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2023年12月21日
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医師免許剥奪? 所属医師が逮捕された場合に病院がすべきこと

医師免許剥奪? 所属医師が逮捕された場合に病院がすべきこと

医師の有罪判決が確定した場合、医師免許が取り消される可能性があります。

もし病院に所属している医師がいきなり逮捕されたら、病院としてどのように対応すればよいのだろうかと不安に思う方もいるでしょう。不安や困惑を避けるためにも、事前に所属医師の逮捕について押さえておくべき情報を知っておくことは、重要といえます。

本記事では、医師免許剥奪の条件や、所属医師が逮捕された病院がとるべき対応などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、医師が逮捕されたら医師免許剥奪になるのか?

医業をなす(=医療行為をする)ことができるのは、厚生労働大臣の免許を受けた医師のみです(医師法第17条)。したがって、医師免許が取り消される(剥奪される)と、医師として活動することはできなくなります。

医師が逮捕されても、直ちに医師免許が取り消されるわけではありません。しかし、罰金以上の刑に処された場合や、医事に関する犯罪行為をした場合などには、医師免許が取り消されることがあります

  1. (1)逮捕されても直ちに医師免許が取り消されるわけではない

    医師免許の取り消しは、医師法に基づいて厚生労働大臣が行う行政処分です。

    以下のいずれかに該当する医師には、戒告・3年以内の医業の停止・免許の取り消しの対象となることがあります(医師法第7条第1項、第4条各号)。

    • ① 視覚・聴覚・音声・言語機能または精神の機能の障害により、医師の業務を適正に行うに当たって必要な認知・判断・意思疎通を適切に行うことができない者
    • ② 麻薬・大麻・あへんの中毒者
    • ③ 罰金以上の刑に処された者
    • ④ 上記項目(①~③)のほか、医事に関し犯罪または不正の行為のあった者
    • ⑤ 医師としての品位を損するような行為をした者

    上記のとおり、一部の犯罪行為は医師免許取り消しの対象とされていますが、逮捕された段階では有罪が確定したわけではありません。有罪か無罪かは、刑事裁判の手続きを通じて判断されます。

    したがって、医師が逮捕されたからといって、その時点で直ちに医師免許が取り消されるわけではありません。

  2. (2)一定の犯罪行為・有罪判決は免許取り消し等の対象となる

    医師が以下のいずれかに該当する場合は、医道審議会の審査を経て、医師免許が取り消されることがあります。

    • 麻薬、大麻、あへんの中毒者である場合
    • 罰金以上の刑に処された場合(有罪判決または略式命令が確定した場合)
    • 医事に関する犯罪または不正の行為をした場合
    • 医師としての品位を損するような行為をした場合

    医道審議会医道分科会が作成している平成14年12月13日付「医師及び歯科医師に対する行政処分の考え方について」という指針を見ると、行政処分の考え方として、「司法における刑事処分の量刑や刑の執行が猶予されたか否かといった判決内容を参考とすることを基本とし」という記載があります。このような考え方を前提とすると、刑事処分が定まるまでは、医師免許の取消しがなされる可能性は高くないと考えることができます。

    もっとも、前述の「麻薬、大麻、あへんの中毒者である場合」「医事に関する犯罪または不正の行為をした場合」「医師としての品位を損するような行為をした場合」という条件は、刑事処分の有無にかかわらず満たされてしまう可能性はあります。そのため、「刑事処分が出るまでは医師免許の取消しは絶対にない」とはいえませんので、注意が必要です。

  3. (3)医師免許の取り消し後に再免許を受けられるまでの期間

    医師免許が取り消された場合でも、取り消しの理由となった事項に該当しなくなったとき、「その他その後の事情により再び免許を与えるのが適当である」と認められるに至ったときは、再免許を受けることができます(医師法第7条第2項)。

    ただし、罰金以上の刑に処された者、医事に関し犯罪または不正の行為のあった者、および医師としての品位を損するような行為をした者については、医師免許の取り消し後5年間は再免許を受けることができません(同項括弧書き)。

  4. (4)歯科医師も同様に免許を取り消されることがある

    歯科医師の免許について定める歯科医師法では、医師法と同様に、免許の取り消しに関する規定が設けられています。

    歯科医師の免許取り消し事由も、医師と同様です。したがって、歯科医師が罰金以上の刑に処された場合などには、歯科医師免許が取り消されることがあります。

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2、医師免許剥奪につながりやすい犯罪と注意点

多くの犯罪には、医師免許取り消しの対象となる罰金以上の刑が定められています。その中でも、業務や社会的地位との関係上、医師が関与しやすい犯罪には特に注意しなければなりません。
また、医師による犯罪は実名報道されやすい傾向にある点にも、要注意です。

  1. (1)医師免許剥奪につながりやすい犯罪の例

    医師はその業務や社会的地位との関係上、以下のような犯罪に関与するリスクが高いと考えられます。これらの犯罪は、いずれも医師免許の取り消しにつながり得るので、注意深く避けなければなりません。

    ① 医師法違反
    無資格者への名義貸しや無診察診療などは、医師法違反に当たります。

    ② 保健師助産師看護師法違反
    無資格の保健師・助産師・看護師を使用することなどは、保健師助産師看護師法違反に当たります。

    ③ 薬機法違反
    医薬品の無許可販売を行うこと・協力することなどは、薬機法違反に当たります。

    ④ 薬物犯罪
    覚醒剤・大麻・麻薬・向精神薬などの濫用は薬物犯罪に当たるほか、中毒に陥った場合は直ちに医師免許取り消しの対象となります。

    ⑤ 殺人罪・傷害罪・自殺関与罪・同意殺人罪
    医学的知識を悪用して他人を殺害した場合は殺人罪、他人の生理的機能を害した場合は傷害罪が成立します。
    また、自殺を助けた場合は自殺関与罪、嘱託を受けまたは承諾を得て他人を殺した場合は同意殺人罪によって処罰されます。

    ⑥ 業務上過失致死傷罪
    医療ミスによって患者を死傷させた場合は、業務上過失致死傷罪が成立します。特に重大な医療ミスによって患者を死亡させた場合は、医師免許取り消しのリスクが高まることに注意が必要です。

    ⑦ 性犯罪
    相手の同意を得ずに性的な行為に及んだ場合は、不同意わいせつ罪や不同意性交等罪などが成立します。

    ⑧ 所得税法違反・法人税法違反・相続税法違反
    所得隠しを行った場合は所得税法違反や法人税法違反、相続した遺産を過少申告した場合は相続税法違反に当たります。
  2. (2)犯罪報道にも要注意|医師は実名報道されやすい

    医師は社会的地位が高い反面、その犯罪行為は実名報道されやすい傾向にあります。
    犯罪が実名で報道されると、悪評が一挙に広まって医師としての再起が困難になるでしょう。

3、所属医師の逮捕に関して病院がすべきこと

所属医師が逮捕された場合、病院は状況に応じて以下の対応を行いましょう。


  1. (1)適切な情報開示

    所属医師の逮捕により、入院・通院している患者が不信感を抱くことがあるほか、社会全体に病院の悪いイメージが広まってしまうおそれがあります。

    病院のイメージを改善するためには、逮捕された医師への対応について、適切な情報開示を行うことが大切です。
    医師に対してどのような処分を行ったのか、どのような再発防止策を講じたのかなどを、報道発表や記者会見などによって発信しましょう。

  2. (2)本人に対する懲戒処分

    逮捕された医師本人に対しては、懲戒処分を含む対応を検討すべきです。

    ただし、逮捕されただけでは有罪が確定したわけではないので、逮捕段階での懲戒処分には慎重を期す必要があります。事実に基づかない懲戒処分や、重すぎる懲戒処分は無効になり得るので注意しなければなりません。

    もっとも、刑事処分が確定するまでの間は、勾留や捜査機関、公判期日への出頭などにより労務に影響が出ることも見込まれますし、刑事処分が定まっていない医師を就業させることで、職場が混乱するおそれも否定できません。そのような場合には、刑事処分が確定するまで、休職命令を行う方法が考えられます

    休職命令は、就業規則に定めがなくても行いうると考えられています。もっとも、特に起訴されたことを理由とする休職命令について、常に有効になるとは限りません。起訴休職の有効性が争われた裁判例では、対外的信用や職場秩序の維持のために必要であるか否か、労務の継続的提供に支障があるか否か、懲戒処分との均衡が取れている否かという観点から、有効性が判断されています(東京地判平成11年2月15日労判760号46頁など)。
    安易に休職命令を行ってしまうと、無効とされてしまうリスクがありますので、休職命令を行う場合には、弁護士に相談をすることをおすすめします

  3. (3)再発防止策の検討

    医師による犯罪は、病院にとっても大きなイメージダウンの要因となるので、再発防止策を策定・実施することが大切です。

    たとえば、コンプライアンス研修を定期的に実施する、医療ミス等についてはチェック体制を充実させるなどの対策が考えられるでしょう。客観的な立場にある弁護士のアドバイスを受ければ、再発防止策を多角的に検討することができます

  4. (4)被害者との示談

    逮捕された医師を守るためには、被害者との示談を病院がサポートすることも考えられます。医師と被害者間での示談が成立すれば、それがよい情状と評価されて不起訴、または量刑が軽減される可能性が高まります。

    被害者との示談は、基本的には逮捕された医師本人が対応すべき事柄ですが、病院としてその医師を欠くことができない場合には、病院がサポートすることも検討すべきでしょう。

    弁護士にご相談いただければ、被害者との示談交渉を全面的に代行いたします。

4、所属医師が逮捕されたら弁護士に相談を

病院の所属医師が逮捕されたら、速やかに弁護士へ相談することをおすすめします。

弁護士は、病院の社会的評判をできる限り維持するため、情報開示・懲戒処分・再発防止策などに関して幅広くアドバイスいたします
また、あらかじめ弁護士と顧問契約を締結すれば、病院内でトラブルが発生した際にもスムーズなご相談が可能です。

病院におけるトラブルの対応や予防策については、弁護士にご相談ください。

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5、まとめ

所属医師が刑事事件の被疑者として逮捕された場合、病院としてはレピュテーションの毀損を防がなければなりません。弁護士のサポートを受けながら、迅速かつ適切な対応に努めましょう。

ベリーベスト法律事務所は、病院内でのトラブルに関するご相談を随時受け付けております。所属医師の逮捕などの不祥事対応に悩んでいる病院経営者の方は、ベリーベスト法律事務所にご相談ください
知見・経験豊富な弁護士が、最善の結果となるようにサポートいたします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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