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2024年01月09日
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不動産売買契約書の注意点・確認ポイントは? 弁護士が解説

不動産売買契約書の注意点・確認ポイントは? 弁護士が解説

不動産の売買は、非常に高額な取引になりますので、トラブルを回避するためにも「不動産売買契約書」という書面を作成するのが一般的です。

不動産売買契約書の作成は、法律上の義務ではありませんが、必要な項目を盛り込んだ契約書を作成しておけば、将来のトラブルを回避することができます。

今回は、不動産売買契約書の記載事項や作成時のポイントなどについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、不動産売買契約書とは

不動産売買契約書とは、どのような書面なのでしょうか。以下では、不動産売買契約書の概要や不動産売買全体の流れについて説明します。

  1. (1)不動産売買契約書とはどんな契約書なのか

    不動産売買契約書とは、土地や家など不動産の売買を行う際に、売り主と買い主との間で取り交わす契約書のことを指します。

    不動産の売買は、非常に高額な取引になりますので、万が一トラブルが発生すると大きな損害が発生するおそれがあります。不動産売買契約書は、不動産売買に関する詳細な条件を明確にし、契約当事者の責務と義務を明示することで、そのようなトラブルを回避することを目的に作成される契約書です。

    なお、契約自体は、売り主と買い主の合意のみで成立しますので、不動産売買契約書がなくても契約自体は有効です。しかし、将来のトラブルを回避するためにも、必ず不動産売買契約書を作成するようにしましょう。

  2. (2)不動産売買全体の流れ

    不動産の売買は、一般的に以下のような流れで進みます。

    ① 売り主側の流れ
    • 不動産査定の依頼
    • 不動産会社との媒介契約の締結
    • 不動産会社による売却活動
    • 売買契約の締結
    • 決済
    • 引き渡し

    ② 買い主側の流れ
    • 物件選び
    • 購入申し込み
    • ローンの事前審査
    • 契約内容の確認、重要事項の説明
    • 売買契約の締結
    • ローンの本審査、契約
    • 融資実行
    • 引き渡し
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2、不動産売買契約書の記載事項と確認ポイント

1章では不動産売買契約書の必要性や流れを確認しました。それでは肝心の契約書には、どのような事項を記載する必要があるのでしょうか。以下では、不動産売買契約書の記載事項と確認のポイントについて説明します。

  1. (1)不動産売買契約書の記載事項

    不動産売買契約書の主な記載事項としては、以下のものが挙げられます。

    ① 売買物件の表示
    売買契約の対象となる不動産を特定するために必要になる項目です。
    取引対象となる不動産は、登記事項証明書の記載に基づいて正確に記載する必要があります。

    ② 売買代金、手付金の額、支払日
    売買代金の金額や支払い時期について記載します。売買代金の支払いは、不動産の引き渡しと同時に行うのが一般的ですが、契約内容によっては、売買契約から引き渡しまでの間に中間金を支払うこともあります。

    ③ 所有権の移転と引き渡し
    不動産の所有権の移転と引き渡しは、同時に行うのが一般的です。契約書に記載されている時期に誤りがないかどうかをしっかりと確認しておきましょう。

    ④ 公租公課の清算
    不動産売買における公租公課とは、固定資産税や都市計画税などの土地建物にかかる税金のことを指します。固定資産税や都市計画税は、その年の1月1日時点の所有者に対して、1年分が課税されますので、売り主と買い主の間で公租公課の負担を決めなければなりません。

    一般的には、引き渡し日までの税金は売り主が、引き渡し日以降の税金は買い主が負担することになります。

    ⑤ 反社会的勢力の排除
    売買契約の当事者が反社会的勢力ではない旨を確認する条項です。

    ⑥ ローン特約
    ローン特約とは、買い主が不動産購入にあたってローンを利用する場合において、何らかの理由でローンの利用ができなかったときは、売買契約を解除することができるという特約です。
    買い主にとっては、違約金なしで解除するために重要な条項となります。

    ⑦ 負担の消除
    負担の消除とは、所有権が移るまでに、抵当権などの担保権・賃借権などの用益権など、あった場合に完全な所有権の妨げになる権利をすべて消すと約束する条項です。

    ⑧ 付帯設備などの引き渡し
    土地や建物には、庭木・庭石、エアコン、給湯器、照明などの付帯設備が存在します。そのような付帯設備を買い主に引き継ぐ場合には、対象となる付帯設備を明確にしておくことが大切です。

    ⑨ 手付け解除
    手付け解除とは、相手方が履行に着手するまでの間であれば、売り主は受け取った手付金を倍返しすることで、買い主は支払った手付金を放棄することで契約を解除することができます。
    売買契約の際に支払う手付金の金額によって、手付け解除の容易性が変わってきますので、慎重に検討することが大切です

    ⑩ 引き渡し前の物件の滅失および毀損
    不動産売買契約を締結後、引き渡しまでの間に目的物である不動産が自然災害などで滅失・毀損した場合の扱いを定めます。
    一般的には、売り主が目的物である不動産の修復をしたうえで引き渡しを行います。

    ⑪ 契約違反による解除
    売り主または買い主に契約条項違反があった場合には、債務不履行を理由として不動産売買契約を解除することができます。どのような場合に契約の解除になるのか、契約の解除になった場合の違約金はいくらなのかを定めます。

    ⑫ 契約不適合責任(瑕疵(かし)担保責任)
    契約不適合責任とは、引き渡した目的物に種類、品質、数量について契約内容に適合しないところがあった場合に売り主が負担する責任です。以前は、「瑕疵担保責任」と呼ばれていましたが、法改正により「契約不適合責任」という名称に変更されました。

    契約不適合責任の範囲や期間は、特約で別途取り決めることもできますので、不利な内容になっていないかどうかをしっかりと確認しましょう。

    ⑬ 特約事項
    売り主と買い主との間で、特別な定めをした場合には、特約事項として記載します。
  2. (2)収入印紙の貼付と契約書の保管

    不動産売買契約書には、印紙税が課されるため、契約金額に応じた収入印紙の貼付が必要になります。
    不動産売買契約書は、売り主と買い主の双方で保管しますので、2部作成するのが一般的です。収入印紙も作成した不動産売買契約書すべてに貼付しなければなりませんので、それぞれが保管する契約書の収入印紙は、売り主および買い主が各自で負担します。

  3. (3)不動産売買契約書を作成するときの流れ

    不動産売買契約書を作成するときの一般的な流れは、以下のようになります。

    ① 不動産仲介業者の選定
    不動産の売買は、売主と飼い主との間で直接取引することもありますが、不動産仲介業者を介して行うのが一般的です。そのため、まずは、不動産売買を仲介してもらう不動産仲介業者を選定します。

    ② 不動産仲介業者による不動産売買契約書の作成
    不動産売買を不動産仲介業者に依頼した場合は、不動産仲介業者が不動産売買契約書を作成します。そうした場合には、一般的な不動産売買契約書のひな型がありますので、それを利用するケースが多いです。

    ③ 不動産売買契約書のチェック
    契約当事者は、不動産仲介業者が作成した不動産売買契約書の内容に問題がないかどうかをチェックします。ご自身だけでは正確にチェックすることができないという場合には、弁護士に依頼することも検討しましょう。

    ④ 不動産売買契約の締結
    不動産売買契約書の内容に問題がないことが確認できたら、不動産売買契約書に売り主および買い主がそれぞれ署名及び押印して、不動産売買契約の締結を行います。

3、不動産売買でトラブルになった裁判例を解説

ここまで不動産売買契約書の必要性や記載事項、契約締結の流れなどについて解説してきました。それでは、契約書の締結に問題があった場合、どのようなトラブルになるのでしょうか。以下では、不動産売買でトラブルになった裁判例を紹介します。

  1. (1)契約不適合責任の免責特約の有効性が問題となった裁判例(東京地裁平成7年12月8日判決)

    ① 事案の概要
    買い主(X)は、公園事業用地として売り主(Y)に売却した土地の代替地として、Yから本件土地を購入しました。しかし、建物の建設工事を開始したところ、本件土地のほぼ全域からレンガ、コンクリート、松くいなどが発見され撤去しなければならない状態でした。
    そこで、Xは、Yに対して、瑕疵担保責任(現在の契約不適合責任)に基づいて損害賠償を求める訴訟を提起しました。
    なお、契約書には、売り主の瑕疵担保責任を免除する旨の特約が付されていました。

    ② 裁判所の判断
    裁判所は、本件契約には瑕疵担保責任を免除する旨の特約があること、契約締結時にXはYから当該特約についての説明を受けていることなどを理由として、瑕疵担保責任を免除する旨の特約は有効であると判断しました。その結果、Xの請求は棄却となりました。
    このように、契約不適合責任(瑕疵担保責任)の免責特約については、買い主が合意内容を十分に理解していることにより有効とされうることから、売り主としてはその裏付けをあらかじめ意識する等の注意が必要です。

  2. (2)現状有姿特約の解釈が問題となった裁判例(東京地裁平成28年1月20日判決)

    ① 事案の概要
    買い主(X)は、売り主(Y)から賃貸マンション(築後29年、鉄筋コンクリート造り3階建て)を購入し、引き渡しを受けました。本件売買契約書には、「売買建物および設備や備品は、経年変化により老朽化・機能低下がみられ、これを原因として補修・修理などが必要になり費用がかかる可能性がある事情が存することを了承し、その事情が存する状態で買い受ける」という現状有姿特約が付されていました。

    その後、Xは、本件賃貸マンションに床板や給水管などの腐食があることを発見したため、Yに対して、損害賠償を求める訴訟を提起しました。

    ② 裁判所の判断
    裁判所は、一般に現状有姿売買とは、契約後引き渡しまでの間に、目的物の状況が変わったとしても、引き渡し時の状態で引き渡す債務を負担する売買であるとし、経年劣化によらない瑕疵が判明した場合には、瑕疵担保責任を負担すると判断しました。

    そのうえで、本件瑕疵の一部は、経年劣化によるものとはいえないものもあるとして、Xの請求の一部を認めました。
    このように、現状有姿特約があったとしても、契約不適合責任が免除されるわけではありませんので注意が必要です。

4、不動産売買トラブルについてのご相談は弁護士へ

不動産売買契約書についてここまで解説してきました。記載事項に十分気を付けていたとしても3章のようにトラブルとなってしまう例もあります。

そのため、不動産の売買をお考えでトラブルが心配な方は、まずは弁護士にご相談いただくことをおすすめします。

  1. (1)不動産の権利関係や用途制限の有無を確認できる

    不動産の購入を検討されている方は、何らかの用途で不動産の利用または活用を考えている方がほとんどでしょう。しかし、抵当権や賃借権が設定されていたり、用途制限が設定されていたりする不動産では、希望どおりの利活用ができない可能性があります。

    この場合、当事務所であれば、建築士や土地家屋調査士などとも連携しながら、不動産の権利関係や用途制限の有無を正確に判断することが可能です。

  2. (2)こちらに不利な条件があった場合に気が付くことができる

    不動産の売買にあたっては、不動産売買契約書の作成が必要になります。不動産売買契約書は、契約内容を明確にし、契約後のトラブルを防止するという効果が期待できますが、それはあくまでも、適切な内容の契約書が作成された場合です。

    契約書に不利な条項が設けられていたり、あいまいな条項があった場合には、不動産売買契約書を作成したとしても、トラブルを避けることはできません。むしろ不動産売買契約書の内容が原因でトラブルが発生する可能性もあります。

    弁護士であれば、不動産売買契約書の法的な問題点をチェックすることができますので、不動産取引におけるリスクを最小限に抑えることが可能です。不動産取引に関する知識や経験がない方では、複雑な契約条項を正確に理解することは難しいので、まずは弁護士に相談することをおすすめします。

  3. (3)万が一トラブルになった場合でも、弁護士であれば代理人となり裁判まで対応可能

    不動産売買においてトラブルが生じると、当事者同士の話し合いがまとまらず、裁判に発展することも珍しくありません。

    弁護士であれば、裁判になったとしても、本人の代理人として対応することができますので、専門的かつ複雑な訴訟手続きをすべて任せることが可能です。

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5、まとめ

不動産売買をする際には、将来のトラブルを回避するためにも不動産売買契約書を作るようにしましょう。その際には、法的に問題のない契約書を作成することが大切です。そのためには、弁護士のアドバイスが不可欠になりますので、まずは弁護士にご相談ください。

ベリーベスト法律事務所には、司法書士、税理士、土地家屋調査士も在籍していますので、多角的観点から不動産取引の安全を図ることができ、他士業との連携によりワンストップで不動産取引を進めることができます。

不動産売買をお考えの方は、当事務所までお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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