企業法務コラム
閉店予定の店舗がある場合には、在庫処分のために「閉店セール」を実施するケースも多いです。
経営者の中には、閉店セールを実施したところ思った以上に売り上げがよかったことから、閉店セールをこのまま続けたいと考える方もいるかもしれません。しかし、事業を廃止する予定がないにもかかわらず、長期間閉店セールを実施するのは、違法な閉店商法として、景品表示法違反になるおそれがあります。
今回は、閉店商法と景品表示法との関係について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
閉店商法とはどのようなものなのでしょうか。以下では、閉店商法の概要と主なパターンについて説明します。
閉店商法とは、店舗を閉店することを告知し、在庫処分のための安売りを行うなどの方法で客を呼び込む商法をいいます。
店舗を閉店する場合には、在庫商品が無駄になってしまいますので、そのような在庫を一掃する目的で、閉店セールなどが行われます。割引率は、店舗によって異なりますが、20%から80%など通常の営業では考えられないような割引率になることもあります。そのため、閉店セールを実施すると、お得に買い物をしたいという考えを抱いた多くの客の来店が見込めます。
「閉店商法」というと、違法な悪質商法のようなイメージを持たれる方もいるかもしれませんが、閉店商法や閉店セール自体が違法というわけではありません。ただし、閉店商法の態様によっては、2章で説明するような違法性が生じることもありますので注意が必要です。
よくある閉店商法としては、以下のパターンが挙げられます。
閉店商法はどのような点が問題になるのでしょうか。以下では、閉店商法と景品表示法との関係について説明します。
景品表示法とは、正式名称を「不当景品類及び不当表示防止法」といい、不当な景品の提供や不当な広告の表示を禁止・制限することにより、一般消費者を保護することを目的に制定された法律です。
景品表示法では、一般消費者保護の観点からさまざまな記載がなされていますが、閉店商法との関係では、不当表示の禁止として以下の規制が問題になります。
閉店商法のうち、実際に閉店予定があるため閉店セールを実施する方法は、景品表示法との関係では特に問題とはなりません。
しかし、閉店予定がないにもかかわらず、「閉店セール」と銘打って客を誘引する行為は、今だけ安くなっていると消費者を誤解させて集客を行っているといえ、有利誤認表示にあたります。また、実際にその値段で販売した実績がないにもかかわらず、「定価1万円のところ、閉店セールで80%オフ」などと記載するのは不当な二重価格表示にあたり、こちらも有利誤認表示です。
このように、閉店商法の具体的な態様によっては、景品表示法違反になる可能性がありますので注意が必要です。
景品表示法違反の閉店商法を行った事業者には、以下のようなペナルティがあります。
事業者が景品表示法違反の疑いのある閉店商法を行っている場合、消費者庁は、事業者への事情聴取や関連資料の収集などの調査を行います。消費者庁による調査の結果、景品表示法違反が認められた場合、消費者庁から当該事業者に対して、以下のことが命じられます。
なお、調査の結果、違反の事実が認められない場合でも、違反のおそれがある行為が認められたときは、指導・指示・注意などの措置がとられます。
優良誤認表示行為または有利誤認表示行為があった場合には、課徴金納付命令の対象となります。課徴金納付命令とは、不当表示という違反行為を防止する目的で、行政庁が違反事業者に対して課す金銭的不利益のことです。
景品表示法に基づく課徴金は、不当表示規制に違反する表示により得られた売り上げの3%と定められていますので、事業規模によっては非常の大きなペナルティとなります。ただし、景品表示法違反の事実について、自主的に消費者庁に報告すれば、課徴金額を2分の1に減額することも可能です。
景品表示法違反による措置命令を受けたにもかかわらず、それに従わずに違法な表示を続けていると、刑事罰として2年以下の懲役または300万円以下の罰金が科されます。また、措置命令により報告義務が課せられたにもかかわらず、報告を行わないまたは虚偽の報告をした場合には、1年以下の懲役または300万円以下の罰金が科されます。
上記の刑事罰は個人に対して科されるものになりますが、法人に対しては3億円以下の罰金が科される可能性もあるため、注意が必要です。
なお、令和6年11月までに施行される景品表示法改正により、消費者を誤認させることを認識しながら不当表示(優良誤認表示・有利誤認表示)を行った場合には、100万円以下の罰金が科されることになります。従来は措置命令を介しての刑事罰でしたが、改正法では不当表示があった場合、直接罰則が科されることから「直罰規定」と呼ばれています。
閉店商法に限らず、景品表示法に関する疑問点がある方や違反しないようにするための対応をお考えの方は、弁護士に相談することをおすすめします。
自社の商品やサービスを一般の消費者に知ってもらうために、広告を打ち出すことを検討している企業も多いと思います。その際に注意しなければならないのは、景品表示法が禁止する不当表示にならないようにするという点です。
景品表示法に違反する不当表示を行ってしまうと、措置命令や課徴金納付命令などにより、大きなダメージを被ることになります。そのため、少しでも広告掲載にあたり疑問点がある場合には、そのまま企画を進めるのではなく、一度弁護士に相談してアドバイスしてもらうとよいでしょう。
商品やサービスに関する広告を掲載する際には、商品やサービスに関する情報がしっかりと記載されているかどうかという観点だけではなく、その記載内容が法的に問題ないかどうかをチェックする必要があります。
商品やサービスの知識は、経営者や担当者の方が豊富ですので、社内でチェックすることも可能です。しかし、法的問題点に関しては、法律の知識や経験が不可欠になりますので、専門家である弁護士による判断が必要になります。
そのため、実際に広告や閉店ポスターを掲載する前に、記載内容や記載方法に問題がないかどうかを弁護士にチェックしてもらうとよいでしょう。
広告効果と法規範の遵守を両立させ、必要なキャンペーンを適切に打つ方法を、弁護士と一緒に考えることができます。法規制を完全に遵守するだけでは、広告によって達成しようとする目的と適合するかはわかりません。しかし、広告効果の拡大を狙う程リスクは増大します。このようなジレンマの中で方法を選択するには、法規制の趣旨と限界を正確に理解している必要があります。
閉店商法は、在庫処分を目的として客を誘引する方法ですが、適正な方法で行われている限り、違法となることはありません。しかし、閉店する予定がないにもかかわらず「完全閉店セール」と銘打って客を誘引したり、不当なセール価格を記載したりすることは景品表示法違反となる可能性があります。
このような違反行為があると企業としての信用が失墜してしまいますので、広告掲載前に弁護士に相談するのがおすすめです。景品表示法に関する疑問点がある方や違反しないようにするための対応をお考えの方は、ベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。
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