企業法務コラム
自社よりも小規模の事業者を相手方とする取引については、下請法(下請代金支払遅延等防止法)が適用されることがあります。
下請法違反を犯すと、公正取引委員会による調査を経て勧告を受ける可能性があるほか、違反行為によっては刑事罰の対象にもなり得ます。もし取引先から下請法違反を告発されたら、弁護士のサポートを受けて適切に対応しましょう。
本記事では、下請法違反に当たる親事業者の行為や、下請法違反で告発された場合の対処法などをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
下請法は、下表の条件を満たす取引について適用されます。
取引の種類 | 親事業者(委託者側)の資本金額 | 下請事業者(受託者側)の資本金額 |
---|---|---|
|
3億円超 | 3億円以下 |
1000万円超3億円以下 | 1000万円以下 | |
|
5000万円超 | 5000万円以下 |
1000万円超5000万円以下 | 1000万円以下 |
下請法が適用される取引では、親事業者は下請法に基づく義務を順守する必要があり、かつ禁止行為をしてはいけません。下請法に違反した場合は、公正取引委員会の勧告や刑事罰の対象となる可能性があります。
下請法が適用される取引について、親事業者は以下の義務を負います。
下請法が適用される取引について、親事業者は以下の行為をしてはいけません。
下請法違反の疑いがある親事業者は、公正取引委員会による調査の対象となります。
調査の結果、違反が発覚すると、公正取引委員会から是正勧告を受ける可能性があります。是正勧告に従わないと、独占禁止法違反(不公正な取引方法)によって課徴金納付命令を受けることもあり得ます(下請法第8条参照)。
また、以下の行為については刑事罰の対象とされています。法定刑はいずれも「50万円以下の罰金」が科されます(下請法第10条、第11条)。法人の代表者・代理人・使用人その他の従業者による違反については、法人にも同様に「50万円以下の罰金」が科されます(下請法第12条)。
取引先から下請法違反で告発された場合、公正取引委員会による調査が行われることがあります。
公正取引委員会による下請法違反の調査の内容は、以下のとおりです(下請法第9条第1項)。
親事業者は、公正取引委員会による報告の要求および検査を拒否してはなりません。報告の拒否・虚偽報告・検査妨害などについては刑事罰の対象となります(下請法第11条)。
公正取引委員会による下請法違反の調査は「行政調査」であり、「犯則調査」ではないとされています(下請法第9条第5項)。
行政調査とは、行政上の監督処分の要否を判断するために行われる調査です。これに対して犯則調査は、刑事訴追の要否を判断するために行われる調査です。
行政調査である公正取引委員会の調査においては、犯則調査とは異なり、物件の差し押さえなど直接強制の手段が認められていません。しかし、調査に応じない場合は刑事罰が科されるため、誠実に対応することが求められます。
公正取引委員会から下請法違反に関する調査の連絡を受けた企業は、状況に応じて以下の対応を行いましょう。
まずは違反の疑いを指摘された取引の内容を精査し、事実確認を行う必要があります。
取引に関与した従業員などに対しても適宜事情聴取を行い、本当に違反があったのか、どの程度重要な違反であるのかなどを調査しましょう。
下請法違反に当たるかどうかやどのように対応すべきかなどの判断については、判断しにくい事柄もあるため、法律の専門家である弁護士にもアドバイスを求めましょう。
弁護士にご連絡いただければ、公正取引委員会に対する報告内容や、立ち入り調査時の対応についてもアドバイスしてもらえます。また、必要に応じて、立ち入り調査時に、弁護士が立ち会うこと考えられます。
公正取引委員会による立ち入り調査が行われる場合は、下請法の対象取引に関する事情を知っている担当者及び責任者を同席させたうえで、調査官の指示に従って協力しましょう。
検査の拒否・妨害・忌避は刑事罰の対象となるため、誠実に調査へ協力することが大切です。
下請法違反によって厳しい処分が予想され、その事実が報道されることが見込まれる場合は、対応状況を対外的に発信することも検討しましょう。
適切に情報開示を行うことが、株主や取引先との関係で信頼回復につながります。
その際、情報開示の内容や方法等、弁護士にご相談いただくことで、より適切な対応を検討していくことも可能となります。
下請法に違反した場合、公正取引委員会による調査・勧告や罰則の対象となる可能性があります。また、下請法違反の事実が報道されれば、会社のレピュテーションリスク(会社の評価が毀損されるおそれ)もあるので要注意です。
下請法違反の疑いがある場合や公正取引委員会の調査を受けることになった場合は、早急に弁護士への相談をおすすめします。弁護士は、調査への対応方針や下請法違反の解消方法、適切な情報開示の方法などについて、会社の実情に合わせたアドバイスやサポートを行います。
また、下請法違反にとどまらず、会社はさまざまな不祥事・トラブルのリスクに備えておく必要があります。弁護士は、コンプライアンス強化の体制整備についてもサポートいたしますので、お早めに弁護士へご相談ください。
取引先に下請法違反を告発されると、公正取引委員会による調査を経て、勧告処分や刑事罰を受けるおそれがあります。下請法違反で告発される可能性がある場合は、速やかに弁護士にご相談ください。
ベリーベスト法律事務所は、企業の危機管理に関するご相談を随時受け付けております。下請法違反その他の不祥事対応については、ベリーベスト法律事務所の危機管理チームにご相談ください。
ベリーベスト法律事務所の危機管理チームでは、東京地方検察庁特別捜査部出身の元検事、公認不正検査士資格を有する元検事を含む複数の元検事や企業勤務経験を有する弁護士、裁判所書記官出身の弁護士、税理士などが所属しており、さまざまな状況に対応した弁護、アドバイスをさせていただきます。
社内で不正行為が発生した場合は、迅速かつ適切な対応が求められます。しかし、その際はどのように対応していくべきなのかが分からない、という企業も少なくありません。不正や不祥事については、まず事実関係を正…
中古車関連事業を展開する企業が、常習的に自動車の修理代金や保険金などを水増しして請求していた事案が大きく報道され、厳しい批判を浴びました。水増し請求(不正請求)は重大なコンプライアンス違反であり、発…
取締役等が任務に背いて株式会社に損害を与えた場合、特別背任罪が成立します。特別背任罪が疑われるときは、会社側は、可能な限り、早急に刑事告訴を検討しましょう。また、当該取締役等の解任や損害賠償請求、ス…
お問い合わせ・資料請求