負担を軽減できる「私的整理」です。私的整理には、破産や民事再生などの法的整理と比較すると、迅速・柔軟に債務を軽減できるメリ…
清算人とは、会社が解散した後に清算業務を行う人のことをいいます。その多くは取締役が就任するため、廃業を考えている経営者(取締役)の方は、清算人の職務や責任について理解しておきましょう。本記事では、清…
お問い合わせ・資料請求