企業法務コラム
所属タレントの名前や写真の無断使用は、商標権侵害やパブリシティ権侵害に当たる可能性があります。これらの権利侵害を受けた場合には、速やかに差止請求や損害賠償請求などの対応を行いましょう。
本記事では、タレントに関する商標権・パブリシティ権の概要や、権利侵害への対処法などをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
タレントに関する権利の代表例としては、「商標権」と「パブリシティ権」が挙げられます。
「商標権」とは、事業者が自社の商品やサービスを表すために使用する文字・ロゴ・マークなどにつき、独占的かつ排他的な使用を認める権利です。
商標権者は、指定商品または指定役務について、登録した商標を独占的に使用できます(=独占権。商標法第25条)。
また、他社による登録商標と類似した商標の使用や、指定商品または指定役務と類似した商品・役務に関する登録商標の使用などを発見した場合は、商標権侵害として差し止めなどを請求可能です(=排他権(または禁止権)。同法第37条)。
商標権によって保護された文字・ロゴ・マークなどを使用すれば、自社の商品やサービスを他社のものから差別化することができます。またタレントについては、その芸名などが商標登録されるケースがあります。
商標権の有効期間は、設定登録の日から10年間です(同法19条1項)。有効期間が満了する度に、同じく10年間の更新が認められています。
「パブリシティ権」とは、有名人などの氏名やイメージが持つ顧客誘引力を、商業的に利用する権利です。法律に明文の規定はありませんが、判例上認められている権利です(最高裁平成24年2月2日判決)。
たとえば、有名人の名前を勝手に商品の宣伝に使ったり、有名人の写真を勝手に商品パンフレットへ掲載したりする行為はパブリシティ権侵害に当たります。パブリシティ権を侵害された場合は、侵害者に対して差し止めなどを請求可能です。
パブリシティ権は、法で定められているものではないので、有効期間の定めもありません。
商標権侵害およびパブリシティ権の要件と、侵害に当たる行為の具体例を紹介します。
商標権侵害が成立するのは、以下の要件をすべて満たす場合です。
たとえば、商標登録されているタレントの芸名を、別のタレントが芸名として使用した場合は商標権侵害に当たります。
前述のとおり、パブリシティ権侵害は、有名人の氏名やイメージなどを、専らその顧客吸引力を利用するために使用した場合に成立します(最高裁平成24年2月2日判決参照)。「専らその顧客吸引力を利用するために使用した」か否かの判断基準として、平成24年判決では、以下の3点を挙げています。
もう少し具体的にすると、たとえば、以下のような行為が上記の要件に該当するものと考えられます。
タレントに関する商標権やパブリシティ権を侵害された場合は、侵害者に対して差止請求や損害賠償請求を行うことができます。また、商標権侵害については、商標法違反による刑事告訴を行うことも考えられます。
商標権を侵害され、または侵害されるおそれがある場合は、侵害行為の停止または予防を請求可能です(商標法第36条第1項)。加えて、侵害行為の組成物の廃棄や侵害行為に供した設備の除却など、侵害の予防に必要な行為も併せて請求できます(同条第2項)。
パブリシティ権侵害についても、同様の差止請求が認められると解されています。
また、商標権侵害やパブリシティ権侵害によって何らかの損害を被った場合は、侵害者に対して不法行為に基づく損害賠償を請求できます(民法第709条)。
差止請求や損害賠償請求を行う際には、まず侵害者に対して内容証明郵便などで警告を行い、協議での解決を試みるのが一般的です。協議に当たっては、侵害行為を二度としないことに加えて、適正額の損害賠償の合意を目指しましょう。
協議で解決に至らない場合には、法的手続きによって差止めや損害賠償を請求することになります。差止請求については裁判所に対する仮処分の申立て、損害賠償請求については訴訟を提起することが考えられます。
他人の商標権を侵害した者には、以下の刑事罰が科されます。
商標権を侵害された商標権者は、侵害者の処罰を求めるため、検察官または司法警察員(警察官)に対して刑事告訴をすることができます(刑事訴訟法第230条)。
刑事告訴を行う際には、警察署に告訴状を提出するのが一般的です。告訴状と併せて、商標権侵害に当たる行為の証拠を提出すれば、スムーズに捜査が開始される可能性が高まります。
過去の所属タレントの芸名を長期間にわたり使用していない場合は、本人などの請求によって商標登録が取り消されることがあるので注意が必要です。
継続して3年以上、日本国内において商標権者・専用使用権者・通常使用権者がいずれも指定商品・指定役務について使用していない登録商標は、何人でもその商標登録の取り消しの審判を請求できます(商標法第50条第1項)。
商標登録の取り消しの審判が請求された場合、商標権者などが当該登録商標の使用を立証するか、または使用していないことについて正当な理由があることを明らかにしない限り、商標登録が取り消されてしまいます(同条第2項)。
過去の所属タレントの芸名を商標登録している場合において、その芸名を3年以上使用していないときは、本人などの請求によって商標登録が取り消され得るので注意が必要です。
知財高裁平成27年7月30日判決の事案では、タレントの芸名を用いた登録商標を取り消した審判について、商標権者側が審決取消訴訟を提起しました。
商標権者側は、タレントが商標権使用に非協力的であったことや、タレントのスキャンダルのために使用できなかったことなどを理由に、登録商標の不使用には正当な理由があると主張しました。
しかし知財高裁は、これらの事情は内部的な紛争にかかわるものに過ぎず、登録商標の不使用について正当な理由があるとはいえないとして、商標登録を取り消した原審決を支持しました。
商標権やパブリシティ権など、タレントに関する権利の侵害にお悩みの企業は、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士は、商標権侵害やパブリシティ権侵害の要件に照らして、問題の行為が侵害に当たるかどうかを適切に判断したうえで、どのような対応をとるべきかについてアドバイスすることができます。
実際に差止請求・損害賠償請求・刑事告訴などを行う際には、必要な手続きを弁護士が代行いたしますので、対応のご負担も大幅に軽減されます。
タレントに関する権利侵害への対応は、弁護士にご相談ください。
登録商標であるタレントの芸名を無断で使用することは商標権侵害、タレントの氏名・写真などを勝手に商用利用することはパブリシティ権侵害に当たる可能性があります。
自社の所属タレントについて、商標権やパブリシティ権の侵害を受けた場合は、損害を最小限に抑えるために早急かつ適切な対応が必要です。弁護士のサポートを受けながら、差止請求・損害賠償請求・刑事告訴などを行いましょう。
自社の所属タレントに関する商標権侵害やパブリシティ権侵害にお悩みの企業は、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。
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