企業法務コラム
ネット上での誹謗中傷や個人情報の拡散などが発生し、加害者に法的対応をとるためには、氏名や住所など加害者の身元を特定することが必要です。身元を特定するためには、まず、発信者情報開示請求という手続きによって、加害者が違法な投稿を行ったときに割り振られていたIPアドレスの開示を受けます。
それでは、IPアドレスを特定することができれば、なぜ加害者の身元を特定できるのでしょうか。また、IPアドレスを手掛かりとして、追加でどのような情報を入手できるのでしょうか。
この記事では、IPアドレスの意味や、IPアドレスの種類から身元を特定するために必要な発信者情報開示請求の方法まで、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
IPアドレス(Internet Protocol Address)とは、インターネットに接続しているデバイスに割り当てられる、インターネット上での住所を意味します。手紙を出すときに送り先の住所を書くのと同じように、インターネット上で通信する際にも、通信先のIPアドレス(=住所)が指定されるのです。
インターネットに接続している全ての機器にはIPアドレスが割り振られるのですが、その仕組みには、固定IPアドレスと動的IPアドレスの2種類があります。
インターネット上の住所を示すIPアドレスですが、IPアドレスによって特定できる/特定できない情報は、次の表のとおりです。
特定できる情報 | 特定できない情報 |
---|---|
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このように、IPアドレスだけでは氏名や住所などを特定することができないため、IPアドレスと他の情報を紐付けて、身元を特定するといった作業が必要になります。
具体的には、加害者は、インターネットを利用するためにプロバイダと契約をしており、プロバイダは、加害者の氏名や住所などを把握していますので、プロバイダに対して、該当するIPアドレスを利用していた者の個人情報の開示を請求することになります。
発信者情報開示請求とは、サイト管理者などのコンテンツプロバイダに対してIPアドレスの開示を請求する手続きと、通信事業者などのアクセスプロバイダに対して契約者の氏名や住所などの開示を請求する手続きのことをいいます。
これまでは、コンテンツプロバイダとアクセスプロバイダのそれぞれに対して、別々の手続きをとる必要があったのですが、2022年10月には、開示命令という手続きが創設され、これらを1つの手続きの中で行うことができるようになりました。
したがって、加害者の身元を特定するための方法としては、開示請求と開示命令の2種類の中から、事案に応じた適切な方を選択することができます。
いずれの方法を採る場合であっても、上記の手続きを利用するに当たっては、違法な投稿が行われたことを示す証拠を残しておくことが重要です。
違法な投稿が掲載されているページのURLとともにスクリーンショットを撮っておくなど、事後の手続きに備えた準備をしておかなければなりません。
違法な投稿に割り振られたIPアドレスのログ情報をサイト管理者が保存しているのは、投稿から約3~6か月であることが多いと思われます。
IPアドレスのログ情報が消えてしまうと、加害者の身元を特定することは不可能になってしまいます。
そのため、サイト管理者などに対してIPアドレスの開示を請求するときには、あわせて、保存しているIPアドレスのログ情報の消去禁止も求めることが一般的です。
それでは、開示請求と開示命令について、具体的な方法を確認していきましょう。
開示請求をするためには、次の2つの手続きが必要です。
開示命令は、非訟事件という手続きによって行われます。
コンテンツプロバイダに対する開示請求と消去禁止請求、アクセスプロバイダに対する開示請求の全てが、1つの手続きで審理されますので、開示請求よりも迅速な手続きであるといえます。
ただし、必ずしも口頭弁論(審尋)が開かれないこともあり、相手方が異議を申し出れば、通常の訴訟に移行するため、結果として二度手間となるリスクもあります。どちらの手続きを選択すべきかについては、慎重な検討が必要です。
このほかにも、裁判所を介する手続きを経ずに、アクセスプロバイダなどに対して直接開示を求める任意開示を求めることもできなくはないですが、プロバイダなどがこれに応じるケースは稀ですので、裁判所を介する手続きを利用することが一般的であるといえます。
加害者の身元が判明すれば、加害者を被告とする訴訟を提起して、名誉毀損・人格権侵害を理由とする損害賠償を請求します。
損害賠償請求訴訟では、次の費用を請求することが可能です。
ネットトラブルを解決するためには、複数の手続きをとる必要がありますし、ネットに対する知識も必要となりますので、発信者情報開示請求の段階から弁護士に依頼なさることをおすすめします。
弁護士に依頼することで、次のようなメリットが期待できます。
ネットトラブルが起きたとき、加害者の身元を特定するために、まずはIPアドレスを調査します。
しかし、IPアドレスだけでは個人を特定することはできず、IPアドレスから判明するプロバイダ名などの他の情報と紐付けることで、身元を特定が可能となります。
加害者に損害賠償を請求するためには、通常、① コンテンツプロバイダに対する開示請求、② アクセスプロバイダに対する開示請求、③ 加害者に対する損害賠償請求という複数の手続きをとる必要があります。
IPアドレスに関するログ情報は3~6か月で消えてしまいますので、ネットトラブルに巻き込まれたときには、早めの弁護士への相談をおすすめします。ベリーベスト法律事務所の弁護士へご相談ください。
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