企業法務コラム

2024年10月23日
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誹謗中傷に対する開示請求の流れと注意点

誹謗中傷に対する開示請求の流れと注意点

インターネット上の口コミや掲示板、SNSにおける誹謗中傷の書き込み被害は、個人だけでなく企業にも起こり得ます。企業に対して悪いうわさや悪意のある書き込みがなされてしまうと、それが根拠のないものであったとしても、取引先や顧客からの信頼を失うおそれがあるため、迅速な対応が必要です。

誹謗中傷の被害を受けた場合は、情報の速やかな削除依頼とともに、被害の大きさに応じて加害者への損害賠償請求も検討しなければなりません。

その際に、必ず必要となるのが、加害者の身元を特定するための「発信者情報開示請求」です。令和4年(2022年)10月には改正プロバイダ責任制限法により、従前より期間や費用を抑えて情報開示が請求できるようになりました。

今回は、誹謗中傷に対する開示請求の流れや、新・旧の開示請求の違い、注意点などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、誹謗中傷に対する開示請求(発信者情報開示請求)とは

誹謗中傷に対する開示請求とは、どのようなものなのでしょうか。

  1. (1)開示請求とは何か?

    開始請求とは、正式には「発信者情報開示請求」といい、インターネット上で誹謗中傷などの被害を受けた者が投稿者を特定するため、情報の開示を求める手続きです。

    誹謗中傷の被害者が加害者に対して法的責任を追及するためには、加害者を特定する必要があります。しかし、インターネットやSNS上での誹謗中傷は、匿名でなされることがほとんどですので、書き込まれた情報からは、投稿をした本人を特定することができません。

    そこで、開示請求をして情報開示を受けることで、投稿者の住所、氏名、メールアドレス、電話番号などの特定が可能になります。

  2. (2)開示請求で投稿者の特定ができた後の流れ

    発信者情報開示請求により、投稿者の特定ができた場合には、投稿者への法的責任追及を検討します。投稿者への法的責任追及には、以下の民事上の責任追及と刑事上の責任追及の2種類があります。

    ① 民事上の責任追及
    民事上の責任追及としては、以下のものが挙げられます。

    • 不法行為に基づく損害賠償請求
    • 謝罪広告の掲載などを求める名誉回復措置請求

    まずは、発信者情報開示請求により、特定した投稿者と交渉して、上記の請求をしていきますが、任意に応じてくれない場合には、裁判所に訴訟を提起する必要があります。

    ② 刑事上の責任追及
    インターネット上での誹謗中傷があった場合には、以下の犯罪が成立する可能性があります。

    • 名誉毀損(きそん)罪
    • 侮辱罪
    • 信用毀損(きそん)罪
    • 業務妨害罪
    • 脅迫罪

    被害者は、警察に刑事告訴をすることにより、加害者に対する刑事処分を求めることができます。

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2、誹謗中傷によって企業が受ける影響

企業が誹謗中傷を受けると以下のような悪影響が生じる可能性があります。

  1. (1)採用活動への悪影響

    求職者の多くは、企業の情報収集をするためにインターネットを利用します。インターネットでの検索結果に企業の悪いうわさや誹謗中傷の書き込みがあったとすると、求職者の応募数の減少につながるおそれがあります。優秀な人材の確保ができなくなることは、中長期的に見て企業の発展に大きなマイナスとなってしまいます。

  2. (2)売り上げ・業績の低下

    企業の商品やサービスを利用する消費者の多くは、インターネット上の口コミサイトを利用しています。口コミやレビューに根拠のない誹謗中傷を書き込まれてしまうと、消費者が当該商品やサービスの利用を控える結果となり、売り上げや業績の低下を招くおそれがあります。

  3. (3)従業員の離職

    インターネットでの誹謗中傷は、企業で働く従業員のモチベーションの低下や企業への信頼を失うおそれがあります。世間から悪い印象を持たれている企業では働きたくないと考える従業員の中から、離職を選択する人が出てくる可能性もあります。会社にとって人材を失うということは大きな損失となります。

3、発信者情報開示請求の流れ

令和2年(2020年)10月1日、改正プロバイダ責任制限法が施行されました。改正法は、従来の課題であったSNSの情報拡散へのスピーディーな対応や、被害者の負担の軽減を目的として新設されました。

新・旧2種類の発信者情報開示請求の流れと違いについて説明します。

  1. (1)【比較表】発信者情報開示請求の2種類の方法

    発信者情報開示請求は、従来の「発信情報開示請求」と新設された「発信情報開示命令」があります。

    以下の図表で、2種類の手続きの違いを確認してみましょう。

    既設:発信者情報開示請求の流れ・新設:発信者情報開示命令の流れ

    従来型の発信者情報開示請求は、サイト運営元に対する発信者情報開示仮処分命令の申し立てとプロバイダに対する発信者情報開示請求訴訟の提起という2つの手続きが必要でした。しかし、これらの手続きには時間も費用もかかることから被害者にとって大きな負担になっていました。

    そこで、改正法では、1つの裁判手続きにより必要な情報の開示を受けることができる発信者情報開示命令という手続きを新設しました。これにより、被害者の負担は大幅に軽減されることになります。

    なお、改正法施行後でも従来の手続きを選択することもできます。どちらの手続きを選択すべきか、以下それぞれの流れを把握し、弁護士に相談するとよいでしょう。

  2. (2)従来型の発信者情報開示請求の流れ

    従来型の発信者情報開示請求は、以下のような流れで行います。

    ① サイト運営元に対する発信者情報開示仮処分命令の申し立て
    投稿者の住所や氏名を特定するためには、投稿者が利用したプロバイダ(経由プロバイダ)を特定する必要があります。そして、プロバイダを特定するためには、IPアドレスやタイムスタンプなどの情報が必要です。

    そこで、まずは、誹謗中傷の書き込みがなされたサイト運営元に対して、当該書き込みがなされた際のIPアドレスとタイムスタンプなどの発信者情報開示請求を行います

    なお、発信者情報開示請求は裁判所を介さずに直接行うことができます(任意開示)。しかしサイト運営元が任意に情報の開示に応じることはほとんどありませんので、従来においては、仮処分という方法により、裁判所へ発信者情報の開示を求めるのが一般的でした。

    ② 開示されたIPアドレスなどからプロバイダを特定
    裁判所の仮処分命令が発令されれば、サイト運営元からIPアドレスなどの情報の開示を受けることができます。これらの情報がわかれば投稿者が利用したプロバイダを特定することができます。

    ③ プロバイダに対する発信者情報開示請求訴訟の提起
    プロバイダの特定ができたら、当該プロバイダに対して、訴訟を提起し、発信者情報開示請求を行います。裁判により原告の請求が認められれば、投稿者の発信者情報の開示を命じる判決が言い渡されます。

  3. (3)新設された発信者情報開示命令の流れ

    新設された発信者情報開示命令の手続きでは、これまで複数の裁判が必要であった以下の手続きを、1回の裁判で行うことが可能になりました。

    • サイト運営元、プロバイダに対する発信者情報開示命令(①)
    • サイト運営元に対するプロバイダへのログ提供命令(②)
    • サイト運営元、プロバイダに対する発信者情報の消去禁止を命じる消去禁止命令(③)

    発信者情報の開示を求める場合には、
    ① の申し立てを裁判所に行い
    ① の審理中に②と③の申し立てを行う
    という流れで進みます。

    これにより、従来型の発信者情報開示請求に比べて、期間と費用を軽減し、発信者の特定が可能になりました。また、発信者情報開示命令の手続きは、非訟事件に該当しますので、公開の法廷で行われる訴訟手続きとは異なり、非公開で行われます

4、誹謗中傷に対して開示請求を行う際の注意点

誹謗中傷に対して開示請求を行う際には、以下の点に注意が必要です。

  1. (1)適切な証拠を収集する

    発信者情報開示請求を行うためには、被害者において、自己の権利が侵害されたことを主張立証していかなければなりません。インターネット上での誹謗中傷があった場合には、当該ページを印刷またはスクリーンショットをすることで証拠化することができます。

    その際に注意が必要なのは、当該ページのURLも含めてスクリーンショットで撮影するという点です。また、当該投稿だけでは権利侵害があったかどうかが判断できない場合には、前後の投稿など一連の流れも証拠化しておくことが必要です。

  2. (2)早期に対応する必要性がある

    発信者情報開示請求を検討している場合には、誹謗中傷の書き込みがなされてからすぐに対応する必要があります。その理由は、プロバイダが保有しているアクセスログの保存期間が3~6か月と非常に短いからです。

    サイト運営元からIPアドレスなどの開示を受けることができたとしても、プロバイダのアクセスログの保存期間が経過してしまうと、投稿者を特定するための情報の開示を受けることができなくなってしまいます。

    アクセスログの保存期間が経過しそうだという場合には、プロバイダに対してアクセスログの保存を求めたり、裁判所にログ保存の仮処分の申立てをしたりする必要があります。

5、開示請求を弁護士に依頼するメリット

開示請求を弁護士に依頼するメリットとしては、以下の点が挙げられます。

  1. (1)状況に応じた最適な方法を選択することができる

    前述の通り、プロバイダ責任制限法の改正により、従来型の発信者情報開示請求と新設された発信者情報開示命令という2つの開示請求の手続きがあります。

    新設された発信者情報開示命令は、従来型に比べて短期間で投稿者の特定が可能とされています。しかし、裁判所の開示命令が発令されても、相手方の異議申し立てにより争いが長期化するケースもあります。また、弁護士を窓口として任意開示や削除請求を依頼することで訴訟を経ずとも、スムーズに解決に至ることも少なくありません。

    どのような手続きが適切であるかは状況によって異なってきますので、まずは、削除請求の実績がある弁護士に相談をして最適な手段をアドバイスしてもらうとよいでしょう。

  2. (2)アクセスログの保存期間に留意して迅速に進められる

    4章の注意点でも述べましたが、各プロバイダでは投稿者のアクセスログの保存期間が決められており、およそ3~6か月が一般的です。そのため誹謗中傷の書き込みがなされてから、発信者情報開示請求をするまで迅速に対応をする必要があります。

    プロバイダやサイト運営元から発信者情報の開示を受けるには、任意の開示請求では難しく、裁判所を介した手続きを利用しなければなりません。裁判手続きの準備のために期間を要し、アクセスログの保存期間を過ぎてしまわないためにも、インターネット関連の紛争に実績がある弁護士のサポートを受けることが大切です。

  3. (3)開示請求後の損害賠償請求や刑事告訴も任せられる

    発信者情報開示請求により、投稿者の特定ができた後は、投稿者に対して法的責任の追及を行います。法的責任追及の方法には、「損害賠償請求」などの民事上の責任追及と「刑事告訴」による刑事上の責任追及があります。

    弁護士に発信者情報開示請求を依頼すれば、その後の法的責任追及の手続きについても引き続き任せることが可能です。誹謗中傷による被害を回復するためにも、早めに弁護士に相談するのがおすすめです。

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6、まとめ

インターネットの口コミやレビュー、SNSなどで誹謗中傷がなされると、あっという間に情報が拡散し、炎上するリスクがあります。企業に対する誹謗中傷は、根拠が薄かったとしても、採用活動への悪影響・売り上げの減少・離職者の増加などさまざまなダメージを被るおそれがあります。

誹謗中傷を見つけた場合には、被害を最小限に抑えるためにも早めに弁護士に相談することが大切です。インターネット上の誹謗中傷でお困りの企業は、ベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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