企業法務コラム
職場に防犯カメラを設置することで、犯罪やハラスメントの抑制、セキュリティーの向上といったメリットが得られますので、防犯カメラの設置を検討している経営者もいると思います。
職場に防犯カメラを設置すること自体は、法律違反にはなりませんが、設置場所や映像の活用・保管方法によっては、従業員とトラブルになる可能性もあります。そのため、従業員のプライバシーにも十分に配慮した上で、設置を検討する必要があります。
今回は、職場で防犯カメラを設置する際のポイントや注意点などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
職場に防犯カメラを設置するメリットとしては、以下のものが挙げられます。
職場に防犯カメラがあると、常に監視の目があることになり、従業員による備品持ち出しなどの犯罪を抑制する効果が期待できます。
また、職場内の防犯カメラは、セクハラやパワハラなどの抑制にもつながり、職場環境の改善も期待できます。従業員からセクハラやパワハラの相談があった際も、防犯カメラの映像を見返すことで、事実を明らかにすることができるため、それに基づき適正な処分を行うことが可能でしょう。
多くの人が来訪するオフィスでは、外部から不審者が訪れて従業員に危険が及ぶおそれがあります。防犯カメラを設置していることをオフィスの入り口などに明示しておけば、それだけで不審者の来訪を防止する効果が期待できます。
また、機密情報や重要書類を保管しているエリアに防犯カメラを設置すれば、機密情報の漏洩や不正アクセスを防止できるという効果も期待できます。
職場内に防犯カメラを設置する際には、個人情報保護法を踏まえた措置を講じる必要があります。
個人情報保護法では、以下のいずれかに該当するものを「個人情報」と定義しています。
このような個人情報にあたる代表的なものとしては、以下のものが挙げられます。
職場内の防犯カメラで撮影された映像には、従業員の顔などが記録として残されています。これにより防犯カメラの映像から、個人の特定ができますから、防犯カメラの映像は個人情報保護法の対象となる個人情報に該当します。
上記のように防犯カメラの映像は、個人情報保護法の対象となる個人情報に該当しますので、事業主は、個人情報保護法により、以下のような措置を講じなければなりません。
① 利用目的の特定・公表
職場に防犯カメラを設置して個人を識別することができる画像を取得する場合には、利用目的をできる限り特定しなければなりません。そして、個人情報の利用目的は、本人に通知または、公表する必要があります。ただし、カメラの設置状況などから利用目的が明らかである場合には、利用目的の通知・公表は不要です。
職場に設置されるカメラが防犯カメラで、顔認証データの抽出などを行わないものである場合には、利用目的が明確であることから、利用目的の通知・公表は不要だと考えられます。しかし、防犯カメラ設置状況などから、防犯カメラにより個人情報が取得されていることが簡単に分かるとはいえない場合には、簡単に分かる措置を講じる必要があります。たとえば、防犯カメラが作動中だとオフィスの入り口やカメラの設置場所に掲示するなどの措置が考えられます。
② 利用目的の範囲内での、個人情報の取り扱い
防犯カメラで個人情報を取得する場合は、特定した利用目的の範囲を超えて、個人情報を取得することはできません。たとえば、防犯目的で設置した防犯カメラで、従業員の勤務状況の確認をすることは利用目的の範囲外の利用になりますので、認められません。
また、防犯目的で防犯カメラを設置する場合でも必要な範囲のみの撮影にとどめるなどの配慮が必要です。
③ 安全管理措置
職場に防犯カメラを設置して個人情報を取得する場合には、外部に個人情報が流出することを防ぐために必要かつ適切な安全管理措置を講じることが求められます。具体的な安全管理措置としては、以下のものが挙げられます。
職場内に防犯カメラを設置する場合には、以下の点に注意が必要です。
防犯カメラを設置することは、法的には問題がありませんが、会社から一切説明なく突然防犯カメラが設置されていたら、従業員のなかには好ましく思わない人も出てくるでしょう。
会社に対して不信感を抱かれると、業務にも支障が出てしまう可能性もありますので、防犯カメラを設置する際には、事前に従業員に周知しておいた方がよいといえます。利用目的や撮影範囲などを明確にしておけば、従業員とのトラブルを回避することができるでしょう。
防犯カメラを設置する会社側としては、死角なく広範囲に撮影できる場所に設置したいと考えるかもしれません。
しかし、防犯カメラの撮影場所に、トイレ、更衣室、ロッカー、休憩室などのプライベートな空間が含まれている場合には、プライバシーの侵害にあたる可能性があります。特に、トイレや更衣室などは盗撮を疑われる可能性もありますので、そのような場所が映らないように配慮しなければなりません。
防犯カメラを設置する際には、個人情報保護法だけでなく、各自治体が制定している防犯カメラに関する条例やガイドラインも確認する必要があります。
自治体によっては、公共の場所に向けて防犯カメラを設置する際には、事前の届け出を義務付けているところもありますので、しっかりと確認しておくようにしましょう。
企業法務に関するお悩みは、弁護士に相談することをおすすめします。
職場での防犯カメラ設置などの社内プロジェクトを進める際には、法的観点からの検討も必要です。今回解説した防犯カメラの設置に関しても、個人情報保護法や従業員のプライバシーに配慮しながら進めていく必要がありますので、専門家である弁護士のアドバイスやサポートを事前に受けたほうが、トラブルを未然に防ぐことができるでしょう。
なお、社内プロジェクトの内容によっては、複雑な法規制が関わってくるものもありますので、安心してプロジェクトを進めるためにも弁護士によるリーガルチェックを経ることが望ましいです。
店舗で防犯カメラを設置するケースでは、設置場所や撮影範囲などによっては、近隣住民やお客さまとのトラブルになる可能性があります。このようなトラブルが生じた場合には、法的問題点を意識しながら対応することが必要になりますので、不慣れな方では対応を誤りトラブルが深刻化するおそれがあります。
弁護士であれば、このようなトラブルに対しても適切に対応することができます。トラブルが起き、自分で対処する前に弁護士に相談すれば、問題解決に向けて有効なアドバイスを受けることができるでしょう。
企業法務に関する相談は、悩みやトラブルが生じたときに単発で弁護士に相談することもできますが、顧問弁護士を利用するのがおすすめです。
顧問弁護士であれば、顧問先企業の実情をよく把握していますので、より効果的なアドバイスをすることができます。また、電話やメールで、いつでも気軽に相談することができますので、必要な場面で迅速に法的アドバイスを受けることが可能です。
企業が安定・継続的に発展していくためには、顧問弁護士による法的サポートが必要となる場面もありますので、まだ利用されていないという企業は、積極的に顧問弁護士の利用を検討するようにしましょう。
防犯カメラを設置することは、法的には問題ありません。しかし、防犯カメラの撮影により個人情報を取得することになりますので、個人情報保護法に基づいて適切な措置を講じる必要があります。また、従業員のプライバシーを侵害するような撮影方法だった場合には、従業員から訴えられるリスクも生じます。
このようなリスクを減らすためにも、防犯カメラの設置を進める前に弁護士に相談しましょう。また、これに限らず企業の法務に関するお悩みは、ベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。
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