企業法務コラム
マスコミやインフルエンサーに誹謗中傷されてネット上で炎上しているとき、企業はどのように対応すべきでしょうか。広告やマーケティングに欠かせないネットですが、事実無根の誹謗中傷が行われ、拡散したり炎上するリスクにも備えておかなければなりません。
SNSやネット上で誹謗中傷が行われたときには、適正な初動対応を取ることが重要なポイントとなります。過剰に反論するなどの誤った対応をしてしまえば、余計にイメージダウンするなどのリスクが起こりえます。
この記事では、誹謗中傷に対する事実確認や、自社媒体での表明など、会社の担当者がすぐにとりかかるべき対策と併せて、弁護士と連携して行うべき法的手段などについて解説します。
企業に対する誹謗中傷の具体例としては、次のようなものが考えられます。
上記はあくまでも一例ですが、このような誹謗中傷がネット上で拡散した場合、会社には大きな不利益が生じてしまうと考えられます。
既存の顧客がネガティブな口コミや評価を目にすれば、企業やその商品に対するイメージが低下し、離れていってしまうというリスクが考えられます。
また、新規の顧客にとっては、その企業のサービスや商品を選択する可能性が下がり、新規顧客の獲得が難しくなるといった被害も想定されます。
特に、インフルエンサーやマスコミによって誹謗中傷が行われている場合には、拡散力が大きく一般ユーザーの目に触れやすいという特徴があるため、これらの被害が大きなものとなることが考えられます。
新規顧客の獲得が低下し、既存顧客が離れることによって、売り上げが減少する被害や、業績が悪化する被害も考えられます。
また、株価の低下、取引先の減少、社員の退職、内定辞退、社員のモチベーション低下など、業績を低下させるさまざまな要因が発生するリスクが想定されます。
適切に事後の対応を行えば、これらの被害は一時的なものにとどめることも可能でしょうが、場合によっては、競合企業に顧客が流れて定着してしまい、長期的な被害を受け、回復が難しくなることもあり得るでしょう。
そのため、影響力の強いインフルエンサーやマスコミによって誹謗中傷が拡散され、ネガティブなイメージが定着してしまうということを避ける必要があります。
社員が、会社の上層部に相談することなく、現場レベルや担当者レベルで独断対応して、それが適切なものでなかった場合には、拡散や炎上を加速させ、かえって被害が大きくなってしまうこともあり得ます。
一部の悪質な口コミや誹謗中傷であれば、現場・担当者レベルでの対応が可能な場合もあるでしょうが、拡散や炎上が見込まれる場合には、組織的に意思決定をしたうえで対応することが望ましいといえます。
悪質な口コミや誹謗中傷が拡散して実際に被害が発生した場合、損害賠償を請求したり、謝罪を要求するなど、法的措置を講じるかどうかまでをも見据えて対応すべきです。
そのため、悪質さや見込まれる被害が大きい場合には、初期の段階から弁護士に相談して、連携して対応することが望ましいといえます。
もちろん、弁護士に依頼すれば、その分の費用が発生してしまいますが、事後の損害賠償で弁護士費用も含めて請求することなどによって回収できる場合もありますし、何よりも、生じる被害を最小限に抑えるために最善の対策を採ることができるようになりますので、この点で大きなメリットが期待できます。
弁護士への相談と併せて、企業内部では、ネット上で広まっている情報が事実であるかどうかを確認しなければなりません。
「事実無根のデマである」などと表明したにもかかわらず、事後になってそれが誤っていると判明し、ネット上の情報が正しかったとなれば、より一層のイメージダウンとなりかねないため、事実確認は慎重に行う必要があります。
慎重な事実確認の結果、ネット上の情報が正しいとわかれば、自社のWEBサイトやSNSなどの媒体を利用して、謝罪すると同時に、改善策を公表するなど信用を回復するための対応を取ることとなります。
他方、事実無根のデマであった場合には、決然とした対応を取り、正しい情報を発信するとともに、デマの発信・拡散に加担したインフルエンサーやマスコミの責任を追及することを検討していきます。
個別の口コミや誹謗中傷に対して個々に対応することも考えられますが、回答の一部が切り取られて誤った形で拡散されてしまったり、やり取りを見たほかの顧客がマイナスなイメージを持ってしまうなど、逆効果となり火に油を注ぐ結果となるリスクもありますので、原則としては取るべきではないでしょう。
組織的に対応方法を意思決定した後は、全社員での対応を統一するために、社内での告知や周知を行うべきです。
これによって、誰が、どこから、どのような問い合わせを受けたとしても、回答を統一することができ、再炎上を避けることができますし、組織的な誠実な対応を取っていることを知らしめる効果もあると考えられます。
誹謗中傷がSNSや掲示板への書き込みなどで拡散している場合には、対象の投稿や書き込みを削除し、それ以上拡散することを回避しなければなりません。
削除請求は、担当者からSNSの運営会社やサイトの管理者に連絡を取って要求することもできますが、弁護士に依頼し、削除仮処分の申し立てという裁判手続きを取る方が、スムーズに削除を実現できることが少なくありません。
ただし、情報が他のサイトなどに多数転載されてしまっているケースでは、情報の全てを削除することは困難なことが多いですので、この場合には、削除請求を行うのではなく、プレスリリースなどを行うことによって、誤った情報を打ち消す方法を検討することになるでしょう。
デマを発信・拡散したインフルエンサー本人の法的責任を追及する場合には、その氏名や住所などを調査し、身元を特定することが必要です。
違法な書き込みを行った人物の身元調査は、次の流れで行います。
これらの開示請求を行うためには、裁判手続きを取らなければならないことがほとんどですので、弁護士に依頼しましょう。
また、IPアドレスのログの保存期間は3~6か月と短いため、少しでも早く弁護士に相談して初期対応を取らなければ、発信者の特定ができなくなってしまうおそれがあります。
発信者の身元を特定できれば、民事訴訟を提起して損害賠償を請求することとなります。
この訴訟では、受けた被害のほかにも、発信者の身元を特定するためにかかった弁護士費用なども併せて請求することが可能です。
このほかにも、名誉毀損(きそん)罪・信用毀損罪・偽計業務妨害罪などに該当する場合には、これらの犯罪について刑事告訴・告発することも検討することとなるでしょう。
損害賠償を請求する民事訴訟では、謝罪を要求することも可能です。
謝罪の要求が認められるハードルは高いですが、裁判所が名誉を回復するのに適当な処分として、謝罪広告を命ずる可能性があります。
損害賠償請求が認められて金銭賠償を得ることも大切ですが、低下した信用や企業イメージを回復させるためには、加害者による謝罪文の公表を受けることも極めて重要であるといえますので、事案に応じた適切な対応を取ることができるよう、弁護士の活用をおすすめします。
誹謗中傷トラブルを早期に弁護士に依頼すれば、裁判手続きを取って強制的かつスムーズに削除を実現し、拡散を回避することで被害が大きくなる前の早期解決を期待できます。
また、誤った情報が拡散してしまっている場合でも、加害者の身元を特定して損害賠償や謝罪を請求し、誤った情報やネガティブなイメージを打ち消すことで、正しい情報を社会に公表するといった対応を取り、誹謗中傷によるダメージを最小限に抑え、早期回復を図ることが可能となります。
ログの保存期間との関係でも、ネット上での誹謗中傷トラブルは、早期の弁護士相談が重要です。
誹謗中傷やデマでお困りであれば、ささいなことでも、早期に弁護士に相談することをおすすめします。
ネットでの企業への誹謗中傷トラブルは、早期に対応して適切な初動対応を行い、被害の拡大を回避することが重要です。
また、裁判手続きを利用してリスクを排除し、被害と信用を早期に回復しなければなりません。
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