企業法務コラム

2024年07月24日
  • 風説の流布
  • 名誉毀損

風説の流布や名誉毀損をされた場合、企業として何をするべきか?

風説の流布や名誉毀損をされた場合、企業として何をするべきか?

「風説の流布」(ふうせつのるふ)とは、有価証券(株式など)の価格を上下させるなどの目的で、虚偽の情報を流す違法行為のことをいいます。かかる行為は、民事上の損害賠償請求や刑事罰の対象とされています。

風説の流布の被害にあった企業は、民事および刑事責任の追及を行いましょう。加害者に対する厳正な対応をする場合、弁護士への相談をおすすめします。

本記事では、風説の流布や名誉毀損の被害に遭った企業の対応について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、風説の流布とは?

虚偽の「風説の流布」によって人の信用を毀損し又はその業務の妨害をした場合、信用毀損及び業務妨害罪が成立します(刑法第233条)。

ここでいう「風説の流布」とは、どのような意味を指すのでしょうか。
まず、「風説」とは、一般的には噂を意味しますが、噂という型で流布される場合に限定する合理的理由はないので、単に、事柄を意味すると考えられています。

また、「流布」とは、不特定又は多数人に伝播させることと考えられています。
そのため、少数の者に対して直接伝達した場合でも、その少数人を媒介にして、他の多くの人に伝わるおそれがある場合には、「風説の流布」に当たると解されています(大審院昭和12年3月17日判決・集16巻6号365号)。

  1. (1)風説の流布に当たる行為の例

    たとえば、以下の行為は、虚偽の風説の流布に当たります。

    • X社が倒産しそうだと虚偽のうわさを流すこと
    • Y社が身売りを検討しているという虚偽のうわさを流すこと
    • Z社の社長が不倫をしていると虚偽のうわさを流すことなど
  2. (2)風説の流布をした者が負う民事責任・行政上の責任

    風説の流布によって何らかの損害が生じた場合、虚偽のうわさや情報を流した者は不法行為に基づく損害賠償責任を負います(民法第709条)。

    また、風説の流布が競合他社の営業上の信用を害するものである場合は、「不正競争」として差止請求の対象になることもあります(不正競争防止法第3条)。

    さらに、有価証券(株式など)の募集・売り出し、売買その他の取引もしくはデリバティブ取引等のため、または有価証券等の相場の変動を図る目的をもって風説を流布した場合は、金融商品取引法違反として課徴金納付命令の対象となります(金融商品取引法第158条、第173条)。

  3. (3)風説の流布について成立する犯罪

    虚偽の風説の流布については、以下の犯罪が成立する可能性があります。

    ① 信用毀損(きそん)罪・偽計業務妨害罪(刑法第233条)
    虚偽の風説を流布し、他人の信用を毀損し、またはその業務を妨害した者には「信用毀損罪」または「偽計業務妨害罪」が成立する可能性があります。
    信用毀損罪・偽計業務妨害罪の法で定められた刑罰は、「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」です。

    ② 名誉毀損罪(刑法第230条)
    風説を流布した結果、公然と事実を示して、他人の社会的評価を下げた場合には、虚偽であるか否かを問わず、「名誉毀損罪」が成立する可能性があります。
    名誉毀損罪の法定刑は「3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金」です。

    なお、信用毀損罪・偽計業務妨害罪と名誉毀損罪の両方が成立する場合は、一罪として処断されます(刑法第54条第1項前段、大審院大正5年6月26日判決)。

    ③ 金融商品取引法違反(同法第197条第1項第5号、第6号)
    有価証券(株式など)の募集・売り出し、売買その他の取引もしくはデリバティブ取引等のため、または有価証券等の相場の変動を図る目的をもって風説を流布した場合は、金融商品取引法違反により処罰されます。
    暗号資産などの売買その他の取引もしくは暗号等資産関連デリバティブ取引のため、または暗号資産などの相場の変動を図る目的をもって風説を流布した場合も、同様に処罰の対象となります。

    風説の流布による金融商品取引法違反の法定刑は「10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金」で、併科されることもあります。

    また、財産上の利益を得る目的で風説の流布を行い、実際に相場を変動させた上で、その相場で取引を行った者は「10年以下の懲役および3000万円以下の罰金」に処されます(同法197条第2項)。

    さらに、法人の代表者・代理人・使用人その他の従業者が上記の風説の流布を行った場合は、その法人には「7億円以下の罰金」が言い渡される可能性があります(同法第207条第1項第1号)。
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2、【民事編】風説の流布・名誉毀損への企業の対応

風説の流布によって株価下落などの被害を受けた企業は、早急に以下の対応を行いましょう。


  1. (1)風説の流布に当たる投稿の削除請求

    風説の流布に当たる投稿があった場合、当該風説が虚偽であれば、投稿先のサイトポリシー等に基づく削除の対象となる可能性が高いです。投稿先サイトの管理者に対して、速やかに削除請求を行いましょう。

    サイト管理者が削除に応じない場合は、裁判所に対し投稿削除の仮処分の申立てをすることが考えられます

    当該投稿により、会社に著しい損害または急迫の危険が生じる可能性を裁判所に説明し、投稿削除の仮処分をすべき必要性があると認められる場合には、裁判所は投稿削除の仮処分命令を発令します(民事保全法第23条第2項)。投稿削除の仮処分命令をサイト管理者に提出すれば、速やかに問題の投稿が削除されることが多いです。

  2. (2)風説の流布をした人の特定|発信者情報開示請求

    風説の流布をした人に対し損害賠償を請求するためには、まず投稿者を特定しなければなりません。

    匿名投稿者を特定するためには、投稿先サイトの管理者や、投稿に用いられた端末のインターネット接続業者に対して「発信者情報開示請求」を行うことが考えられます(プロバイダ責任制限法第5条)。
    風説の流布について、当該風説が虚偽に当たる場合、当該風説の対象者の名誉毀損に該当する可能性があるため、サイト管理者やインターネット接続業者から、投稿者の個人情報の開示を受けられる可能性があります。

    これまで、投稿者の個人情報を取得するためには、サイト管理者とインターネット接続業者に対し、それぞれ発信者情報開示請求を行う必要がありました。このように、少なくとも2回、法的手続を経る必要がありました。

    このような2段階の手続の煩雑さを解消するために、2022年10月に改正プロバイダ責任制限法が施行されました。同法では、新たに「発信者情報開示命令」の制度が新設され、これによって、サイト管理者およびインターネット接続業者に対する発信者情報開示請求がひとつの裁判手続きで行うことが可能となりました。

    もっとも、サイトによっては従来の2段階の方法を採用する方が良い場合もあるため、投稿者の特定をご検討されている方は、弁護士に相談してみてください。

  3. (3)投稿者に対する損害賠償請求

    発信者情報開示請求などによって、風説の流布をした投稿者を特定できた場合は、投稿者に対して損害賠償請求を検討しましょう。

    まずは投稿者に連絡をとって示談交渉を試み、和解がまとまらない場合には、次のステップとして訴訟を提起するという順序を辿ることが一般的です。

    損害賠償請求の示談交渉や訴訟提起をご検討されている方は、弁護士に依頼することをおすすめします。法的な根拠に基づいて適切な請求を行うことにより、適正な損害賠償を受けられる可能性が高まります。

3、【刑事編】風説の流布・名誉毀損に関する刑事告訴の手続き

風説の流布につき、犯罪として刑事告訴する際の手続きは、以下のとおりです。

① 告訴状の提出
告訴状の提出先は、検察官または司法警察員(警察官)になりますが、一般的には、警察署へ行って手続きをすることになります。

② 捜査
警察および検察が、事件について捜査を行います。風説の流布をした投稿者が匿名の場合は、捜査機関側で特定します。
投稿者が特定できた場合、捜査機関は、その人物に対して取調べを行います。また、風説の流布の被害を受けた会社の関係者も、参考人として取り調べを求められることがあります。

③ 起訴・不起訴の判断
検察官が、風説の流布の投稿者を起訴するかどうかを判断します。刑事告訴をした場合、起訴・不起訴のどちらになったかは検察官から通知されます。

④ 刑事裁判(公判手続き)
投稿者が起訴された場合は、刑事裁判(公判手続き)によって有罪・無罪および量刑が審理されます。風説の流布の被害を受けた会社の代表者またはその代理人は、公判手続きにおいて、被害に関する心情その他の意見を陳述することができます(刑事訴訟法第292条の2第1項)。

刑事告訴をすると、警察・検察による捜査が行われ、風説の流布をした投稿者が処罰される可能性が高まります。弁護士にご相談いただければ、刑事告訴のサポートも可能です。

4、風説の流布・名誉毀損の被害は弁護士に相談を

風説の流布などの信用毀損行為や名誉毀損により、会社の株価が下落するなどの損害を被った場合は、早めの弁護士相談をおすすめします。

弁護士は、問題の投稿の削除請求・投稿者の特定・損害賠償請求・刑事告訴など、被害回復のために必要な対応を幅広くサポートいたします。会社の業務に支障を来さないようにしつつ、迅速に事態の収拾を図るためには、弁護士のサポートが非常に効果的です。

風説の流布や名誉毀損への対応には、迅速さが要求されます。自社に関する不適切な投稿を発見しましたら、速やかに弁護士へご相談ください。

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5、まとめ

自社に関する風説の流布や名誉毀損の投稿を発見したら、問題の投稿について速やかに削除を請求しましょう。発信者情報開示請求等によって投稿者を特定すれば、損害賠償責任の追及も可能です。さらに、投稿者の処罰を求めたい場合は、刑事告訴もご検討ください。

ベリーベスト法律事務所は、インターネット上の不適切投稿で生じた被害のご相談を随時受け付けております。根拠のない虚偽の投稿や誹謗中傷の投稿について、速やかな削除および投稿者の責任追及を実現するため、経験豊富な弁護士が迅速かつ丁寧に対応いたします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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