企業法務コラム
食品や製品などへの異物混入が判明したら、事実確認を急ぐとともに、お客様への謝罪や保健所への届け出、再発防止策の検討などを進めましょう。
具体的な危機管理対応については、弁護士へのご相談をおすすめします。
本記事では、異物混入クレームに関して企業(飲食店・製造業者・加工業者など)がとるべき対応につき、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
自社が製造・販売する食品や製品などへの異物混入が発生した場合には、企業は以下の対応を速やかに行いましょう。
異物混入について適切に対応するためには、迅速な事実確認と原因調査を行うことが大前提となります。
クレームを入れてきたユーザー・取引先からの聞き取りや、問題となった食品や製品の製造現場のチェック、衛生管理状況のチェックなどを通じて、異物混入問題の全体像を速やかに把握しましょう。
自社製品への異物混入が生じると、そのことによって取引先が損害を被ったり、ユーザーが健康被害を受けたりするケースがあります。
このような場合、企業は取引先や被害者などに対して速やかに連絡をとり、真摯に謝罪を尽くすことが大切です。早期かつ誠実に対応すれば、取引先や被害者との間でトラブルが発生しても、深刻化を防げる可能性が高まります。
顧客や取引先の信頼を維持・回復するためには、異物混入が発生した食品や製品の自主回収も検討すべきです。被害の拡大を防ぐため、自主回収の判断はできる限り速やかに行いましょう。
なお、食品について自主回収を行う際には、食品衛生法に基づき、原則として保健所への届け出が義務付けられる点にご留意ください(後述)。
同様の事案の再発を防ぎ、顧客や取引先の信頼を回復するためには、適切な異物混入対策を講じることも大切です。原因調査の結果を踏まえた上で、製造方法や工程管理を見直すなど、異物混入のリスクを最小化できる対策を検討しましょう。
食品への異物混入については食品衛生法、製造または加工された動産(製品)への異物混入についてはPL法(製造物責任法)の規制が適用されます。
異物混入に関する食品衛生法およびPL法の規制内容は、大まかに以下のとおりです。
食品衛生法では、異物混入によって人の健康を損なうおそれがある食品や添加物の販売等が禁止されています(同法第6条第4号)。
食品・添加物への異物混入が発生し、または発生するおそれがある場合において、営業者が当該食品・添加物等の回収を行う場合には、回収に着手した旨およびその状況を遅滞なく、都道府県知事に届け出なければなりません(ただし、例外的に届け出が不要となる場合あり。同法第58条第1項第1号、食品衛生法第58条第一項に規定する食品衛生上の危害が発生するおそれがない場合等を定める命令)。
食品・添加物への異物混入を発生させた事業者は、厚生労働大臣または都道府県知事から以下の行政処分を受けることがあります(食品衛生法第59条第1項、第60条第1項、第69条)。
さらに、故意に食品衛生法に違反して異物混入を生じさせた者は、刑事罰の対象です。法定刑は「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」で、懲役と罰金が併科されることもあります(同法第81条第1項第1号、第2項)。
法人の代表者・代理人・使用人その他の従業者が上記の違反を犯した場合には、法人に対しても「1億円以下の罰金」が科されます(同法第88条第1号)。
製造物への異物混入によってユーザーの生命・身体・財産が侵害された場合、製造業者等がその損害を賠償する責任を負います(製造物責任法第3条)。
通常の不法行為(民法第709条)とは異なり、製造物責任は免責要件が非常に厳格となっています。
すなわち、製造業者等は以下のいずれかの事由を証明しない限り、異物混入に関する製造物責任を免れることができません(製造物責任法第4条)。
次に、食品への異物混入が問題となり報道された過去事例について、その問題によりどのような影響がでたのか見ていきましょう。
2014年に発生した、食肉加工業を運営する中国企業が、消費期限切れの肉を用いて加工肉を製造していた事件です。消費期限切れの肉が混入した加工肉は、日本の大手チェーン店にも輸出されていたため、食の安全に関する大きな社会問題となりました。
同企業の加工肉を輸入していた日本マクドナルド社は、主力商品の販売を一時中止した上で、原材料を中国産からタイ産の加工肉へと切り替えて販売を再開しました。しかし、日本マクドナルド社の2014年7月の既存店売上高は前年同月比で17.4%減少するなど、大きな打撃を受けることになりました。
2014年に発生した、即席ソース焼きそばにゴキブリの死骸が混入していた事件です。
即席ソース焼きそばの製造会社は、本社工場の製品をすべて自主回収し、生産も中止した上で異物混入の可能性などを調査しました。生産中止期間は約6か月間に及び、同社は経済的に大きなダメージを受けました。
上記のほかにも、日本では大手チェーン店を中心に、異物混入に関する事件がしばしば報道されています。
企業が異物混入に関するクレームを受けた際には、迅速かつ適切な対応が求められます。ポイントを確認していきましょう。
異物混入が発生した事実が報道されると、企業の評判は大きく損なわれてしまいます。
企業としては、業績への悪影響を最小限に抑えるため、速やかな信頼回復に努めなければなりません。そのためには、事実関係や発生原因について迅速な調査を行うとともに、その経過を顧客や取引先に対して情報発信することが大切です。
迅速な調査とタイムリーな情報発信を通じて、顧客や取引先の不安を緩和し、一日も早い信頼回復を目指しましょう。
異物が混入した食品や製品が流通した状態をそのままにしていると、被害者が増えるおそれがあります。被害者が増えてしまえば、企業が負担する損害賠償責任も多額になり、経営への致命的なダメージに発展する可能性が否めません。
異物混入による被害を最小限に抑えるためには、自主回収などの思い切った対応も検討すべきです。目先のコストに捕らわれることなく、中長期的な観点からどのような対応が適切であるかを判断しましょう。
異物混入に関する危機管理対応は、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士は、レピュテーションリスクの管理や損害賠償請求への対応など、総合的な観点から企業の危機管理対応をサポートします。弁護士のアドバイスを受けながら対応することで、異物混入事件による企業経営への悪影響を最小限に抑えられます。
自社製品への異物混入が判明した場合は、危機管理対応についてお早めに弁護士へご相談ください。
自社製品への異物混入が判明したら、迅速に事実関係や原因を調査した上で、自主回収などによって事態の収拾を図りましょう。顧客・取引先への情報発信や、再発防止策の検討を適切に行うことも大切です。
異物混入に関する危機管理対応は、弁護士に相談しながら行うことをおすすめします。ベリーベスト法律事務所は、企業の危機管理に関するご相談を随時受け付けておりますので、お早めにご相談ください。
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