企業法務コラム
営業秘密の不正取得などは不正競争防止法(不競法)によって禁じられており、民事責任および刑事責任の対象となります。
特に、従業員による営業秘密の持ち出しなどには厳正に対処しなければなりません。弁護士のアドバイスを受けながら、適切に事態の収拾を図りましょう。
本記事では、不正競争防止法によって保護されている営業秘密について、定義や侵害への対抗手段、漏洩防止対策などをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
不正競争防止法では、事業者間の公正な競争を確保するため、営業秘密の不正な取得・使用・開示を「不正競争」として禁止しています。
「営業秘密」とは、以下の3要件を満たす技術上または営業上の情報をいいます。
営業秘密については、不正競争防止法によって以下の行為が禁止されています(同法第2条第1項第4号~第10号)。
自社の営業秘密を侵害された場合には、以下の法的措置を講じることができます。
営業秘密を侵害された場合や侵害されるおそれがある場合は、侵害の停止または予防を請求できます(不正競争防止法第3条第1項)。
また、侵害行為を組成した物(侵害行為により生じた物を含む)の廃棄や、侵害行為に供した設備の除却、その他の侵害の停止または予防に必要な行為も併せて請求可能です(同条第2項)。
上記の各請求は「差止請求」と総称されます。差止請求には、営業秘密の侵害の拡大を防ぐ効果があります。
故意または過失によって営業秘密を侵害した者は、被害者に対して損害賠償責任を負います(不正競争防止法第4条)。
損害額については推定規定が設けられており、一般の不法行為に比べて、被害者における損害の立証が容易になっています。
故意または過失による営業秘密の侵害に起因して、被害者の信用が害された場合には、被害者は裁判所に対して訴訟を提起し、営業上の信用を回復するために必要な措置を講ずべき旨の命令を求めることができます(不正競争防止法第14条)。
信用回復措置請求は、損害賠償請求と併せて行うことが可能です。
営業秘密侵害行為は、以下の刑事罰の対象とされています(不正競争防止法第21条第1項、第3項、第22条第1項・第2号)。
原則 | 10年以下の懲役または2000万円以下の罰金 ※併科あり ※法人にも5億円以下の罰金 |
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国外使用目的を有する場合など | 10年以下の懲役または3000万円以下の罰金 ※併科あり ※法人にも10億円以下の罰金 |
営業秘密を侵害された者は、警察官または検察官に対して刑事告訴を行い、侵害者の処罰を求めることができます。刑事告訴は、警察署に告訴状を提出して行うのが一般的です。
企業が営業秘密の漏洩を防ぐ対策としては、以下の例が挙げられます。
営業秘密については、保管方法を工夫するなどして、秘密管理を徹底することが重要です。
紙の書類については鍵のかかる部屋やキャビネットで保管し、電子ファイルについてはパスワードやアクセス権を設定しましょう。
また、書類や電子ファイルにアクセスできる人の範囲は必要最小限に限定するとよいでしょう。
営業秘密の漏洩に対する従業員の危機意識を高めるため、コンプライアンス研修を定期的に実施しましょう。
コンプライアンス研修の実施方法としては、弁護士を講師に呼ぶ方法や、eラーニングを活用する方法などがあります。
営業秘密の不正な持ち出しを防ぐため、従業員との間で秘密保持契約を締結するか、または秘密保持の誓約書を提出させることも考えられます。
特に、退職する従業員による営業秘密の持ち出しが頻発しているので、退職時には秘密保持義務を課しましょう。
営業秘密の漏洩が判明した場合には、早急に以下の対応を行いましょう。
営業秘密の漏洩に関する危機管理対応については、弁護士に相談するのがおすすめです。
危機管理対応にたけた弁護士に相談すれば、漏洩の拡大防止や損害を回復するための法的措置などについて、状況に応じた適切なアドバイスを受けられます。
営業秘密の漏洩によるトラブルを収拾するためには、事実関係を正確に把握することが大切です。
速やかに調査チームを組織し、関係者へのヒアリングや社内資料の精査などを通じて、迅速な事実関係の把握に努めましょう。
営業秘密を漏洩させた従業員に対しては、懲戒処分を検討すべきです。
営業秘密の漏洩は会社にとって重大事であるため、重い懲戒処分も認められる傾向にあります。通常は懲戒解雇を有効に行うハードルは高いのですが、営業秘密の漏洩が起きた場合、その行為者を企業において働かせていること自体に大きなリスクがあると評価を受けやすいです。特に、故意により営業秘密を漏洩させた場合には、懲戒解雇相当と考えられます。
ただし懲戒処分に関しては、従業員との間でトラブルになるケースが多いので、事前に弁護士へご相談ください。
営業秘密の漏洩による損害を回復するためには、民事上の差止請求・損害賠償請求・信用回復措置請求を状況に応じて使い分けましょう。また、侵害者の処罰を求めて刑事告訴を行うことも、今後における抑止力として機能します。
どのような法的措置が効果的であるかは状況によって異なるので、弁護士のアドバイスを踏まえて判断しましょう。
営業秘密が漏洩すると、競争優位の喪失や信用の低下など、企業にとってさまざまなリスクを生じます。企業としては、営業秘密の漏洩の予防に努め、万が一漏洩が発生した場合には早急に事態を収拾しなければなりません。
営業秘密の漏洩防止や漏洩時の対応については、ベリーベスト法律事務所の弁護士にご相談ください。弁護士が営業秘密の漏洩対策についても適切にアドバイスいたします。
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