超過勤務手当とは、所定の労働時間を超えて働いた場合などにおいて、基本給にプラスして支払われる賃金のことです。
超過勤務をした日が平日か休日か、超過勤務の時間帯、および勤務形態の違いなどにより、計算方法が変わります。超過勤務弁護士のアドバイスを受けながら、適切に超過勤務手当の計算・支払いを行いましょう。
本記事では超過勤務手当について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
「超過勤務手当」とは、正規の勤務時間以外の時間に働いた労働者に対して、使用者が支給する手当です。
一般企業に適用される労働基準法では、「超過勤務」の用語は定義されていません。
そのため、「超過勤務」および「超過勤務手当」が何を意味するのかは、文脈や使う人によって異なります。
なお、国家公務員に適用される「人事院規則15-14(職員の勤務時間、休日および休暇)」第16条には、「超過勤務」の用語が定義されています。
同規定と「一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律」第13条第2項を併せて確認すると、「超過勤務」とは以下の意味を有することが分かります。
国家公務員の超過勤務の定義を参考にすると、一般企業における「超過勤務」も、労働者が正規の勤務時間以外に働くという意味に解釈するのが合理的でしょう。
上記の解釈に従うと、「法定内残業」「時間外労働」「休日労働」「深夜労働」が超過勤務に当たります。それぞれの概要は下表のとおりです。
超過勤務の種類 | 概要 |
---|---|
法定内残業 | 所定労働時間(※1)を超え、法定労働時間(※2)を超えない部分の労働時間 |
時間外労働(法定外残業) | 法定労働時間を超える部分の労働時間 |
休日労働 | 法定休日の労働時間 |
深夜労働 | 午後10時から午前5時までの労働時間 |
※1 所定労働時間:会社が定める労働時間
※2 法定労働時間:民法が定める労働時間。原則、1日8時間・1週間40時間
これらの超過勤務に対して支払われる手当(法定内残業手当・時間外手当・休日手当・深夜手当)が、超過勤務手当ということになります。
本記事でも、この解釈に沿って解説します。
超過勤務手当のうち、時間外手当・休日手当・深夜手当は、労働基準法所定の割増率を適用した割増賃金とする必要があります。
各手当の割増率は、下表のとおりです(労働基準法第37条等)。
超過勤務手当の種類 | 割増率 |
---|---|
法定内残業手当 | 割増なし(通常の賃金) |
時間外手当 | 通常の賃金に対して25%以上 ※月60時間を超える部分については、通常の賃金に対して50%以上 |
休日手当 | 通常の賃金に対して35%以上 |
深夜手当 | 通常の賃金に対して25%以上 |
なお、深夜手当とその他の手当は重複して適用されます。
例
休日労働かつ深夜労働の場合は、通常の賃金に対して60%割増
超過勤務のうち、時間外労働または休日労働を指示するには、使用者が労働組合または労働者の過半数代表者との間で労使協定(=36協定)を締結しなければなりません(労働基準法第36条第1項)。
時間外労働・休日労働の時間数や日数については、36協定で定めた範囲を超えないようにする必要があります。
また労働基準法においても、時間外労働・休日労働の合計時間数などについて上限規制が定められています(同条第3項~第6項)。
問題社員のトラブルから、
超過勤務手当の金額は、原則として以下の手順で計算します。
「1時間当たりの基礎賃金」は、超過勤務手当の「時給」に相当するものです。
月給制の場合は、以下の式によって1時間当たりの基礎賃金を計算します。
例
1か月の総賃金(上記手当を除く)が34万円、月平均所定労働時間が170時間の場合
1時間当たりの基礎賃金
=34万円÷170時間
=2000円
「法定内残業」「時間外労働」「休日労働」「深夜労働」に分類して、超過勤務時間をそれぞれ集計します。
深夜手当とその他の手当は重複して適用される点に注意しましょう。
超過勤務時間の集計は、超過勤務を行った事実の記録(証拠)に基づいて行います。
以下のような記録を参照しましょう。
1時間当たりの基礎賃金と超過勤務時間が把握できたら、以下の式によって超過勤務手当の額を計算します。
例
1時間当たりの基礎賃金:2000円
法定内残業:20時間
時間外労働:20時間(うち深夜労働5時間)
休日労働:10時間
超過勤務手当
=2000円×(20時間+1.25×15時間+1.5×5時間+1.35×10時間)
=11万9500円
特殊な勤務形態(労働時間制)で働く労働者については、超過勤務手当の金額を、原則的な方法とは異なる方法で計算すべき場合があります。
上記以外にも、労働基準法ではさまざまな勤務形態が認められており、超過勤務手当の取り扱い方法にも多くのバリエーションがあります。
超過勤務手当の計算・支払いを正しく行うためには、社会保険労務士や弁護士のアドバイスを受けましょう。
労働者に過度な超過勤務を行わせると、会社は大きなリスクを負うことになってしまいます。
深刻なトラブルが発生する前に、超過勤務時間の削減を図りましょう。
労働者の超過勤務時間が多くなると、会社は以下のリスクを負います。
労働者の超過勤務時間を削減するためには、以下のような方法が考えられます。
残業過多などが原因で、会社が労働者に訴えられてしまうと、経済的な面や評判の面で、経営上大きなダメージを受けてしまうおそれがあります。
労働者とのトラブルを未然に防ぐためには、顧問弁護士と契約するのがおすすめです。
人事・労務管理上の問題について、日頃から顧問弁護士に相談しながら対応していれば、コンプライアンスが強化されてトラブル防止につながります。
また、実際に労働者とのトラブルが発生したときは、速やかに労働問題の実績がある弁護士へ相談しましょう。
弁護士は会社の損害を最小限に抑えるため、法的根拠にのっとって適切に対応します。
問題社員のトラブルから、
超過勤務手当(法定内残業手当・時間外手当・休日手当・深夜手当)は、適切に超過勤務時間を集計した上で、労働基準法所定の割増率を適用して計算する必要があります。
超過勤務手当の未払いは労働基準法違反に当たり、労働者からの請求や労働基準監督署による是正勧告の対象となるので要注意です。弁護士のアドバイスを受けながら、超過勤務手当の計算・支払いを適切に行うことをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所は、人事・労務管理に関する企業のご相談を随時受け付けております。労働問題の解決実績がある弁護士に安心してご相談いただけます。
また、ベリーベストでは月額固定の顧問弁護士サービスをご用意しています。コストが気になる場合でも、ニーズやトラブルの規模に応じて必要なサービスを柔軟にご利用いただけます。
超過勤務手当の取り扱いについて疑問がある企業や、顧問弁護士をお探しの企業は、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。
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