企業法務コラム
12年間以上登記を怠っている会社は、「みなし解散」の対象となります。
長期にわたり登記をしないということは、活動を行っていない休眠会社とみなされて会社の信頼が損なわれるだけでなく、犯罪の温床となるリスクがあると考えられるからです。そのため、みなし解散の処理を進める休眠会社の整理作業が2014年以降毎年実施されています。
みなし解散を避けるためには、会社に関する事項の変更について、適時に変更登記手続きを行いましょう。今回は会社の「みなし解散」について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
「みなし解散」とは、登記記録が12年間以上変更されていない会社が、公告手続きを経て解散したものとみなされることをいいます。
活動していない休眠会社を放置することには、以下の問題点があります。
そこで会社法第472条では、12年間以上登記がなされていない会社につき、公告手続きを経て解散したものとみなす「休眠会社のみなし解散」を定めています。
なお株式会社に加えて、最後の登記から5年を経過している一般社団法人と一般財団法人もみなし解散の対象です。
参考:「休眠会社・休眠一般法人の整理作業について」(法務省)
みなし解散の対象となるのは、最後の登記から12年を経過している株式会社です(有限会社を含みます。会社法第472条)。
株式会社の取締役等の任期は最長10年とされているため(会社法第332条第2項)、少なくとも10年程度に1回は変更登記をする必要があります。それにもかかわらず、12年以上登記を行っていない会社は、実体がない可能性が高いため、みなし解散の対象とされています。
これに対して、持分会社(合名会社・合資会社・合同会社)にはみなし解散制度がありません。持分会社の社員には任期がなく、長期間にわたって登記が行われていないとしても、実体がないとは限らないためです。
株式会社のみなし解散は、以下の流れで行われます。
経営する会社についてみなし解散の予告通知が届いた場合は、以下の各点に十分留意した上でご対応ください。
休眠会社がみなし解散となるのは、官報公告から2か月後です。
期限経過後も一定期間は会社を継続できますが、登記手続きなどの手間が増えてしまいます。みなし解散の期限に間に合うように、会社を継続するか否かを判断しましょう。
みなし解散の予告を受けた会社を継続するには、最新の事項を反映する登記手続きが必要です。
これに対して、みなし解散によって会社を清算する場合でも、放置すれば勝手に会社が消滅するわけではなく、清算手続きを行う必要がある点に注意が必要です。清算手続きの流れについては、後述します。
会社法の規定に従った登記を怠った場合、「100万円以下の過料」に処される可能性があります(会社法第976条第1号)。
みなし解散の予告通知を受けた会社については、会社法上の登記義務違反が生じていると考えられます。実際に過料の制裁が課されるか否かは未知数ですが、その可能性があることは覚悟しておきましょう。
みなし解散を予告された会社を継続したい場合、官報公告がなされてから経過した期間によって、必要な手続きが異なります。
官報公告がなされてから2か月以内であれば、法務局で最新の事項を登記することにより、みなし解散を回避できます(会社法第472条第1項但し書き)。登記申請は、法務局の登記官に対して申請書などを提出して行います。
取締役の重任登記を行うのが一般的ですが、そのほかにも従来の登記から変更された事項があれば、変更登記手続きを行いましょう。
官報公告がなされてから2か月が経過すると、会社は解散したものとみなされてしまいます。
ただし、みなし解散から3年以内であれば、株主総会決議によって会社を継続することが可能です(会社法第473条)。この場合、以下の手続きが必要になります。
みなし解散(官報公告後2か月経過)からさらに3年が経過すると、株主総会決議による会社継続はできなくなります。
休眠会社を継続したい場合には、遅くともみなし解散から3年以内に継続の手続きを完了しましょう。
株式会社がみなし解散となった後、休眠会社を清算する場合には、以下の清算手続きを経る必要があります。
会社がみなし解散となった場合、会社を継続するには煩雑な手続きを要するほか、登記手続きを怠ったことについて過料の制裁を課されるおそれもあります。
みなし解散を避けるためには、会社の登記事項が変更された際、速やかに変更登記手続きを行うことが大切です。変更登記の期限は、変更事由が生じた時から2週間以内とされているため(会社法第915条第1項)、期限に間に合うように手続きを行いましょう。
株式会社のみなし解散を避けるためには、適宜に変更登記手続きを行うことが大切です。また、もしみなし解散の予告を受けてしまったら、速やかに方針を決定して手続きを行いましょう。
ベリーベスト法律事務所は、みなし解散に関する対応についてご相談を受け付けております。みなし解散の予告通知を受けた企業は、速やかにベリーベスト法律事務所へご相談ください。
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