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							検収に合格すると報酬が支払われますが、合否に関してトラブルが生じるケースもあります。発注者との間で、あらかじめ検収のルールを明確化しておきましょう。
							
							本記事では、IT業界における検収の基礎知識をベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
								「検収」とは、システムや商品などの納品物が、契約(発注)どおりの品質・性能・機能などを備えているかどうかを発注者が確認する作業です。
								
								IT業界では、たとえばシステムの受託開発などがよく行われています。
								受注者は発注者に対して制作したシステムを納品し、発注者は納品されたシステムについて検収を行います。
								
								動作チェックなどを経て、システムが仕様に従って適切に機能すると検収者が判断すれば、検収合格となります。検収日以降、受注者は発注者に対して報酬を請求できるようになります。
							
										検収は1回で済ませるケースも多いですが、システムの開発工程が複雑な場合は、多段階の検収を行うこともあります。
										
										多段階の検収を行う場合、各検収は以下のような種類で区別されることが多いです。
									
納品から検収に至るまでの基本的な流れは、以下のとおりです。
検収の合否は、発注者が主観的に決めてよいものではありません。受発注のルールを定める契約において、検収の合格条件を事前に定めるのが一般的です。
										検収の合格条件は、契約書本文とは別に作成する「検収仕様書」などに記載されることが多いです。
										
										検収仕様書には、発注者と受注者の間で合意した仕様の内容を明記します。検収の段階で疑義が生じないように、できる限り詳細に仕様の内容を記載しましょう。
									
										特にIT業界においては、開発するシステムの目的や備えるべき性能・機能などのオーダーメード性が高いという特徴があります。そのため、検収の合格条件も取引の目的・内容等によって千差万別です。
										
										発注者・受注者の間で認識の齟齬が生じないように、検収仕様書などの内容を相互によく確認しましょう。
									
発注者による検収が長引いた結果、検収期間が経過するケースもたまに見られます。検収期間を過ぎた場合には、納品はどのように取り扱われるのでしょうか。
										検収期間内に、発注者が受注者に対して不合格通知を発しなければ、自動的に検収合格となります。この場合、受注者は発注者に対して請求書を送付し、報酬の支払いを請求可能です。
										
										これに対して、検収期間内に契約に従った不合格通知が発せられれば、検収不合格となります。検収不合格となった場合における再検収の期間等のルールは、取引に関する契約の定めに従います。
									
										発注者は、事前に定めた合格条件に照らして検収を行わなければなりません。
										
										したがって、発注者が納品物を検収不合格にできるのは、納品物が合格条件を満たしていないと合理的に判断できる場合に限られます。事前に定めた合格条件を勝手に変更したり、発注者の好みなどを理由に検収不合格としたりすることはできません。
									
システムなどの検収に関して、受注者側は以下の各点に留意しておきましょう。
										検収仕様書等の記載事項に沿ってシステムなどを制作しなければ、検収段階で不合格となり、修正や納品のやり直しが生じてしまいます。
										
										受注者としては、検収仕様書等の記載事項をあらかじめよく確認して、その内容に忠実に納品物を制作することが大切です。実際の開発担当者(開発者)に対しても、検収仕様書等の内容の遵守を徹底させましょう。
										
										検収仕様書等の内容に疑義がある場合には、受注の段階で発注者に確認して解消しておきましょう。また、制作途中で疑義が生じた場合にも、その都度発注者に確認して疑問点を解消すべきです。
									
発注者・受注者の資本金額が下表の条件を満たす場合、その取引には下請法(正式名称:下請代金支払遅延等防止法)が適用されます。
| 親事業者(発注者側)の資本金額 | 下請事業者(受注者側)の資本金額 | 取引の種類 | 
|---|---|---|
| 3億円超 | 3億円以下 | 
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| 1000万円超3億円以下 | 1000万円以下 | |
| 5000万円超 | 5000万円以下 | 
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| 1000万円超5000万円以下 | 5000万円以下 | 
										下請法が適用される取引においては、親事業者は下請法に基づく義務を遵守しなければなりません。合理的な理由なく検収不合格として、受注者に対して不当に納品のやり直しを要求することは、親事業者の禁止行為に該当します(下請法第4条第2項第4号)。
										
										禁止行為をした親事業者は、公正取引委員会から是正勧告を受けることがあります(下請法第7条第3項)。是正勧告に従わない場合で、当該行為が独占禁止法違反(優越的地位の濫用等)に該当すると判断された場合には、排除措置命令や課徴金納付命令の対象となる可能性があります。
										
										検収不合格となったことについて、発注者側から合理的な理由の説明がない場合には、下請法違反の可能性を疑いましょう。
									
検収に関して発注者との間でトラブルが生じた場合には、公正取引委員会または弁護士に相談しましょう。
								システム開発などのクライアントワークを中心に行うIT企業は、常に発注者との間でトラブルが生じるリスクを負っています。
								
								特に高額の開発費用がかかる案件でトラブルが発生すると、受注者側にとって大きな痛手です。会社の損害を最小限に食い止めるため、トラブルの早期解決を図らなければなりません。
								
								顧問弁護士と契約しておけば、発注者との間でトラブルが発生した際にも、適切な対応の方法についてスムーズにアドバイスを受けられます。発注者側との和解交渉や、訴訟などの法的手続きへの対応についても、顧問弁護士にお任せいただけるので安心です。
								
								クライアントワークを主に行っているIT企業は、顧問弁護士との契約をご検討ください。
							
								検収を滞りなく通過するためには、事前に検収仕様書等の内容を確認し、定められた合格条件に沿って納品を行うことが大切です。
								
								納品物が合格条件を満たしているにもかかわらず、発注者が正当な理由なく不合格とすることはできません。もし不当に検収不合格とされた場合には、弁護士のアドバイスを求めましょう。
								
								ベリーベスト法律事務所は、IT企業からのご相談を随時受け付けております。ニーズに応じてご利用いただける顧問弁護士サービスもご用意しておりますので、お気軽にベリーベスト法律事務所へご相談ください。
							
 
											 
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