企業法務コラム

2024年02月13日
  • 男性
  • 育休
  • 期間

男性社員に育休を取得させるには? 休業期間や企業の注意点

男性社員に育休を取得させるには? 休業期間や企業の注意点

男女共同参画の考えを広く浸透させていくために、改正育児休業法など政府はさまざまな施策を打ち出しています。こうした動きに伴い、企業には男性労働者に育児休業の取得を奨励することが求められます。

ただし、男性労働者の育児休業取得についてはまだ準備不足という企業もあるでしょう。企業は育児介護休業法のルールを順守し、期間・賃金・育休中の就労などに関するルールを正しく理解して、適切に育児休業制度を整備していく必要があります。

本記事では、男性労働者の育休取得について、取得できる期間や企業に求められる取り組みなどをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、男性労働者が育休を取得できる期間

男性労働者が育休を取得できる期間は、出産予定日から子どもが1歳になる日の前日までが原則です。
しかし、「産後パパ育休(出生時育児休業)」の新設や、「パパ・ママ育休プラス」などにより、多様な育休取得のパターンが可能となっています。

  1. (1)産後パパ育休(出生時育児休業)|出産後8週間

    「産後パパ育休(出生時育児休業)」は、2022年10月から施行された新しい制度です。通常の育児休業とは別に、子どもの出生後8週間のうち、最大4週間まで取得できます(育児介護休業法第9条の2)。

    産後パパ育休は、2回までの分割取得が認められています。
    ただし、最初の取得時に2回分まとめて申請することが必要です。

  2. (2)通常の育児休業|原則として子どもが1歳に達するまで

    通常の育児休業を取得できるのは、原則として出産予定日から子どもが1歳になる日の前日までです(育児介護休業法第5条第1項)。

    通常の育児休業も、2回までの分割取得が認められています。
    産後パパ育休とは異なり、通常の育児休業は取得時ごとに申請します。

  3. (3)パパ・ママ育休プラス|2か月間育休を延長可能

    両親がともに育児休業を取得する場合は、子どもが1歳2か月になる日の前日まで育児休業を延長できます(育児介護休業法第9条の6)。
    これは「パパ・ママ育休プラス」と呼ばれる特例です。

    パパ・ママ育休プラスは、両親がともに育児休業を取得することを促す目的で設けられています。

  4. (4)保育所に入れない場合など|子どもが2歳に達するまで延長可能

    以下のいずれかに該当する場合には、子どもが2歳になる日の前日まで育児休業を延長できます(育児介護休業法第5条第3項第2号、第4項第2号、育児介護休業法施行規則第6条第1項、第2項、第6条の2)。

    ① 保育所等の利用を希望し申し込みを行っているが、その実施が当面できない場合

    ② 以下のいずれかの理由により、配偶者が育児に参加できない場合
    • 死亡
    • 身体、疾病、身体上または精神上の障害
    • 離婚により、配偶者が子と同居しないこととなったこと
    • 6週間以内(多胎妊娠の場合は14週間以内)の出産予定
    • 産後8週間の未経過
企業の労働問題の弁護士相談
初回相談 30分無料
電話でのお問い合わせ
営業時間 9:30~18:00/土日祝除く
0120-733-043
営業時間 平日 9:30~18:00/土日祝除く

問題社員のトラブルから、労働裁判まで、あらゆる問題に対応!

2、育休中の賃金と就労に関するルール

育児休業中の労働者は働かないのが原則です。
その場合、会社が賃金を支払う必要はなく、労働者には育児休業給付金が給付されます。

例外:育児休業中に労働者が就労した場合
ただし例外的に、育児休業中の就労が認められることもあります。
育児休業中に労働者が就労した場合は、育児休業給付金が減額される場合があります。

  1. (1)育休中の賃金は支払不要|労働者は育児休業給付金を受給できる

    育児休業中の労働者に対して、会社は賃金を支払う必要がありません
    「ノーワーク・ノーペイ」の原則が適用され、働いていない期間について賃金は発生しないからです。

    育児休業中の労働者は、育児休業給付金を受給できます。
    育児休業給付金の受給期間は、育児介護休業法で認められた育児休業期間です。

    参考:「育児休業給付について」(厚生労働省)

  2. (2)育休中に労働者を就労させる場合の対応

    育児休業中の就労は本来想定されていませんが、労使の話し合いにより、子の養育をする必要がない期間に限り、一時的・臨時的に労働者を就労させることはできます。

    会社としては、一方的な指示によって育児休業中の労働者を就労させることはできません。もし就労させるとしても、労働者との間で話し合いを尽くし、育児に支障が出ない方法を模索しましょう。

    なお、産後パパ育休(出生時育児休業)については、労使協定を締結し、かつ労働者の同意がある場合に限り、労使で取り決めた条件の範囲内で就労させることが認められています

  3. (3)育休中に就労した場合の育児休業給付金の取り扱い

    労働者が育児休業中に就労した場合、育児休業給付金が減額または不支給となります。

    ※支給単位期間:育児休業開始日から起算した1か月ごとの期間

    ① 支給単位期間中の就業日数が10日を超え、かつ就業時間が80時間を超える場合
    →育児休業給付金は不支給となります

    ② 支給単位期間中の就業日数が10日以下、または就業時間が80時間以下の場合
    (a)支給単位期間について支払われた賃金が、賃金月額の13%※を超え80%未満の場合
    ※育児休業給付金の給付率が50%の場合(=育児休業の開始から6か月経過後)は、30%
    →「賃金月額×80%」と実際に支払われた賃金の差額が支給されます

    (b)支給単位期間について支払われた賃金が、賃金月額の80%以上の場合
    →育児休業給付金は不支給となります

    参考:「育児休業期間中に就業した場合の育児休業給付金の支給について」(厚生労働省)

3、男性の育休取得について企業が取り組むべきこと

育児介護休業法の規程に対応し、男性の育児休業取得を促進するため、企業は以下の取り組みを行いましょう。


  1. (1)就業規則その他の社内規程の改定

    育児休業に関する制度の内容は、「休暇」に関する規定にあたるため、就業規則に記載しなければなりません(労働基準法第89条第1号)。
    育児介護休業法に沿った制度を整備した上で、従来から変更したポイントを就業規則に反映しましょう

    就業規則を改定する際には、労働者側から意見書の提出を受け、それを添付して労働基準監督署に届け出なければなりません(同法第90条)。

    就業規則以外にも、育児休業に関する社内規程が定められていれば、そちらについても制度変更の内容を反映しましょう。

  2. (2)新たな育休制度の従業員に対する周知

    育児休業制度の内容を刷新した場合、会社は労働者に対して、新たな育児休業制度の内容を周知させる義務を負います(労働基準法第106条第1項)。

    新制度の労働者に対する周知は、以下のいずれかの方法による必要があります(労働基準法施行規則第52条の2)。

    • ① 常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、または備え付けること。
    • ② 書面を労働者に交付すること。
    • ③ 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。
  3. (3)育休を想定した適切な人材配置

    育児介護休業法の法改正により、今後は育児休業を取得する男性労働者がますます増えることが予想されます。
    会社としては、男性労働者の育児休業取得を想定して、普段から余裕をもった人材配置を行うことが望ましいです。

    育児休業で抜けた男性労働者をカバーするため、代替人員をスムーズに確保できるようにしておきましょう。

  4. (4)育休に関する相談体制の整備

    育児休業制度を刷新した際には、労働者側から質問が寄せられる可能性が高いです。

    新制度について正しい情報を案内するため、相談窓口の設置やリーフレットの準備など、育児休業に関する相談体制を整備しておきましょう。

4、産休・育休制度に関する相談は顧問弁護士へ

令和4年度(2022年度)の「雇用均等基本調査」によれば、令和4年度の男性労働者の育児休業取得率は17.13%で、過去最高となりました。

しかし、男性育休取得率は、いまだ高い水準とはいえません。
各企業においては、働きやすい環境を整えるため、育児休業制度の整備を進めることが求められます

産休・育休制度を整備するに当たっては、弁護士へのご相談がおすすめです。

弁護士は、会社の実情に合った産休・育休制度の設計や運用についてアドバイスいたします。
また、弁護士と顧問契約をご締結いただければ、産休・育休制度を含む人事・労務管理に加え、その他の法律問題についてもスムーズな相談が可能です。

産休・育休制度の整備をご検討中の企業や、顧問弁護士をお探しの企業は、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。

出典:「令和4年度雇用均等基本調査 結果の概要 事業所調査」(厚生労働省)

企業の労働問題の弁護士相談
初回相談 30分無料
電話でのお問い合わせ
営業時間 9:30~18:00/土日祝除く
0120-733-043
営業時間 平日 9:30~18:00/土日祝除く

問題社員のトラブルから、労働裁判まで、あらゆる問題に対応!

5、まとめ

育児介護休業法の改正により、育児休業のルールが柔軟化したため、男性労働者はさまざまな形で育児休業を取得できるようになりました。
会社においては、最新の育児介護休業法に対応して、労働者が育児と仕事を両立できる育児休業制度の整備が求められます。

ベリーベスト法律事務所は、人事・労務管理に関する企業の相談を随時受け付けております。
産休・育休制度を整備し、労働者にとって働きやすい環境を整えたいとお考えの企業は、ベリーベスト法律事務所にご相談ください

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
ご希望の顧問契約・企業法務に関するご相談について伺います。お気軽にお問い合わせください。
お電話でのお問い合わせ
0120-127-034
営業時間 平日 9:30~18:00
土日祝除く

同じカテゴリのコラム

テレビCM放送中

お問い合わせ・資料請求

PAGE TOP