2025年04月09日
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超過勤務手当とは? 時間外手当との違いと支給条件や計算方法を解説

超過勤務手当とは? 時間外手当との違いと支給条件や計算方法を解説

超過勤務手当とは、所定の労働時間を超えて働いた場合などにおいて、基本給にプラスして支払われる賃金のことです。

超過勤務をした日が平日か休日か、超過勤務の時間帯、および勤務形態の違いなどにより、計算方法が変わります。超過勤務弁護士のアドバイスを受けながら、適切に超過勤務手当の計算・支払いを行いましょう。

本記事では超過勤務手当について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、超過勤務手当とは

「超過勤務手当」とは、正規の勤務時間以外の時間に働いた労働者に対して、使用者が支給する手当です。

  1. (1)超過勤務とは|法定内残業・時間外労働・休日労働・深夜労働

    一般企業に適用される労働基準法では、「超過勤務」の用語は定義されていません。
    そのため、「超過勤務」および「超過勤務手当」が何を意味するのかは、文脈や使う人によって異なります。

    なお、国家公務員に適用される「人事院規則15-14(職員の勤務時間、休日および休暇)」第16条には、「超過勤務」の用語が定義されています。
    同規定と「一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律」第13条第2項を併せて確認すると、「超過勤務」とは以下の意味を有することが分かります。

    超過勤務とは
    公務のため臨時または緊急の必要がある場合に、正規の勤務時間以外の時間において(国家公務員に)命じられる勤務
    ※一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律第13条第1項に掲げる勤務を除く

    国家公務員の超過勤務の定義を参考にすると、一般企業における「超過勤務」も、労働者が正規の勤務時間以外に働くという意味に解釈するのが合理的でしょう。

    上記の解釈に従うと、「法定内残業」「時間外労働」「休日労働」「深夜労働」が超過勤務に当たります。それぞれの概要は下表のとおりです。

    超過勤務の種類 概要
    法定内残業 所定労働時間(※1)を超え、法定労働時間(※2)を超えない部分の労働時間
    時間外労働(法定外残業) 法定労働時間を超える部分の労働時間
    休日労働 法定休日の労働時間
    深夜労働 午後10時から午前5時までの労働時間

    ※1 所定労働時間:会社が定める労働時間
    ※2 法定労働時間:民法が定める労働時間。原則、1日8時間・1週間40時間

    これらの超過勤務に対して支払われる手当(法定内残業手当・時間外手当・休日手当・深夜手当)が、超過勤務手当ということになります。

    本記事でも、この解釈に沿って解説します。

  2. (2)超過勤務手当の割増率

    超過勤務手当のうち、時間外手当・休日手当・深夜手当は、労働基準法所定の割増率を適用した割増賃金とする必要があります。

    各手当の割増率は、下表のとおりです(労働基準法第37条等)。

    超過勤務手当の種類 割増率
    法定内残業手当 割増なし(通常の賃金)
    時間外手当 通常の賃金に対して25%以上
    ※月60時間を超える部分については、通常の賃金に対して50%以上
    休日手当 通常の賃金に対して35%以上
    深夜手当 通常の賃金に対して25%以上

    なお、深夜手当とその他の手当は重複して適用されます。


    休日労働かつ深夜労働の場合は、通常の賃金に対して60%割増

  3. (3)超過勤務と36協定の関係性

    超過勤務のうち、時間外労働または休日労働を指示するには、使用者が労働組合または労働者の過半数代表者との間で労使協定(=36協定)を締結しなければなりません(労働基準法第36条第1項)。

    時間外労働・休日労働の時間数や日数については、36協定で定めた範囲を超えないようにする必要があります。

    また労働基準法においても、時間外労働・休日労働の合計時間数などについて上限規制が定められています(同条第3項~第6項)。

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2、超過勤務手当の原則的な計算方法

超過勤務手当の金額は、原則として以下の手順で計算します。


  1. (1)1時間当たりの基礎賃金を求める

    「1時間当たりの基礎賃金」は、超過勤務手当の「時給」に相当するものです。
    月給制の場合は、以下の式によって1時間当たりの基礎賃金を計算します。

    1時間当たりの基礎賃金=1か月の総賃金(以下の手当を除く)÷月平均所定労働時間
    総賃金から除外される手当
    • 時間外労働手当、休日労働手当、深夜労働手当
    • 家族手当(扶養人数に応じて支払うものに限る)
    • 通勤手当(通勤距離等に応じて支払うものに限る)
    • 別居手当
    • 子女教育手当
    • 住宅手当(住宅に要する費用に応じて支払うものに限る)
    • 臨時に支払われた賃金
    • 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金
    月平均所定労働時間の求め方
    月平均所定労働時間=年間所定労働時間÷12か月


    1か月の総賃金(上記手当を除く)が34万円、月平均所定労働時間が170時間の場合

    1時間当たりの基礎賃金
    =34万円÷170時間
    =2000円

  2. (2)超過勤務時間を種類ごとに集計する

    「法定内残業」「時間外労働」「休日労働」「深夜労働」に分類して、超過勤務時間をそれぞれ集計します。
    深夜手当とその他の手当は重複して適用される点に注意しましょう。

    超過勤務時間の集計は、超過勤務を行った事実の記録(証拠)に基づいて行います。
    以下のような記録を参照しましょう。

    • 勤怠管理システムやタイムカードの記録
    • 労働者から提出された超過勤務の報告書
    など
  3. (3)超過勤務手当の額を計算する

    1時間当たりの基礎賃金と超過勤務時間が把握できたら、以下の式によって超過勤務手当の額を計算します。

    超過勤務手当=1時間当たりの基礎賃金×割増率×超過勤務時間数


    1時間当たりの基礎賃金:2000円
    法定内残業:20時間
    時間外労働:20時間(うち深夜労働5時間)
    休日労働:10時間

    超過勤務手当
    =2000円×(20時間+1.25×15時間+1.5×5時間+1.35×10時間)
    =11万9500円

3、特殊な勤務形態における超過勤務手当の取り扱い

特殊な勤務形態(労働時間制)で働く労働者については、超過勤務手当の金額を、原則的な方法とは異なる方法で計算すべき場合があります


① 変形労働時間制
時間外手当の金額は、日・週・対象期間ごとに時間数を計算した後、各時間数を合算した上で計算します。

② フレックスタイム制
時間外手当は、労使協定で定めた清算期間ごとに金額を計算した上で精算します。

③ 裁量労働制
時間外手当の金額は、労使協定または労使委員会決議で定めたみなし労働時間を基準として計算します。

上記以外にも、労働基準法ではさまざまな勤務形態が認められており、超過勤務手当の取り扱い方法にも多くのバリエーションがあります。

超過勤務手当の計算・支払いを正しく行うためには、社会保険労務士や弁護士のアドバイスを受けましょう。

4、過度な超過勤務のリスクと改善方法

労働者に過度な超過勤務を行わせると、会社は大きなリスクを負うことになってしまいます。
深刻なトラブルが発生する前に、超過勤務時間の削減を図りましょう。

  1. (1)過度に超過勤務を行わせることのリスク

    労働者の超過勤務時間が多くなると、会社は以下のリスクを負います。


    • 労働者が健康を害し、休職や退職をせざるを得なくなり、労働力不足に陥るおそれがあります。
    • 超過勤務時間が36協定や労働基準法の上限を超え、労働基準監督署から是正勧告を受けるおそれがあります。
    • 超過勤務時間の把握漏れによって未払い残業代が発生し、労働者から請求を受けたり、労働基準監督署から是正勧告を受けたりするおそれがあります。
    • ブラック企業であるとの悪評が広まり、離職率の上昇や人材採用の難航につながるおそれがあります。
    など
  2. (2)超過勤務時間を削減する方法

    労働者の超過勤務時間を削減するためには、以下のような方法が考えられます。


    • 36協定のルールを厳格化し、超過勤務時間の上限時間を減らす
    • 残業を事前許可制にする
    • 労働者の業務状況をこまめにチェックし、業務が多すぎる労働者の負担を軽減する
    • 新規採用を積極的に行い、人員を増やして労働者1人当たりの負担を軽減する
    • 無駄な業務を廃止して、業務を効率化する
    • ITシステムなどを活用して、業務を効率化する
    • 受注量を減らす
    など

5、労働者とトラブルになる前に弁護士へ相談を

残業過多などが原因で、会社が労働者に訴えられてしまうと、経済的な面や評判の面で、経営上大きなダメージを受けてしまうおそれがあります

労働者とのトラブルを未然に防ぐためには、顧問弁護士と契約するのがおすすめです。
人事・労務管理上の問題について、日頃から顧問弁護士に相談しながら対応していれば、コンプライアンスが強化されてトラブル防止につながります。

また、実際に労働者とのトラブルが発生したときは、速やかに労働問題の実績がある弁護士へ相談しましょう。
弁護士は会社の損害を最小限に抑えるため、法的根拠にのっとって適切に対応します。

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6、まとめ

超過勤務手当(法定内残業手当・時間外手当・休日手当・深夜手当)は、適切に超過勤務時間を集計した上で、労働基準法所定の割増率を適用して計算する必要があります。

超過勤務手当の未払いは労働基準法違反に当たり、労働者からの請求や労働基準監督署による是正勧告の対象となるので要注意です。弁護士のアドバイスを受けながら、超過勤務手当の計算・支払いを適切に行うことをおすすめします

ベリーベスト法律事務所は、人事・労務管理に関する企業のご相談を随時受け付けております。労働問題の解決実績がある弁護士に安心してご相談いただけます。
また、ベリーベストでは月額固定の顧問弁護士サービスをご用意しています。コストが気になる場合でも、ニーズやトラブルの規模に応じて必要なサービスを柔軟にご利用いただけます。

超過勤務手当の取り扱いについて疑問がある企業や、顧問弁護士をお探しの企業は、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。

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