企業法務コラム
会社(企業)にとって、インターネットでの書き込みによる被害は、昨今ますます無視できない状況になっているといえます。就職サイト、転職サイト、匿名掲示板などで誹謗中傷の書き込みがされてしまうと、会社にとってさまざまな悪影響が生じます。
誹謗中傷の書き込みを知った場合には、早期に適切な対応をとることが求められますが、具体的にどのような対策をとれるのでしょうか。
今回は、誹謗中傷の加害者に対して問える法的な手段(刑事・民事)や、会社がとるべき基本的な対応、弁護士に相談すべき理由などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
インターネット上で会社を誹謗中傷された場合には、以下のような影響やリスクが生じます。
インターネット上で会社の商品やサービスに対する誹謗中傷が広がると、顧客は、商品やサービスの価値や信用性に疑問を抱き、購入や利用を控えるなどの行動にでる可能性があります。誹謗中傷を放置していると、たとえその情報が事実無根であったとしても、あっという間に情報が広がり、顧客減少による売り上げ低下につながってしまうリスクが高まります。
会社への誹謗中傷は、顧客など外部への影響だけでなく、従業員など内部への影響も与えます。根拠のない誹謗中傷であったとしても、自社への悪いうわさやネガティブな情報が広まると、従業員のモチベーションが低下してしまいます。従業員のモチベーションが低下すると、生産性の低下による売り上げの減少や離職者の増加などの悪影響が生じる可能性があります。
就職情報サイトや転職情報サイトに会社を誹謗中傷する書き込みがあると、就職・転職希望者は、会社に対してネガティブな印象を抱き、選考の取りやめや内定の辞退などをする可能性があります。会社への誹謗中傷を放置すると優秀な人材が集まらないといった、会社への悪影響が生じるリスクが高まります。
会社への誹謗中傷に対して、早めに対応しようと焦るあまり、反論を書き込むなど不適切な対応をしてしまうと、炎上につながるリスクもありますので注意が必要です。誹謗中傷への対応は、インターネットトラブルの実績がある弁護士など、冷静な第三者に相談しながら対応することをおすすめします。
会社への誹謗中傷を行う相手に対しては、以下のような法的責任を問うことができます。
刑法などの法律で定められた犯罪行為をすると、逮捕されたり、刑罰が科されたりすることがあります。このような刑事上の責任を、刑事責任といいます。インターネット上で会社への誹謗中傷をした場合には、以下のような犯罪が成立する可能性があります。
① 名誉毀損(きそん)罪
不特定または多数者が閲覧する可能性のあるインターネット上の掲示板などに会社の社会的評価を低下させるような事実を書き込んだ場合には、名誉毀損罪が成立する可能性があります(刑法230条1項)。
たとえば、以下のような誹謗中傷は、名誉毀損罪に該当する可能性が高いでしょう。
なお、名誉毀損罪の法定刑は、「3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金」と定められています。
② 業務妨害罪
虚偽の情報を流して会社の業務を妨害した場合には、業務妨害罪が成立する可能性があります(刑法233条)。例えば、客観的事実に反して、以下のような書き込みがなされた場合です。
なお、業務妨害罪の法定刑は、「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」と定められています。
③ 信用毀損(きそん)罪
虚偽の情報を流して会社の経済的側面における社会的評価を低下させた場合には、信用毀損罪が成立する可能性があります(刑法233条)。たとえば、客観的事実に反して、以下のような書き込みがされた場合です。
なお、信用毀損罪の法定刑は、「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」です。
会社への誹謗中傷によって、会社の売り上げが低下したり、離職者が増え入社希望者が減少したりするなどの損害が発生した場合には、誹謗中傷の書き込みをした人に対して、損害賠償請求をすることができる可能性があります(民法709条)。
ただし、誹謗中傷により損害が生じたことの客観的事実は、被害者である会社側で立証していかなければなりません。誹謗中傷と損害の発生との因果関係の立証は、困難なケースも多いため、適切な損害を請求するにあたり弁護士のサポートが必要になります。
誹謗中傷を受けた会社では、まずは、以下のような対応を検討しましょう。
会社に対する誹謗中傷の書き込みがなされている疑いが生じた場合には、すぐに事実確認を行い、実際の書き込みの有無及び内容を確認します。誹謗中傷の書き込みがあることが明らかになった場合には、その後の法的責任追及のために、当該書き込みを印刷するなどして証拠化しておくようにしましょう。
サイト運営者が特定できている場合には、すぐに削除依頼を行うようにしましょう。X(旧Twitter)やInstagramなどのSNS、5ちゃんねるなどの掲示板など一般的なサイトであれば、削除の条件や依頼フォームが公開されているので、手順に基づいて申請しましょう。
削除依頼は個人や会社の担当者が行うこともできますが、この時点で弁護士を窓口としておけば、スムーズな対応が期待できます。
また、サイト運営者が削除に応じてくれない場合でも、弁護士を介せば迅速に裁判所に削除における「仮処分の申し立て」へと進めることができます。仮処分は、通常の裁判よりも早く結果がでるため、誹謗中傷の書き込みの拡散が進むリスクを減らすことができます。
誹謗中傷の書き込みが匿名で行われていた場合には、書き込み自体からは、書き込んだ人を特定することができません。書き込みをした人の法的責任を追及するには、その人を特定しなければなりませんので、発信者情報開示請求を行う必要があります。
発信者情報開示請求とは、プロバイダに対して、誹謗中傷の書き込みをした人の住所、氏名、電話番号などの情報開示を求める手続きで、裁判手続きを介さず請求する(任意開示)
ことが可能です。
ただし、任意開示では、プロバイダが情報の開示請求に応じないケースも少なくないため、裁判所を介した手続きが必要になり、弁護士のサポートが必要になります。
会社の社員による誹謗中傷であることが明らかになった場合には、当該社員に対する懲戒処分を検討します。会社への誹謗中傷は、刑法上の犯罪に該当する可能性がある行為であり、企業秩序を乱す行為であるといえます。
ただし、どのような処分が相当であるかは、実際の書き込みの内容や頻度によって異なってきますので、処分の選択は慎重に判断する必要があります。
なお、退職した元社員による誹謗中傷であった場合には、懲戒処分などの労務措置での対応はできませんので、損害賠償請求といった民事上の責任を追及していくことが考えられます。
誹謗中傷でお悩みの企業は、弁護士に相談することをおすすめします。
会社への誹謗中傷があった場合には、被害の拡大を防ぐためにも早期に適切な対応をとることが求められます。対応を誤るとさらに被害の拡大を招いたり、炎上につながったりするリスクがあります。
誹謗中傷に適切に対応するには、法的知識や経験が不可欠となりますので、インターネットトラブルの解決実績がある弁護士へ相談しましょう。弁護士は会社がとるべき適切な措置についてアドバイスし、スピーディーな対応で被害拡大の軽減に努めます。
誹謗中傷の書き込みの削除や書き込みをした人への法的責任の追及をするためには、仮処分や裁判といった法的手続きが必要になります。
弁護士に依頼すれば、迅速かつ適切にこれらの法的続きを進めることができます。そのため日常の業務に支障を生じさせることなく、加害者への法的責任追及が可能になります。
会社への誹謗中傷は、会社のブランドイメージの低下だけでなく、放置すると売り上げの減少など大きなリスクが生じる可能性があります。迅速かつ適切に対応する必要があります。弁護士に相談・依頼することで、どのような対策を講じるべきか適切な判断ができ、会社に生じる悪影響やリスクをスピーディーに抑えることができます。
ベリーベスト法律事務所では、会社に対するインターネットからの誹謗中傷、情報開示請求、損害賠償請求など、さまざまなケースで実績をもつ弁護士が在籍しております。インターネット上の情報は拡散が早いため、迅速な対応が重要です。会社への誹謗中傷の書き込みを発見したら、早めにベリーベスト法律事務所までご相談ください。
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