企業法務コラム

2024年06月06日
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食中毒の疑いが生じたときに飲食店がやるべきことを弁護士が解説

食中毒の疑いが生じたときに飲食店がやるべきことを弁護士が解説

食中毒(ノロウイルス、細菌など)が疑われる場合、まずは顧客や従業員等から情報を収集し、原因究明に努めましょう。

人命はもちろん、お店の信用にも関わる問題のため、迅速かつ適切な対応が求められます。具体的な危機管理対応の内容・方針については、弁護士にご相談ください。

本記事では、食中毒の可能性が生じた際に飲食店がやるべきことについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、食中毒の可能性が生じた場合に飲食店がやるべきこと

飲食店において提供した食品が原因となって食中毒が発生した可能性がある場合、運営事業者は以下の対応を速やかに行いましょう。


  1. (1)連絡を受けた顧客に対する聞き取り調査

    まずは、食中毒を訴えた顧客に対して、発症当時の状況に関する聞き取り調査を行いましょう。具体的には、以下の事項などを質問して、事実関係の正確な把握に努めましょう。

    • 利用した店舗
    • 注文したメニュー
    • 食中毒の症状の内容、通院状況
    • 同伴者が注文したメニュー
    • 同伴者の発症の有無
    など
  2. (2)他の顧客・従業員・仕入れ業者などからの情報収集

    食中毒に関する状況をより正確に把握するためには、他の顧客・従業員・仕入れ業者などからも情報収集を行うことが効果的です。
    たとえば、食中毒の原因の可能性がある食品を食べた顧客に対して、電話で体調を確認したり、ウェブサイトを通じた情報提供を呼び掛けたりすることが考えられます。

    また、食品の製造や調理に関与した従業員・仕入れ業者に対しても、業務の工程に関する調査を指示し、食中毒を引き起こすような不適切なオペレーションが行われていなかったかを精査しましょう。

  3. (3)食中毒の疑いがある食材の保存・検査

    食中毒の原因であるかどうかを検証するため、その疑いがある食材については保存した上で検査を行いましょう。適切に検査を行えば、その後の顧客に向けた情報発信や、再発防止策の検討の際に役立ちます。

  4. (4)顧客に対する迅速な情報発信

    食中毒が発生してしまった場合、飲食店としての評判は大きく損なわれてしまいます。

    顧客の信頼を一日も早く回復するためには、迅速に情報発信をすることが大切です。具体的には、原因調査の方法・結果や、再発防止策の検討状況・実施状況などをタイムリーに発信する必要があります。

    情報発信を通じて、事後対応を適切に行っていることが顧客に伝われば、飲食店としての信頼回復に繋がります。

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2、食中毒が判明した飲食店がとるべき対応

飲食店において提供している食品が、実際に食中毒の原因であったことが判明した場合には、運営事業者は以下の対応をとることが求められます。


  1. (1)保健所による調査に関する準備・対応

    食中毒事故を起こした飲食店に対しては、保健所による衛生管理状況等の調査が行われる可能性が高いです。具体的には、以下のような調査が行われます。

    • 検食(=食材等の検査)
    • ふき取り検体の採取
    • 仕入元、出荷先、販売先、製造または加工(温度管理などを含む)に関する記録等の資料の確保
    • 調理従事者に関する調査(健康状態、調理上好ましくない習慣の有無など)
    など

    保健所の調査は店舗に立ち入って行われるため、受け入れの準備を整えておきましょう。また、実際に調査が行われる際には、保健所の指示に従って最大限協力しましょう。

  2. (2)保険会社への連絡

    食中毒が発生した場合、飲食店は顧客が激減したり、営業停止に追い込まれてしまったりすることにより、店舗運営が困難になってしまうおそれがあります。

    このような場合にも、賠償責任保険などに加入していれば、保険金によって生活費や店舗再建資金を確保することが可能です。食中毒による休業や損害賠償責任による損失をカバーする保険に加入していた場合は、速やかに保険会社に連絡をとり、保険金の受給手続きを行いましょう。

  3. (3)被害者対応|示談交渉・訴訟など

    食中毒の被害者は、飲食店の運営事業者に対して損害賠償を請求する可能性があります。損害賠償請求を受けた場合、運営事業者はそれに対応しなければなりません。

    損害賠償請求は、示談交渉または訴訟を通じて行われることが多いです。
    特に被害者が死亡した場合や、重篤な症状が残った場合には、飲食店が負う損害賠償責任は多額になるおそれがあります。弁護士のサポートを受けながら、適切な形で損害賠償請求に対応しましょう。

  4. (4)食中毒予防策の検討

    同様の食中毒の発生を予防するための対策を講じることも、顧客の信頼を回復する観点から非常に重要です。
    食中毒の原因調査の結果などを踏まえて、食品の衛生管理や調理の方法を見直すなど、実効的な再発防止策を講じましょう。

3、食中毒が発生した飲食店に対する処分・罰則等

食品衛生法第6条では、以下の食品または添加物の販売・加工・使用・調理等を禁止しています。

  • ① 腐敗・変敗したもの、または未熟であるもの(一般に人の健康を損なうおそれがなく飲食に適すると認められているものを除く)
  • ② 有毒・有害な物質が含まれ、もしくは付着し、またはこれらの疑いがあるもの(人の健康を損なうおそれがないものとして厚生労働大臣が定める場合を除く)
  • ③ 病原微生物により汚染され、またはその疑いがあり、人の健康を損なうおそれがあるもの
  • ④ 不潔、異物の混入・添加その他の事由により、人の健康を損なうおそれがあるもの

したがって、飲食店において食中毒を発生させることは食品衛生法違反に当たります。食中毒を発生させた飲食店は、食品衛生法に基づく行政指導・行政処分や、刑事罰の対象になることがあるので注意が必要です。

  1. (1)保健所による行政指導

    食中毒の発生状況が軽微である場合、保健所は飲食店に対して行政指導を行うことがあります。

    行政指導では、食品の衛生管理状況等に関する是正や、保健所に対する報告などが要請されます。行政指導に法的拘束力はありませんが、従わなければ行政処分が行われる可能性が高いので、保健所の指示に従って適切に是正等の取り組みを行いましょう。

  2. (2)厚生労働大臣・都道府県知事による行政処分|許可取り消し・営業停止など

    食中毒を発生させた飲食店に対して、厚生労働大臣または都道府県知事は以下の行政処分を行うことがあります(食品衛生法第59条第1項、第60条第1項、第69条)。

    • その食品、添加物、器具または容器包装の廃棄、その他食品衛生上の危害を除去するために必要な処置をとるべき旨の命令
    • 営業許可の取り消し
    • 営業の全部もしくは一部の禁止、または期間を定めた停止
    • 名称等の公表

    特に営業許可の取り消しや営業停止の行政処分を受けた場合、飲食店の運営が不可能になってしまいます。
    食中毒の規模などにもよりますが、保健所の調査に対して誠実に協力すれば、重い行政処分を回避できる可能性があります。弁護士のアドバイスを受けながら、保健所の指示に従って適切な対応を行いましょう。

  3. (3)刑事罰

    食品衛生法違反の故意がないとしても、食中毒によって顧客が体調を崩した場合や死亡した場合には、業務上過失致死傷罪によって「5年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金」に処されることがあります(刑法第211条)。

    また、食品の腐敗・変敗や有毒物質の混入、病原微生物による汚染などの可能性を知りながら、それを容認した上で客に提供した場合は、食品衛生法違反によって「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」に処されます(同法第81条第1項第1号、第2項)。

    法人の代表者・代理人・使用人その他の従業者が上記の違反を犯した場合には、法人に対しても「1億円以下の罰金」が科されます(同法第88条第1号)。

4、食中毒に関する危機管理対応は弁護士へ相談を

飲食店において食中毒発生の疑いがある場合は、危機管理対応について弁護士へご相談ください。

弁護士は、初動としての調査や情報発信の方針決定、適切な被害者対応、保健所対応などを総合的にサポートいたします。食中毒の発生に起因する運営事業者の損失を最小限に抑え、一日も早く正常に営業を再開できるように、さまざまな手段を尽くして尽力いたします。

食中毒に関する危機管理対応は迅速に行うことが重要ですので、少しでも食中毒の可能性が生じた時点で、お早めに弁護士へご相談ください

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5、まとめ

飲食店において食中毒が発生した場合は、速やかに弁護士へ相談し、保健所の調査や被害者対応などに備えましょう。弁護士のサポートを受けながら適切に対応することが、一日も早い信頼回復や営業の正常化につながります。

ベリーベスト法律事務所は、飲食店の危機管理対応に関するご相談を随時受け付けております。経営する店舗において食中毒が発生した疑いが生じた場合は、お早めにベリーベスト法律事務所へご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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