企業法務コラム
「風説の流布」(ふうせつのるふ)とは、有価証券(株式など)の価格を上下させるなどの目的で、虚偽の情報を流す違法行為のことをいいます。かかる行為は、民事上の損害賠償請求や刑事罰の対象とされています。
風説の流布の被害にあった企業は、民事および刑事責任の追及を行いましょう。加害者に対する厳正な対応をする場合、弁護士への相談をおすすめします。
本記事では、風説の流布や名誉毀損の被害に遭った企業の対応について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
虚偽の「風説の流布」によって人の信用を毀損し又はその業務の妨害をした場合、信用毀損及び業務妨害罪が成立します(刑法第233条)。
ここでいう「風説の流布」とは、どのような意味を指すのでしょうか。
まず、「風説」とは、一般的には噂を意味しますが、噂という型で流布される場合に限定する合理的理由はないので、単に、事柄を意味すると考えられています。
また、「流布」とは、不特定又は多数人に伝播させることと考えられています。
そのため、少数の者に対して直接伝達した場合でも、その少数人を媒介にして、他の多くの人に伝わるおそれがある場合には、「風説の流布」に当たると解されています(大審院昭和12年3月17日判決・集16巻6号365号)。
たとえば、以下の行為は、虚偽の風説の流布に当たります。
風説の流布によって何らかの損害が生じた場合、虚偽のうわさや情報を流した者は不法行為に基づく損害賠償責任を負います(民法第709条)。
また、風説の流布が競合他社の営業上の信用を害するものである場合は、「不正競争」として差止請求の対象になることもあります(不正競争防止法第3条)。
さらに、有価証券(株式など)の募集・売り出し、売買その他の取引もしくはデリバティブ取引等のため、または有価証券等の相場の変動を図る目的をもって風説を流布した場合は、金融商品取引法違反として課徴金納付命令の対象となります(金融商品取引法第158条、第173条)。
虚偽の風説の流布については、以下の犯罪が成立する可能性があります。
風説の流布によって株価下落などの被害を受けた企業は、早急に以下の対応を行いましょう。
風説の流布に当たる投稿があった場合、当該風説が虚偽であれば、投稿先のサイトポリシー等に基づく削除の対象となる可能性が高いです。投稿先サイトの管理者に対して、速やかに削除請求を行いましょう。
サイト管理者が削除に応じない場合は、裁判所に対し投稿削除の仮処分の申立てをすることが考えられます。
当該投稿により、会社に著しい損害または急迫の危険が生じる可能性を裁判所に説明し、投稿削除の仮処分をすべき必要性があると認められる場合には、裁判所は投稿削除の仮処分命令を発令します(民事保全法第23条第2項)。投稿削除の仮処分命令をサイト管理者に提出すれば、速やかに問題の投稿が削除されることが多いです。
風説の流布をした人に対し損害賠償を請求するためには、まず投稿者を特定しなければなりません。
匿名投稿者を特定するためには、投稿先サイトの管理者や、投稿に用いられた端末のインターネット接続業者に対して「発信者情報開示請求」を行うことが考えられます(プロバイダ責任制限法第5条)。
風説の流布について、当該風説が虚偽に当たる場合、当該風説の対象者の名誉毀損に該当する可能性があるため、サイト管理者やインターネット接続業者から、投稿者の個人情報の開示を受けられる可能性があります。
これまで、投稿者の個人情報を取得するためには、サイト管理者とインターネット接続業者に対し、それぞれ発信者情報開示請求を行う必要がありました。このように、少なくとも2回、法的手続を経る必要がありました。
このような2段階の手続の煩雑さを解消するために、2022年10月に改正プロバイダ責任制限法が施行されました。同法では、新たに「発信者情報開示命令」の制度が新設され、これによって、サイト管理者およびインターネット接続業者に対する発信者情報開示請求がひとつの裁判手続きで行うことが可能となりました。
もっとも、サイトによっては従来の2段階の方法を採用する方が良い場合もあるため、投稿者の特定をご検討されている方は、弁護士に相談してみてください。
発信者情報開示請求などによって、風説の流布をした投稿者を特定できた場合は、投稿者に対して損害賠償請求を検討しましょう。
まずは投稿者に連絡をとって示談交渉を試み、和解がまとまらない場合には、次のステップとして訴訟を提起するという順序を辿ることが一般的です。
損害賠償請求の示談交渉や訴訟提起をご検討されている方は、弁護士に依頼することをおすすめします。法的な根拠に基づいて適切な請求を行うことにより、適正な損害賠償を受けられる可能性が高まります。
風説の流布につき、犯罪として刑事告訴する際の手続きは、以下のとおりです。
刑事告訴をすると、警察・検察による捜査が行われ、風説の流布をした投稿者が処罰される可能性が高まります。弁護士にご相談いただければ、刑事告訴のサポートも可能です。
風説の流布などの信用毀損行為や名誉毀損により、会社の株価が下落するなどの損害を被った場合は、早めの弁護士相談をおすすめします。
弁護士は、問題の投稿の削除請求・投稿者の特定・損害賠償請求・刑事告訴など、被害回復のために必要な対応を幅広くサポートいたします。会社の業務に支障を来さないようにしつつ、迅速に事態の収拾を図るためには、弁護士のサポートが非常に効果的です。
風説の流布や名誉毀損への対応には、迅速さが要求されます。自社に関する不適切な投稿を発見しましたら、速やかに弁護士へご相談ください。
自社に関する風説の流布や名誉毀損の投稿を発見したら、問題の投稿について速やかに削除を請求しましょう。発信者情報開示請求等によって投稿者を特定すれば、損害賠償責任の追及も可能です。さらに、投稿者の処罰を求めたい場合は、刑事告訴もご検討ください。
ベリーベスト法律事務所は、インターネット上の不適切投稿で生じた被害のご相談を随時受け付けております。根拠のない虚偽の投稿や誹謗中傷の投稿について、速やかな削除および投稿者の責任追及を実現するため、経験豊富な弁護士が迅速かつ丁寧に対応いたします。
マンション購入者向けの情報サイト「マンションコミュニティ」には、購入時の参考になる情報が投稿されている一方で、事実無根の悪評が投稿されることもあります。自社が販売するマンションの根拠がない悪評を発見…
会社を辞める際にトラブルがあった元従業員から、退職後に会社に対して嫌がらせをされることがあります。代表的なものは、転職サイトの口コミで低評価や事実と異なる悪口を書かれる、SNSを介して誹謗中傷をされ…
インターネット上の悪質な誹謗中傷が社会問題となっています。この要因のひとつには、誹謗中傷をした場合の刑罰が軽すぎるという点が挙げられるでしょう。そのため、令和4年の刑法改正により、侮辱罪が厳罰化され…
お問い合わせ・資料請求