企業法務コラム
2024年(令和6年)4月1日から、改正不正競争防止法(不競法)が施行されました。
主な改正点は、メタバースなどのデジタル空間での模倣行為の防止や、秘密管理されている情報の保護の強化を図るものです。
本記事では、令和6年4月に施行された改正不正競争防止法について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
不正競争防止法の改正が行われた背景や改正におけるポイントを説明します。
不正競争防止法は、事業者間の公正な競争などを確保するため、不正競争を防止するための規制を定めた法律です。
不正競争行為の例としては、他社のブランド名や商品の形態などを無断で模倣することや、営業秘密を盗用することなどが挙げられます。
知的財産に対する侵害行為のうち、他の知的財産法(特許法・実用新案法・商標法・意匠法・著作権法など)では規定されていないものを規制することが、不正競争防止法の主眼です。
令和6年4月に施行された改正不正競争防止法は、その他の知的財産法(商標法・意匠法・特許法・実用新案法・工業所有権特例法)の改正法と一括して制定されたものです(=知財一括法)。
知財一括法による改正の背景事情として、経済産業省は以下の3点を挙げています。
令和6年4月に施行された改正不正競争防止法による主な変更点は、以下のとおりです。
次の項目から、各変更点について詳しく解説します。
改正不正競争防止法における1つ目の変更ポイントは、デジタル空間における不正な模倣行為を防止するための改正です。
不正競争防止法では、他人の商品形態を模倣した商品の譲渡などを不正競争と位置づけ、差し止め請求・損害賠償請求・刑事罰の対象としています(同法第2条第1項第3号、第3条、第4条、第21条第2項第3号)。
従来は、形態を模倣した商品に係る以下の行為が不正競争に該当するものとされていました。
しかし改正不正競争防止法では、上記の各行為に加えて「電気通信回線を通じて提供する行為」が新たに不正競争の対象となります。
また、従来の解釈では「商品」は有体物に限定されていたところ、今回の法改正に伴い、無体物も「商品」に含む形へ解釈変更が行われています。
特に近年では、メタバースなどのデジタル空間の発展が著しく、その中で新たなビジネスが興隆しています。
今回の不正競争防止法改正により、デジタル空間において他人の商品イメージを利用したデータを提供する行為も、不正競争の対象に含まれることとなりました。
デジタル空間における行為も、現実世界における行為と同等に規制する流れが進んでいますので、メタバースなどにおいて新ビジネスに取り組む事業者は特に注意が必要です。
改正不正競争防止法における2つ目の変更ポイントは、営業秘密および限定提供データの保護が強化された点です。
不正競争防止法では、「営業秘密」と「限定提供データ」の不正な取得・使用・開示を不正競争と位置づけ、これらの情報の保護を図っています(同法第2条第1項第4号~第16号)。
従来の不正競争防止法では、限定提供データの範囲から秘密管理された情報が除外されていました。その結果、秘密管理されているビッグデータは、営業秘密・限定提供データのいずれにも該当せず、不正競争防止法によって保護されないことが問題視されていました。
そこで今回の改正では、限定提供データに秘密管理されているが営業秘密にはなっていないビッグデータを含める変更が行われました。
また不正競争防止法では、技術上の秘密を取得した者について、その使用を行ったものと推定する旨が定められています(同法第5条の2)。使用行為は侵害者の内部領域で行われるケースが多いことを踏まえて、被侵害者の立証負担を軽減するための規定です。
従来は産業スパイなどに対象が限定されていましたが、今回の改正により、営業秘密へのアクセス権限を有していた元従業員や、不正取得の経緯を事後的に知った者も、一定の条件下において推定規定を適用できるものとされました。
改正不正競争防止法により、営業秘密や限定提供データの保護が強化されるため、企業にとっては不正な情報流出への対応がしやすくなります。
しかしながら、情報流出が発生すれば企業の信頼の失墜などにつながる点は、以前と変わりがありません。企業としては引き続き、情報セキュリティーの強化によって不正流出の予防に努めるべきでしょう。
改正不正競争防止法では、その他にも複数の改正が行われています。
OECD外国公務員贈賄防止条約をより適格に実施するため、外国公務員への贈賄に関する刑事罰につき、法定刑の引き上げが行われています。
従来の法定刑は、個人について「5年以下の懲役または500万円以下の罰金」、法人について「3億円以下の罰金」でした(不正競争防止法第21条第2項第7号、第22条第1項第3号)。
改正後の法定刑は、個人について「10年以下の懲役または3000万円以下の罰金」、法人について「10億円以下の罰金」となります。懲役刑については経済犯罪の中で最長、罰金刑については最高額の水準です。
営業秘密については、以前から海外流出事案が問題視されていました。しかし、営業秘密の海外流出事案について日本の裁判所に国際裁判管轄が認められるのか、および日本の不正競争防止法が適用されるのかどうかについては、確立された解釈が存在しない状況でした。
そこで改正不正競争防止法では、日本国内において事業を行う者が保有し、日本国内において管理されている営業秘密の侵害については、日本の裁判所の国際裁判管轄を認め、不正競争防止法を適用することが明確化されました。
従来は、被侵害者の精算・販売能力を基準とした損害推定を行っていたが、新たにライセンス料相当額の損害を推定することが可能になりました。これにより、自身では大きく販売ができないものの高い技術などを持っている中小企業が、営業秘密等侵害に対してより有効な法的救済を受けやすくなります。
不正競争防止法の改正につき、自社にどのような影響があるのか、どのような対応を行うべきかなどについては、弁護士のアドバイスを受けることをおすすめします。
弁護士は、クライアント企業の状況をヒアリングしたうえで、不正競争防止法による規制が問題になり得る場面を把握・指摘し、具体的な対応についてもアドバイスいたします。
弁護士のアドバイスを踏まえて対応すれば、自社が不正競争防止法違反を犯すリスクを防げるとともに、他社による侵害行為にも適切に対応できるようになります。
不正競争防止法に関する対応にお悩みの企業は、弁護士にご相談ください。
令和6年4月から施行された改正不正競争防止法は、メタバースなどのデジタル空間での商品形態の模倣行為が新たに規制されるなど、注目すべき変更点が含まれています。弁護士のアドバイスを受けながら、改正不正競争防止法に関する対応を適切に行いましょう。
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