企業法務コラム
総務省が公開している「国内外における最新の情報通信技術の研究開発及びデジタル活用の動向に関する調査研究」(調査実施期間:2022年2月8日~2022年3月31日)によると、SNSを利用したことがあると答えたのは、回答者の7割弱でした。
SNS利用者の増加に伴い、企業が、SNSをはじめとしたインターネットを活用して「商品やサービスを売り込む」ことに注力するのは当然の流れです。しかし、世間で話題になっているニュースに目を向けると、SNS・インターネットにおける企業の「炎上」トラブルも目立ちます。モラルが欠けていたり、配慮が足りなかったりする情報を発信すれば、たちまち炎上騒ぎとなって大ダメージを受けてしまうでしょう。
一方で、いったんは炎上してしまったものの対応に成功し、多くの人から「神対応だ」と評価され、炎上後にかえって信用を集め、ブランド力を高めた企業も存在します。炎上してしまったときこそ、企業としての正しい対応が問われると言えるでしょう。本コラムでは、SNSやインターネットにおける企業の炎上事例と、「神対応」により炎上対応に成功した好事例を紹介します。また、法的観点からみる炎上への備えについても併せて解説します。
出典:「国内外における最新の情報通信技術の研究開発及びデジタル活用の動向に関する調査研究」(総務省ホームページ)
SNSやインターネットにおける発信で、企業や製品に批判が相次ぐ「炎上」が起きた事例を挙げていきましょう。
インスタントラーメンを販売する食品会社がTwitterでPR漫画を公開したところ、夫が妻に家事を押し付けるハラスメントにあたると指摘され、炎上した事例です。
公開された漫画は、妻の留守中、夫が幼い子どもにインスタントラーメンを調理して食べさせるという内容でしたが、包装袋を妻が帰宅するまで放置している、食べ終わった食器を洗っておらず帰宅した妻が洗っているといった描写が、炎上の理由でした。
人気アニメに関連するグッズが実際に存在した歴史上の人種差別を想起させるとして批判が集中し、炎上した事例です。販売されたのはアニメの作中に登場する腕章で、作中では差別・迫害を受ける他民族を区別するための目印として描かれていました。
国内だけでなく海外でも人気が高いアニメだったため、海外からの批判が殺到したのも炎上を加速させたようです。
大手の回転寿司チェーン店で発生した、従業員による不適切な動画投稿、いわゆるバイトテロの炎上事例です。
アルバイトの少年が、魚の切り身をゴミ箱に捨てたあと、ゴミ箱から拾ってまな板の上に載せるという様子を撮影した動画がTwitterで投稿されたため、多くのユーザーから「不衛生だ」と非難が集中し、炎上しました。
実は、この動画はもともとフォロワーだけが閲覧可能で、24時間で自動削除される、Instagramのストーリー機能で投稿されたものでした。しかも、投稿者本人は、フォロワーからの指摘を受けて3時間ほどで削除していたそうです。
ところが、この動画を保存した店舗関係者ではないユーザーがTwitterに転載したため多くの人の目に触れる事態へと発展し、店舗には抗議の電話が殺到しました。
サプリメントの販売会社がサイト上で特定の症状の治療に効果があるかのようなPRをおこない、法令に抵触する可能性があると指摘を受けて炎上した事例です。
サプリメントはあくまでも食品であり、特定の効果・効能が期待できる医薬品ではないので、サイトを含めた広告でも医薬品かのようにうたう表現は禁止されています。
「炎上」はなぜ起こるのでしょうか? ここでは、炎上が起こるメカニズムを紹介しながら、炎上が発生することで企業が負うダメージを挙げていきましょう。
「炎上」とは、本来は炎が勢いよく燃え盛る様子を指す言葉です。一方、ネット用語としての「炎上」とは、企業・商品・サービスなどに批判が集中する事態を指しています。本来の意味である「炎」に例えるとそのメカニズムを理解しやすくなります。
まずは「火種」です。企業側の不適切な投稿、配慮に欠けた広告などが広く公開されることが、小さな火種となります。
次に、その投稿や広告などをみかけたユーザーが反応し、話題として取り上げ、SNSなどを中心に拡散します。炎に例えれば、ここで酸素が注入され、火種がさまざまな場所へと広がった状態だと言えるでしょう。
ここで、企業側が初期対応を誤ってしまうと、ユーザーからの批判が増してしまいます。炎に対して、自ら燃料を投下してしまった状態です。
こうして大きくなった炎に対して、ネットニュース・まとめサイトなどが話題として取り上げたり、影響力の大きなインフルエンサーが私見を述べたりすることで、さらに酸素が注入されます。これまでは興味をもっていなかったユーザーにまで情報が拡散され、批判的なコメントが殺到する状態になるのが「炎上」です。
炎上が発生してしまうと、企業はさまざまなダメージを負います。
事態を収束へと進めるため対応に追われるので、通常の業務が進まなくなるだけでなく、店舗の休業や閉鎖、商品の回収や販売中止、当事者の解雇や責任者の辞任といった事態に発展するかもしれません。
もし対応を誤ってしまえば企業に対する不信感が高まり、消費者の間で不買運動が起きて収益が減少する、コンプライアンス上の問題から主要な取引先から取引停止を言い渡されてしまう、市場での信用低下によって株価が下落するといったダメージを負うこともあります。
炎上が起きたときこそ、企業の姿勢や対応が問われます。世間が驚くほど行き届いた「神対応」をすれば、炎上によるダメージを回避できるだけでなく、企業のブランド力を向上させることができるかもしれません。
炎上騒ぎから一転して「神対応だ」と評価され、ブランド力を向上させた好事例を紹介します。
ここで挙げた神対応と呼ばれる2つの事例は、いずれも企業側がスピード感のある対応を取ったという点で共通しています。
ネット上の批判に踊らされるのではなく、公式アカウントや公式サイトでただちに適切な対応を取っており、企業としての対応速度が高いという点が高評価のポイントです。
また、誤った情報やねつ造・虚偽の情報を投稿した加害者を責めることなく、寛容な対応を取ったことも、企業イメージのアップにつながりました。
ただし、やみくもに寛容な姿勢を示せばよいというわけでもありません。
実際に、飲食店における不衛生な迷惑行為について、曖昧な対応を取るのではなく「法的責任を追及する」と強く明言したことで、企業としての責任感が高く評価されたという事例も存在します。
寛容に対応するのか、それとも断固として責任を追及するのか、どちらが最善なのかを判断するのは簡単ではありません。炎上騒ぎの渦中にいる企業なら、なおさら冷静な対応を取るのは難しいでしょう。
SNSやインターネットにおいて炎上が起きたときや、炎上に備えた準備を進めておきたいと考えたときは、弁護士に相談しましょう。
炎上が発生してしまったとき、まず問われるのは企業としての明確な姿勢とスピード感です。無関係なユーザーの意見に踊らされたり、言い訳に終始してほとぼりが冷めるのを待ったりするのではなく、トラブルの本質的な解決を急がなくてはなりません。
ネットトラブルの解決実績が豊富な弁護士に相談すれば、状況を即座に判断してどのような対応を取るのが最善なのかのアドバイスが得られます。
また、刑事責任を追及すべきケースでは刑事告訴に向けた証拠収集、損害賠償を請求するケースでは加害者との交渉や訴訟に向けた準備や手続といったサポートの依頼も可能です。
本来、炎上は望まないのが当然ですが、SNS・インターネットがマーケティングに欠かせない現代社会においては、どのような業界であっても炎上のリスクを抱えているといえます。
炎上を神対応という高評価に変えるには、炎上に備えた準備が必須です。弁護士に相談すれば、炎上に備えた社内コンプライアンスやメディアポリシーの整備、危機対応フローの作成、社員への研修まで、適正なサポートが可能です。
炎上への備えは、一時的なものでは十分な効果が期待できません。また万が一、炎上が発生してしまった場合は素早い対応が必要となります。
ベリーベスト法律事務所では、インターネットトラブルや企業法務の実績がある弁護士による顧問弁護士サービスも行っています。スピード感の高い対応を取るためにも、顧問弁護士の継続的なサポートは有益であり、適切に炎上対応を成功させたい場合は、おすすめの方法です。
「炎上」が発生してしまった企業は、対応に追われてしまうだけでなく、経営悪化などの大きなダメージを負ってしまうでしょう。一方で、炎上という大きなトラブルを「神対応」によって切り抜けることができれば、ブランド力の向上など、企業にとってよい効果をもたらす結果も期待できます。
炎上対応に成功するには、弁護士のサポートが欠かせません。
すでに炎上が発生して対応に追われている、今後の炎上に備えて準備を進めたいと考えるなら、ネットトラブルの解決実績を豊富にもつベリーベスト法律事務所におまかせください。
個々の状況に応じた適切かつスピーディーな対応で、炎上被害を最小限に食い止めるだけでなく、炎上を神対応に変えるための最善策を提案します。顧問弁護士としての継続的なサポートも可能なので、まずはベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。
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