企業法務コラム
社員が会社の資金を不正に流用した場合などには、懲戒処分などに加えて、業務上横領罪による刑事告訴も検討することができます。
社員の業務上横領などの不祥事につき、会社として適切に対応するためには、弁護士へのご依頼をおすすめします。
本記事では、社員の業務上横領に関する刑事告訴の効果・手続きや、そのほかに会社がとるべき対応などをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
そもそも「横領」自体、刑法によって処罰されている行為ですが、業務上横領罪はその有責性、悪質性の大きさゆえに加重して処罰されています(刑法第253条)。まずは業務上横領罪につき、構成要件と法定刑を確認しておきましょう。
業務上横領罪は、以下の構成要件をすべて満たす行為について成立します。
業務上横領罪の法定刑は、10年以下の懲役です。委託された任務に背いて横領することの悪質性が重視され、単純横領罪の法定刑(5年以下の懲役)よりも重く設定されています。
社員による業務上横領を発見したら、捜査機関に対する刑事告訴を検討することができます。刑事告訴は、業務上横領による不祥事の適切な解決へつながる可能性があります。
「刑事告訴(告訴)」とは、告訴権者が捜査機関に対して犯罪事実を報告し、加害者の処罰を求める意思表示です。
業務上横領罪によって損害を被った会社は、加害者である社員を刑事告訴することができます(刑事訴訟法第230条)。刑事告訴は、検察官または司法警察員(警察官)に対して行います。
刑事告訴をすると、捜査機関には以下の義務が生じます。
会社が社員の業務上横領を刑事告訴することは、以下のような意味を持ちます。
社員の業務上横領が疑われる場合、会社は以下の対応を迅速かつ的確に行いましょう。
まずは、業務上横領に関する事実関係を確認しましょう。確認すべき点としては、以下の例が挙げられます。
役員・社員らに対する慎重なヒアリングのほか、メールや文書などの資料もチェックして、事実関係の正確な把握に努める必要があります。
業務上横領の事実が発覚したときは、オーナー経営者やその家族がすべての株式を保有している場合を除き、株主に対して現状とその後の対応を説明すべきです。また、取引先に対する説明も尽くす必要があります。
十分に説明を行い、会社の信用の低下をできる限り抑えましょう。
また、上場会社をはじめとする大企業では、業務上横領の事実が大々的に報道される可能性が高いといえます。
その場合は、マスコミ対応も必要となります。会社として毅然(きぜん)とした対応をとっていることが伝わるように、弁護士のアドバイスを受けながら適切なメッセージを発信しましょう。
業務上横領を行った社員に対しては、懲戒処分を検討すべきです。厳正に懲戒処分を行うことは、業務上横領を許さないという社内への強いメッセージとなり、再発防止や社内秩序の維持につながります。
業務上横領は極めて悪質な行為なので、もっとも重い懲戒処分である懲戒解雇も認められる可能性が高いです。ただし、具体的な事情に応じた慎重な検討が必要なので、事前に弁護士へご相談ください。
業務上横領による被害金額については、社員に対して民事上で損害賠償を請求できます。事実調査の過程で被害金額を正確に把握したうえで、損害賠償請求を行う必要があります。
損害賠償請求は示談交渉のほか、訴訟などの法的手続きを通じて行うこともできます。弁護士にご依頼いただければ、損害賠償請求に関してあらゆる手続きをサポートいたします。
業務上横領が悪質な場合は、社員の刑事告訴も検討すべきです。懲戒処分などと併せて刑事告訴を行えば、厳しい対応を社内外に印象付けることができます。
業務上横領が再び発生することのないように、再発防止策を検討・実施することも大切です。
再発防止策の検討を行うにあたっては、どのような経緯で業務上横領が発生したのかを正確に把握し、その抜け穴をふさぐような対策を考える必要があります。
弁護士などによって第三者委員会を組織し、外部の客観的な意見を聞きながら、再発防止策のあり方を検討することも有効です。
業務上横領罪によって社員を刑事告訴する場合は、以下の流れで手続きが進行します。
社員による業務上横領の刑事告訴にあたっては、弁護士にご依頼ください。弁護士は、告訴状の作成や証拠の準備など、業務上横領に必要な手続きを丁寧にサポートいたします。
また刑事告訴のほか、懲戒処分・損害賠償請求・再発防止策の検討などに関しても、会社としてとるべき対応を弁護士が総合的にアドバイスいたします。
業務上横領による不祥事につき、迅速かつ適切に収拾を図るためには、お早めに弁護士へご相談ください。
ベリーベスト法律事務所では、捜査経験が豊富な元検事の弁護士、企業勤務経験豊富で会社の実情に詳しい弁護士、コンプライアンスなどに関連する公認不正検査士の資格を持つ弁護士、企業法務・労働問題に詳しく強い弁護士など多数の弁護士が在籍しており、総合的なサポートをさせていただきます。
社員による横領事件が発覚した際には、懲戒処分や損害賠償請求などと併せて、刑事告訴を検討することができます。刑事告訴やそのほかの対応については、弁護士にご依頼いただくことで迅速かつ的確に対処することが可能です。
ベリーベスト法律事務所は、刑事事件に発展する場合も含めて、企業における危機管理対応のご相談を随時受け付けております。業務上横領などの不祥事について、クライアント企業が受ける損害を最小限に抑えられるように、弁護士が親身になってサポートいたします。
社員による横領行為の被害に遭った会社は、お早めにベリーベスト法律事務所へご相談ください。
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