企業法務コラム

2023年11月27日
  • 内部統制システム

内部統制システムはどんなシステム? 中小企業でやるべきことはある?

内部統制システムはどんなシステム? 中小企業でやるべきことはある?

内部統制システムとは、企業の不祥事を防止し、対外的な信頼性を高めることができる社内体制です。金融商品取引法や会社法では、大企業に内部統制システムの整備が義務付けられていますが、中小企業では、内部統制システムの整備は任意とされています。

しかし、中小企業でも内部統制システムの整備により、さまざまなメリットがありますので、積極的に内部統制システムの導入を進めていくべきでしょう。

今回は、内部統制システムの概要と中小企業でも内部統制システムを導入するメリットなどについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、内部統制システムとは

内部統制システムとは、どのようなものなのでしょうか。まずは、内部統制システムの定義や目的などについて説明します。

  1. (1)内部統制システムの定義

    内部統制システムとは、企業内で違法行為、情報漏えいなどの不祥事が発生することを防ぐための体制のことです。会社法および金融商品取引法という2つの法律により定義されています。

    具体的には、会社法では、内部統制システムとは、「取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備」と定義されています(会社法362条4項6号)。
    また、金融商品取引法上では、内部統制システムとは、「当該会社の属する企業集団及び当該会社に係る財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するために必要なものとして内閣府令で定める体制」と定義されています(金融商品取引法24条の4の4第1項)。

    このように会社法では業務執行の適正化を目的とし、金融商品取引法では財務統制の適正化を目的として、内部統制システムを定義していいます。

  2. (2)内部統制システムの目的

    内部統制システムには、以下の4つの目的があります。

    ① 業務の有効性および効率性
    ひとつ目の目的は、事業活動における目的を達成するために、業務執行の有効性および効率性を高めるということです。
    限られた人材や資産を有効的かつ効率的に配分することにより、事業の発展を図ることができます。

    ② 財務報告の信頼性
    2つ目の目的は、財務諸表および財務諸表に影響を及ぼす可能性がある情報の信頼性を確保することです。
    粉飾決算などが発覚すると企業の信頼性は著しく失墜してしまいます。内部統制システム整備によりそのような不正を回避することができます。

    ③ 事業活動にかかわる法令などの順守
    3つ目の目的は、事業活動にかかわる法令やその他の規範の順守を促進することです。
    食品偽造、リコール隠しなどの重大な法令違反があると、企業としても大きな損失を被ることになります。内部統制システムの整備により、このような法令違反を未然に防ぐことができます。

    ④ 資産の保全
    4つ目の目的は、資産の取得、使用、処分が正当な手続きのもとで行われるようにすることで資産の保全を図ることです。

    内部統制システムを実際につくる際には、この4つの目的をかなえているか確認しましょう。

  3. (3)内部統制システム整備が義務となっている会社とは

    大会社である取締役会設置会社に該当する会社は、内部統制システムの整備が会社法362条5項により、会社法上義務付けられています。

    大会社とは、資本金5億円以上、または負債額200億円以上の会社のことです。

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2、内部統制システム6つの要素

内部統制システムは、以下の6つの基本要素によって構成されています。

・ 統制環境
統制環境とは、組織の気風や体質の決定などを決めるものであり、なおかつ内部統制システムの基盤をなす要素です。以下のような項目が挙げられます。

  • 誠実性および倫理観
  • 経営者の意向および姿勢
  • 経営方針および経営戦略
  • 取締役会及び監査役、監査役会、監査等委員会又は監査委員会(以下「監査役等」という。)の有する機能
  • 組織構造および慣行
  • 権限および職責
  • 人的資源に対する方針と管理

・ リスクの評価と対応
リスクの評価と対応とは、組織としての目標達成に影響を及ぼすリスクを分析・評価して、適切な対応を行うための一連のプロセスのことです。

リスクの識別・分析・評価をし、適切な対応を行うための手順を整備しなければなりません。

・ 統制活動
会社内で定められた権限、職責の付与、職務の分掌などの手続きや方針のことを統制活動と呼びます。

不正やミスの発生を軽減するためにも、担当者の権限や職責を明確にし、適切に業務遂行できる体制を整備することが重要になります。

・ 情報と伝達
情報と伝達とは、必要な情報が正確に伝えられる仕組みのことです。
必要な情報が識別・把握・処理されて、組織内外の関係者に正しく伝えることができる仕組みを確保する必要があります。

・ モニタリング
モニタリングとは、内部統制システムの有効性を継続して評価するプロセスを指します。
日常的な業務を、常にモニタリングする仕組みや、独立した視点から定期的にモニタリングする、内部監査などの仕組みを導入する必要があります。

・ ITへの対応
ITへの対応とは、組織目標を達成するために予め適切な方針及び手続を定め、組織内外のITに適切に対応することです。IT環境への対応とITの利用および統制が求められます。

3、中小企業はどうすればいいのか

中小企業には、内部統制システムを整備する法的な義務はありません。しかし、以下のようなメリットがありますので、中小企業でも内部統制システムの整備を進めていくとよいでしょう

  1. (1)取引先に安心感を与えることができる

    内部統制システムを整備すれば、適正な事業活動・財務報告を行っている企業であるということを対外的に示すことができます。取引先としても、そのような企業が取引相手であれば、安心して長期かつ安定的な取引ができると判断するでしょう。

    このように取引先に安心感を与えることができれば、中長期的にみて会社の安定経営につながるといえます。

  2. (2)経営者の負担軽減を図れる

    内部統制システムを整備していない会社では、経営者自身で企業内外のリスクなどの監視を行っています。しかし、経営者ひとりで監視を行い、対処するというのは大きな負担となり、本業にも支障が生じるおそれがあります。

    内部統制システムを整備すれば、経営者自ら監視を行う必要はなくなりますので、経営者本来の仕事に集中することができます。

  3. (3)企業価値が向上する

    内部統制システムの整備で対外的な信用性が向上し、財務状況の透明性も向上します。それにより、企業価値が向上し、資金調達がしやすくなる、取引が増えるなどさまざまなメリットが生じます。

    これからの社会においては、法的な設置義務のない中小企業でも内部統制システムの整備が求められてきます。これらの社会的な需要に対応するためにも、早めに内部統制システムの整備を進めていくようにしましょう。

4、内部統制システムについて弁護士ができること

企業の内部統制システムの整備にあたって、弁護士は、以下のようなサポートができます。

  1. (1)内部統制システムを構築する際のサポートや体制づくりのアドバイス

    企業の規模が拡大すると経営者の目の届かない業務が増え、それにともなうリスクを管理するのが難しくなります。リスク管理の不手際により従業員の不祥事などが生じてしまうと、企業としても大きな損失となりますので、しっかりとリスク管理を行うことが大切です。

    そのために有効なのが内部統制システムの構築です。内部統制システムを構築し、それを適切に運用することができれば、さまざまなリスクを未然に防ぐことができるだけでなく、企業価値を高めることができるなど多くのメリットが得られます。

    弁護士であれば、会社の実態に即した内部統制システムの構築のアドバイスやサポートを行うことができますので、内部統制システムの構築をお考えの経営者の方は、まずは弁護士にご相談ください

  2. (2)従業員のコンプライアンス研修

    内部統制システムの構築とともに重要となるのが、従業員の意識改革です。企業内で働く従業員の法令順守の意識が低い状態だと、内部統制システムを構築したとしても、形式的なものに過ぎず、十分な効果を発揮することができません。

    弁護士であれば、従業員のコンプライアンス研修の講師を担当することができますので、実務に即した具体的な講義により、従業員の法令順守の意識を高めることができます

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5、まとめ

大企業では、法律上義務付けられている内部統制システムの設置ですが、任意とされている中小企業でも内部統制システムの整備をすれば、さまざまなメリットが得られます。まだ、内部統制システムを整備していないという企業は、積極的に導入を検討してみましょう。

ベリーベスト法律事務所には、ネット上のトラブルに対応する削除チーム、会社の危機に立ち向かう危機管理チームがあり、内部システムの構築サポートのみならず、トラブルが起こってしまった後も対応可能です。月額3980円から利用可能な顧問弁護士サービスも提供していますので、企業法務のお困りごとは、ベリーベスト法律事務所までご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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