企業法務コラム

2024年04月04日
  • 社内不正調査

不正や不祥事における社内不正調査とは? 流れや企業が注意すべき点

不正や不祥事における社内不正調査とは? 流れや企業が注意すべき点

社内で不正行為が発生した場合は、迅速かつ適切な対応が求められます。しかし、その際はどのように対応していくべきなのかが分からない、という企業も少なくありません。

不正や不祥事については、まず事実関係を正確に把握した上で、懲戒処分や再発防止策の策定、ステークホルダーに対する説明などを行うことが重要です。

本コラムでは、社内不正調査の目的や調査を行うときの流れ、調査チームが果たす役割、注意点などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、社内不正調査とは? 調査の必要性と目的

社内不正調査とは、社内で発生した違法行為などの不正について、事実関係の調査・対応・再発防止などを行う一連のプロセスです。

社内不正調査を適切に行うことは、不祥事による企業の損害を最小限に食い止める観点から、非常に重要な事柄です。
特に以下の3つの目的を果たせるかどうかは、社内不正調査の成否に大きく左右されます。

それぞれについて、詳しく説明していきます。

  1. (1)ステークホルダーに対する説明責任の履行

    社内での不祥事が発生すると、株主・債権者・取引先・従業員・関係当局などのステークホルダーに対して大きな不安ないし不信感を与えます。

    その結果、企業の評判が低下してステークホルダーが離れ、業績が悪化することにつながりかねません。また、監督官庁などの関係当局から行政処分を受けるような場合には、その内容次第で、業績に直接的な影響を及ぼすこともあり得ます。

    社内不正調査には、事実関係を正確に把握した上で適切な対応を行い、その経過をステークホルダーに対して説明できるようにする目的があります。適切な社内不正調査を経て、ステークホルダーに対する説明を丁寧に尽くせば、企業の評判低下や業績悪化は最小限に食い止められるでしょう。

  2. (2)懲戒処分等の根拠となる証拠の確保

    社内で不祥事を起こした役員については解任など、従業員に対しては懲戒処分などを検討すべきです。しかし、十分な根拠がなく解任や懲戒処分といった対応を行うと、企業は損害賠償責任を負ったり、解雇が無効となったりするリスクを負います。

    そのため、解任や懲戒処分などを行う前には、不祥事に関する十分な証拠を確保することが欠かせません。社内不正調査には、役員の解任や従業員の懲戒処分などを行うにあたり、根拠となる証拠を確保する目的もあります。

  3. (3)再発防止策の策定

    社内で不祥事が発生したら、同じような不祥事が再発しないようにすることが非常に重要です。
    社内不正調査によって不祥事の経緯を明らかにすれば、企業として改善すべき点が明確化され、再発防止策の策定に役立ちます

    なぜ不祥事が発生したのか、どうしたら再発防止につながるのかをよく考え、ときには弁護士などに相談するようにしましょう。

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2、社内不正調査の流れ

社内不正調査は、以下の流れで行うのが一般的です。

上記項目の順番に則って、具体的に行うことを解説していきます。

  1. (1)調査チームを組織する

    まずは、社内不正調査を行う担当者を決めて、社内調査チームを組織しましょう。

    調査チームのメンバーは、不祥事の当事者とは直接の利害関係がないメンバーを中心に構成すべきです。法務・コンプライアンス総務・経理・人事部門などのスタッフに加えて、外部の有識者を調査チームに加えることが望ましいでしょう。

    また、具体的な調査をするためには、不祥事の当事者の部署をよく知る方の協力を得る必要が生じることもありますが、その見極めは、慎重に行う必要があります。

    調査チームが行うべきこととしては、不正に関する調査をするだけにとどまりません。行政機関への対応や交渉、調査に基づく経営改善についての提言まで、重要な役割を果たすこともあります。
    このような事柄を的確に遂行していくためにも、弁護士等の専門家を調査チームに加えたり、相談・依頼したりすることがおすすめです。

  2. (2)不正の証拠を確保する

    社内不正調査の大きな目的は、不正についての客観的な証拠を確保することです。

    不祥事に関与したと思われる役員や従業員のメール履歴を調べたり、不祥事に関連する取引の経緯を調べたりして、できる限り有力な証拠の確保に努めましょう。

    パソコンやサーバーに保存されたデータを保全するためには、デジタルフォレンジックの専門家に調査への参加を求めることも有効です。

    また、その前提として、日ごろから、私物と会社の所有物との区別を明確にするなどの措置も検討する必要があります。

  3. (3)関係者に対してヒアリングを行う

    不祥事に関する証拠の収集と並行して、関係者に対するヒアリング調査を行います。
    不祥事の当事者に加えて、同じ部署の上司や同僚などに対してもヒアリングを行い、事実関係をできる限り詳しく明らかにしましょう。

  4. (4)懲戒処分等を検討・実施する

    不祥事を起こした役員や従業員については、解任・懲戒処分といった処分の検討を行うことになります。

    役員については、辞任を求めるほか、株主総会決議によっていつでも解任できます(会社法第339条第1項)。ただし、正当な理由なく役員を解任した場合には、企業は役員の損害を賠償しなければなりません(同条第2項)。

    従業員に対して懲戒処分を行うためには、就業規則上の懲戒事由に該当することや、懲戒権の濫用にあたらないことなどが要件となります。
    特に、存在しない事実に基づく懲戒処分や、従業員の行為の性質・態様等に照らして重すぎる懲戒処分は無効となる可能性が高いため、注意が必要です。

    役員の解任や従業員に対する懲戒処分などを行う際には、事前に十分な事実関係の調査を行った上で、それらの処分に十分な理由があり、かつ処分の内容が不祥事の内容に比して過度ではないかについて慎重に検討すべきです。このためにも、法務部門や弁護士との連携が必要になります。

  5. (5)再発防止策を検討・実施する

    不祥事の全貌が明らかになったら、同じような不祥事が発生しないように再発防止策を講じましょう。

    再発防止策を検討する際には、不祥事の過程を細かく分けて、各段階で不適切なオペレーションが行われていなかったかどうか検証することが大切です。改善すべきポイントが見つかったら、現実的な改善策を考案した上で、その内容を業務マニュアルなどへ反映しましょう。

  6. (6)プレスリリース等によって情報を発信する

    社内不正調査の過程については、プレスリリース等によって情報を発信することも大切です。なお、重要な株主、取引先や監督官庁などに対しては、別途、個々への連絡が推奨されることもあります。

    情報発信のタイミングが遅れると、株主をはじめとするステークホルダーの不安が増大するだけではなく、マスメディアやSNSなどを介して、臆測や事実に基づかない風説が流されるリスクが存在します。その結果として、企業の評判が大きく毀損する恐れがあるため、注意しましょう。

    また、不祥事の内容によっては、監督官庁の行政処分が予見されることがあります。それを恐れて、無用な事実の隠ぺいや報告の遅延などで行政処分を拡大させることのないように、監督官庁との緊密なコミュニケーションも必要になると考えられます。

    情報発信のタイミングとしては、少なくとも、まず初期段階において調査に着手したことを発表し、調査が一段落した段階で詳しい調査経過を発表することは必須と考えられます。そのほか、ステークホルダーの反応を踏まえながら、その不安を解消できるように都度、情報発信を行いましょう。

    そして、調査チームは、最終的に調査が終了した時点で必ず報告書を作成し、不祥事の発生原因について詳細かつ具体的に検討するとともに、その反省に基づき再発防止策を経営層に提案することが求められます。

    情報発信のタイミングや、報告書の内容等については判断が難しい場合もありますので、弁護士に相談しながら決めることがおすすめです。

  7. (7)管理体制を改善・構築して社会的信頼性を高める

    調査結果の外部に対する情報発信にとどまらず、再度同様の不祥事を起こさないための社内管理体制を整えていかなければなりません。

    社内管理体制を整備していくことは、社内のガバナンスの向上にとどまらず、社会的信頼性の向上やさらなる企業発展につながりますので、調査チームが担う再発防止策の提案は重要といえます。
    管理体制の運用を的確かつ適法に進めるためにも、迷われる際には弁護士に相談するとよいでしょう。

3、社内不正調査における企業の注意点

社内不正調査を行うにあたっては、以下の4点に注意しつつ対応を進めましょう。


  1. (1)弁護士など、外部の第三者を調査チームに加える

    社内不正調査を担当する調査チームは、不祥事の当事者や関係者から独立した陣容とすることが望ましいです。調査チームの独立性が確保されていれば、社内の利害関係にとらわれず調査を進められるほか、対外的にも調査の透明性・客観性をアピールできます。

    役員や従業員だけで調査チームを構成することは、独立性の観点から不十分な対応と言わざるを得ません。弁護士など外部の第三者を調査チームに加えて、経営層とも十分に対峙できる陣容を備えることで、独立性を補強しましょう。
    また、社内における調査チームの設置だけでなく、場合によっては、より第三者的な立場が強い第三者委員会の設置も検討すべき場合があります。

  2. (2)公益通報をした従業員等を保護する

    企業が設置する内部通報窓口(社内窓口・社外窓口)に対して、違法行為の公益通報を行った従業員については、解雇その他の不利益な取り扱いをすることが禁止されています(公益通報者保護法第3条~第5条)。

    公益通報をした従業員を不利益に取り扱うと、勧告や公表などの行政処分の対象となる恐れがあることにご留意ください(同法第15条、第16条)。企業としては、公益通報者保護法の規定を踏まえて、公益通報者の保護を徹底しなければなりません。

  3. (3)秘密裏かつ迅速に調査を行う

    社内不正調査は、証拠の隠滅等を防ぐため、当事者に対しては秘密裏に進めるべきです。調査対象者に対するヒアリング等を行う前の段階で、客観的な証拠の収集については終えておくことが望ましいでしょう。パソコンやサーバー等、デジタル機器上の証拠の保全には、デジタルフォレンジック技術の利用が有効です。

    また、不正行為による企業の損害を最小限に食い止めるためには、迅速に調査を進めることも重要です。弁護士のサポートを受けながら、機動的に調査・検討を行いましょう。

  4. (4)適時かつ必要十分な内容で情報発信を行う

    ステークホルダーに向けた情報発信は、適時かつ必要十分な内容で行うことが大切です。情報発信をする際に伝えるべき内容が不足していると、ステークホルダーの信用を失いかねません。

    ステークホルダーに対して伝達するべき情報としては、事実関係が曖昧になっている事柄ではなく、その時点で明らかになっている事実のみを公表するようにしましょう。不必要な情報まで伝えてしまうと、根拠のない推測を生む恐れがあります。

    このように、情報発信を行うにあたっては、タイミングだけでなく情報量などに関するバランス感覚も重要です。弁護士に相談することで、どのような内容で情報発信を行えばよいのか、親身なアドバイスを受けることができます。

4、社内不正調査については弁護士に相談を

社内で不祥事が発生した際には、社内不正調査について弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士は、不祥事の事実関係を正確に把握するため、実施すべき調査についてアドバイスやサポートを行います。さらに、会社側の協力の下で、実際の調査を弁護士が行う必要があることもあります。
また、弁護士が調査チームに加わることで、ステークホルダーに向けた情報発信や再発防止策の検討などについても、透明性を確保できます。

社内不正調査の必要性が生じた際には、お早めに弁護士までご相談ください。

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5、まとめ

社内不正調査を行うにあたっては、不祥事の当事者や経営陣から独立した調査チームを組織することが大切です。弁護士を調査チームに加えれば、調査の客観性・透明性を確保できるほか、ステークホルダーにも対応の誠実さをアピールできます

ベリーベスト法律事務所の危機管理チームは、企業の不祥事対応に関するご相談を随時受け付けております。社内で発生した不祥事の調査が必要となった企業は、お早めにベリーベスト法律事務所へご相談ください。
知見・経験豊富な弁護士が、最良な結果になるように親身にサポートいたします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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