企業法務コラム
男女共同参画の考えを広く浸透させていくために、改正育児休業法など政府はさまざまな施策を打ち出しています。こうした動きに伴い、企業には男性労働者に育児休業の取得を奨励することが求められます。
ただし、男性労働者の育児休業取得についてはまだ準備不足という企業もあるでしょう。企業は育児介護休業法のルールを順守し、期間・賃金・育休中の就労などに関するルールを正しく理解して、適切に育児休業制度を整備していく必要があります。
本記事では、男性労働者の育休取得について、取得できる期間や企業に求められる取り組みなどをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
男性労働者が育休を取得できる期間は、出産予定日から子どもが1歳になる日の前日までが原則です。
しかし、「産後パパ育休(出生時育児休業)」の新設や、「パパ・ママ育休プラス」などにより、多様な育休取得のパターンが可能となっています。
「産後パパ育休(出生時育児休業)」は、2022年10月から施行された新しい制度です。通常の育児休業とは別に、子どもの出生後8週間のうち、最大4週間まで取得できます(育児介護休業法第9条の2)。
産後パパ育休は、2回までの分割取得が認められています。
ただし、最初の取得時に2回分まとめて申請することが必要です。
通常の育児休業を取得できるのは、原則として出産予定日から子どもが1歳になる日の前日までです(育児介護休業法第5条第1項)。
通常の育児休業も、2回までの分割取得が認められています。
産後パパ育休とは異なり、通常の育児休業は取得時ごとに申請します。
両親がともに育児休業を取得する場合は、子どもが1歳2か月になる日の前日まで育児休業を延長できます(育児介護休業法第9条の6)。
これは「パパ・ママ育休プラス」と呼ばれる特例です。
パパ・ママ育休プラスは、両親がともに育児休業を取得することを促す目的で設けられています。
以下のいずれかに該当する場合には、子どもが2歳になる日の前日まで育児休業を延長できます(育児介護休業法第5条第3項第2号、第4項第2号、育児介護休業法施行規則第6条第1項、第2項、第6条の2)。
問題社員のトラブルから、
育児休業中の労働者は働かないのが原則です。
その場合、会社が賃金を支払う必要はなく、労働者には育児休業給付金が給付されます。
育児休業中の労働者に対して、会社は賃金を支払う必要がありません。
「ノーワーク・ノーペイ」の原則が適用され、働いていない期間について賃金は発生しないからです。
育児休業中の労働者は、育児休業給付金を受給できます。
育児休業給付金の受給期間は、育児介護休業法で認められた育児休業期間です。
参考:「育児休業給付について」(厚生労働省)
育児休業中の就労は本来想定されていませんが、労使の話し合いにより、子の養育をする必要がない期間に限り、一時的・臨時的に労働者を就労させることはできます。
会社としては、一方的な指示によって育児休業中の労働者を就労させることはできません。もし就労させるとしても、労働者との間で話し合いを尽くし、育児に支障が出ない方法を模索しましょう。
なお、産後パパ育休(出生時育児休業)については、労使協定を締結し、かつ労働者の同意がある場合に限り、労使で取り決めた条件の範囲内で就労させることが認められています。
労働者が育児休業中に就労した場合、育児休業給付金が減額または不支給となります。
育児介護休業法の規程に対応し、男性の育児休業取得を促進するため、企業は以下の取り組みを行いましょう。
育児休業に関する制度の内容は、「休暇」に関する規定にあたるため、就業規則に記載しなければなりません(労働基準法第89条第1号)。
育児介護休業法に沿った制度を整備した上で、従来から変更したポイントを就業規則に反映しましょう。
就業規則を改定する際には、労働者側から意見書の提出を受け、それを添付して労働基準監督署に届け出なければなりません(同法第90条)。
就業規則以外にも、育児休業に関する社内規程が定められていれば、そちらについても制度変更の内容を反映しましょう。
育児休業制度の内容を刷新した場合、会社は労働者に対して、新たな育児休業制度の内容を周知させる義務を負います(労働基準法第106条第1項)。
新制度の労働者に対する周知は、以下のいずれかの方法による必要があります(労働基準法施行規則第52条の2)。
育児介護休業法の法改正により、今後は育児休業を取得する男性労働者がますます増えることが予想されます。
会社としては、男性労働者の育児休業取得を想定して、普段から余裕をもった人材配置を行うことが望ましいです。
育児休業で抜けた男性労働者をカバーするため、代替人員をスムーズに確保できるようにしておきましょう。
育児休業制度を刷新した際には、労働者側から質問が寄せられる可能性が高いです。
新制度について正しい情報を案内するため、相談窓口の設置やリーフレットの準備など、育児休業に関する相談体制を整備しておきましょう。
令和4年度(2022年度)の「雇用均等基本調査」によれば、令和4年度の男性労働者の育児休業取得率は17.13%で、過去最高となりました。
しかし、男性育休取得率は、いまだ高い水準とはいえません。
各企業においては、働きやすい環境を整えるため、育児休業制度の整備を進めることが求められます。
産休・育休制度を整備するに当たっては、弁護士へのご相談がおすすめです。
弁護士は、会社の実情に合った産休・育休制度の設計や運用についてアドバイスいたします。
また、弁護士と顧問契約をご締結いただければ、産休・育休制度を含む人事・労務管理に加え、その他の法律問題についてもスムーズな相談が可能です。
産休・育休制度の整備をご検討中の企業や、顧問弁護士をお探しの企業は、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。
出典:「令和4年度雇用均等基本調査 結果の概要 事業所調査」(厚生労働省)
問題社員のトラブルから、
育児介護休業法の改正により、育児休業のルールが柔軟化したため、男性労働者はさまざまな形で育児休業を取得できるようになりました。
会社においては、最新の育児介護休業法に対応して、労働者が育児と仕事を両立できる育児休業制度の整備が求められます。
ベリーベスト法律事務所は、人事・労務管理に関する企業の相談を随時受け付けております。
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