企業法務コラム

2024年05月13日
  • カスハラ

企業が行うべきカスタマーハラスメント(カスハラ)対処法

企業が行うべきカスタマーハラスメント(カスハラ)対処法

近年、顧客や消費者からの「カスタマーハラスメント(カスハラ)」が増えてきています。カスハラの中でも、インターネット上での誹謗中傷や風評被害は、特に注意が必要です。

これらの被害に対して適切な対応をとらなければ、企業のブランドイメージの低下や被害拡大を招き、取り返しのつかない損害が生じるおそれもあります。

本コラムでは、押さえておくべきカスハラの基礎知識や企業が行うべきカスハラへの対処法を、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、カスタマーハラスメント(カスハラ)の基礎知識

カスタマーハラスメント(カスハラ)とは、どのような行為をいうのでしょうか。最初に、押さえておきたいカスハラの基礎知識を説明します。

  1. (1)カスハラとは

    カスタマーハラスメント(カスハラ)とは、取引先や顧客などからの不当な要求・理不尽なクレームなどを指す言葉です。

    SNSが普及してから誰でも気軽に情報発信ができる世の中になり、顧客や消費者の発言力が強まりました。SNSでの商品やサービスの口コミ・評価などは、売り上げに直結するほどの多大な影響力があり、顧客からの不当な要求や理不尽なクレームに屈してしまう企業もあるでしょう。

    しかし、企業にはさまざまなリスクが生じてしまうため、カスハラへの適切な対応が求められます。

  2. (2)カスハラに該当する行為

    カスハラに該当する行為にはさまざまなものがありますが、カスハラの態様によって、主に以下のような7種類に分類することができます。

    ① 時間拘束型
    長時間にわたり従業員を拘束する、居座る、長電話をするというカスハラです。

    ② リピート型
    理不尽な要求を通すために何度も来店する、繰り返し電話をする、会うことを要求するというカスハラです。

    ③ 暴言型
    怒鳴る、人格を否定するなど侮辱的発言を行うカスハラです。

    ④ 脅迫型
    物を壊す・殺すなどといった発言や、マスコミ・SNSなどでの暴露を示唆するような脅しによるカスハラです。

    ⑤ 権威型
    しつこく特別扱いを求める、権威を振りかざして自分の要求を通そうとするといったカスハラです。

    ⑥ SNS・ネット誹謗中傷型
    SNSやインターネットで会社の信用や社員の名誉を毀損する情報を公開したり、社員の画像や個人情報を公開したりするカスハラです。

    ⑦ 正当な理由のない過度な要求型
    言いがかりで金銭を求めたり、難癖をつけてキャンセル料の支払いを拒んだりするといったカスハラです。


    このようにカスハラには、侮辱罪や脅迫罪などに該当するケースもあるため、決して放置してはいけません。

2、カスハラに対処することの必要性

企業としてカスハラに適切な対応をしなければ、いくつかの悪影響が生じるおそれがあります。

  1. (1)企業のブランドイメージの低下による業績の悪化

    SNSやインターネットで商品あるいはサービスなどへの不当な口コミ・理不尽な評価が公開されてしまうと、それを見た他の消費者が商品やサービスの内容・質を誤解してしまうおそれがあります。

    SNSやインターネット上の情報はあっという間に拡散されてしまう可能性があり、その内容が虚偽であったとしても、情報の真偽を判断できない多くの消費者は、当該企業に対してネガティブなイメージを抱くことになります
    それにより商品やサービスの買い控えなどの行動が起きれば、業績の悪化などのリスクが生じ得るでしょう。

  2. (2)被害を受けた従業員の離職

    真面目に働く従業員に対して執念深い嫌がらせが行われた場合、対応する従業員は多大な精神的苦痛を被ることになります。
    企業として適切な対応をとることなく放置していると、カスハラ対応をする従業員への負担が増加し、離職という事態につながるリスクが生じます

  3. (3)カスハラ対応への時間の浪費と金銭的損失

    カスハラに対する対応を行わないままでいると、カスハラ被害による現場対応、長時間の電話対応、顧客への謝罪訪問など多くの時間を浪費し続けることになります。

    また、消費者からの理不尽な要求に応じて、商品やサービスの値下げ、迷惑料の支払い、代替品の提供などを行うと、それに伴う金銭的な損失が生じてしまいます。
    企業が理不尽な要求に屈したということがSNSなどで公開されてしまうと、今後も同様にカスハラ被害が生じることも予想されるため、注意が必要です

  4. (4)従業員からの損害賠償請求

    企業には、従業員が安全かつ健康に働くことができるよう職場環境に配慮する義務(安全配慮義務)があります。
    カスハラ対応を放置して、従業員に健康被害などが生じてしまえば、被害を受けた従業員から損害賠償請求をされるリスクがあることにも、留意してください

3、5つのカスハラ対処法|暴言・過剰要求・ネットでの誹謗中傷

企業がカスハラの被害にあった場合の対処法について、解説します。

  1. (1)事実確認を行う

    暴言・過剰要求・ネットでの誹謗中傷などのカスハラが発生したら、まずは正確な事実確認を行うことが大切です。

    消費者からのクレームや要求の中には、商品やサービスの改善につながる正当な内容のものも含まれています。正当なクレームなのかカスハラなのかを見極めるためにも、慎重な事実確認を行いましょう

  2. (2)カスハラの証拠を確保する

    カスハラに対する具体的な対応を実施するためにも、どのようなカスハラがあったのかを証明するための証拠が必要です。

    長時間の電話で理不尽な要求をされたケースでは通話の録音、店舗内での暴言や暴力であれば防犯カメラの映像などが証拠になります。また、SNSやインターネット上での誹謗中傷であれば、具体的な投稿内容や、投稿のURLを保存しておくことも有効です

  3. (3)ネット上の投稿に対する削除請求を行う

    インターネット上の掲示板やSNSなどで名誉毀損や従業員の個人情報掲載のようなカスハラがあれば、直ちに削除請求を行うようにしましょう。

    ネット上の情報が拡散されることで企業のブランドイメージの低下を防ぐためには、それらの情報が掲載された時点で迅速に削除請求を行わなければなりません

    掲示板やSNSでの誹謗中傷があった場合には、掲載先のホームページの運営者(管理人)に削除を求めることになりますが、任意に応じてくれない場合には、仮処分などの法的手段が必要になります。

  4. (4)カスハラの予防策を講じる

    カスハラへの対処はもちろん、この先もカスハラが悪化しないように対策を立てることも必要です。
    カスハラの予防策としては、カスハラ対応マニュアルの作成やカスハラ研修の実施などがありますので、企業の実情に応じて最適な予防策を選択していくとよいでしょう。

  5. (5)刑事告訴を検討する

    カスハラの中には、脅迫罪、侮辱罪、名誉毀損罪、信用毀損罪などの犯罪に該当するものもあります。このような悪質なカスハラに対しては、刑事告訴も検討するとよいでしょう。

    企業がカスハラ行為者に対して厳格な姿勢で対応することが世間に認知されれば、不当なクレームや理不尽な要求をする消費者も減っていく可能性があります

4、ネット上のカスハラを弁護士に相談するメリット

誹謗中傷や風評被害といったネット上のカスハラでお困りの企業は、弁護士に相談することをおすすめします。

  1. (1)カスハラ予防に必要な対策を講じてもらえる

    カスハラの被害が生じると企業イメージの低下、従業員の離職などさまざまなリスクが生じ得るため、カスハラ予防の対策が重要です。

    弁護士は、講師としてカスハラ対策に関する研修を行うことができます。弁護士の研修から実際の事例に基づく具体的な対応を学ぶことで、カスハラ被害抑制につながるでしょう。また、カスハラ対応マニュアルや相談窓口などの整備が不十分な場合には、企業の実情に応じた最適な対応策についてアドバイスを受けることが可能です

  2. (2)SNSやネット上の誹謗中傷に迅速に対応可能

    SNSやネット上での誹謗中傷・風評被害などがあった場合には、さまざまなデメリットを回避するためにも、迅速な対応が必要になります。

    ウェブフォームなどからの削除請求であれば、企業の担当者でも対応できるかもしれません。しかし、投稿の削除を求める仮処分が必要となれば、弁護士でなければ対応が難しいといえます。迅速に情報を削除し、企業の利益を守るには弁護士のサポートが不可欠です。

    また、カスハラにより企業に損害が生じた場合には、カスハラを行った加害者に対する損害賠償請求も可能ですが、SNSやネットで誹謗中傷をしたカスハラ顧客を特定しなければなりません。特定には、発信者情報開示請求という手続きが必要になりますが、これも弁護士のサポートが不可欠です。

5、まとめ

カスハラの中でも、SNSやネット上での誹謗中傷は被害が拡大するおそれがあるため、迅速な対応が求められます。

ベリーベスト法律事務所では、風評被害・誹謗中傷対策の専門チームを設けており、SNSやネット上でのカスハラ問題にも迅速に対応することが可能です。
豊富な知識や経験に基づくカスハラ対策の提案を行うことができますので、風評被害や誹謗中傷対策に関してお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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